What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

I visited Duke University School of Law!

 1/23(月)から29(日)まで,デューク大学のロースクールを訪問いたしました。
 私が研究している債務免除益の分野において権威的な論文を書かれているLawrence A. Zelenak先生を訪問するためです(論文は以下のリンクからダウンロードできます)。
scholarship.law.duke.edu


 Zelenak先生とは,姉弟子の道下知子先生が彼のEITCについての論文を翻訳されていますが,この他に特に繋がりがあったわけではありません。10月ごろメールをし,アポイントを取った上で訪問しました。
 行く前はとても不安で,正直,なんで行くことにしちゃったんだろうと思っていたこともありました。しかし,行って本当に良かったです。得難い経験ができました。

 貴重な経験ができたのは,全てZelenak先生が親切だったことによります。授業への参加を許可してくださったほか,何度も議論に応じてくださいました。今後の研究に非常に資する知識を得られました。
 Zelenak先生は今季,法人課税と租税政策の授業を担当されていて,いずれの授業にも参加させていただきました。法人課税は,担保資産の現物出資に係る課税関係という,『租税法と市場』において岡村忠生先生が論じている分野についての講義でした。債務免除益課税とも非常に深く関わる分野で,非常に興味深く拝聴しました。
 また,偶然だそうなのですが,租税政策の授業では,日本の消費税の導入課程についてのペーパーを使ったセミナーを実施していました(Paul Caron先生のブログ記事でも取り上げられています)。米国への付加価値税導入の可否というところまで議論が及んで,非常に刺激的なセミナーでした。

 デューク大ロースクールはとても過ごしやすい環境でした。
 授業に参加したりしている以外の時間は,ロースクールの図書館(Goodson Law Library)に籠もっていました。学外の人でも8時から17時まで利用できました。勉強用のスペースはとても静かで,集中して本を読むことができました。ずっと読みたかったFederal Income Taxation of Individualsも読むことができました。
 昼食はロースクール内のカフェ(CAFE De Novo)で食べられましたし,図書館が閉まった後は,(時差ぼけで寝てしまわなければ(結構これも多かったのですが))Bryan Centerという学生向けの施設で夕食を食べていました。Bryan Centerには,コンビニのような売店がある他,教科書販売所もありました。Bryan Centerの周りには大きな公園があり,時たま散歩していました。

 貴重な経験はできたのですが,一方で,自分の未熟さも思い知りました。
 税法の知識もそうですが,やはり英語力,特に自分から発語する力が足りないことを痛感しました。日本語でもあまり話が上手い方ではないのですが,英語では頭に浮かんだことの半分も発語できませんでした。研究の遂行に加え,これから磨いて行くべき点だと思います。
 しかし,そんな未熟な英語でも,Zelenak先生やあちらの学生は粘り強く話を聞いてくれました。得られた経験は全て,彼らの親切心によるものだと思います。
今後の研究で恩返ししてまいりたいと思います。

租税行政法ワークショップ拡大研究会

 一昨日、弊学法学研究科において、租税行政法ワークショップ拡大研究会が行われました。

 租税行政法ワークショップは、弊学法学研究科において設けられているワークショップの一つです。税法と行政法の教員および大学院生が集まり、主に租税手続法について研究を行っています。

 租税行政法ワークショップでは、例年、年度末前後に拡大研究会を行っております。今年度の拡大研究会は、「平成26年行政不服審査法・国税通則法改正の動向と問題点」がテーマでした。平成26年6月の両法改正および平成28年4月1日からの両法施行により何が起こる(起こりうるまたは実際に起こっている)のか、立法に携わられた弊学法学研究科非常勤講師の青木丈先生、元国税不服審判所の審判官で現在は弁護士の石井亮先生、元弁護士で現在国税不服審判所の審判官の根本純真子先生より報告がありました。

 

 全体として、制度の運用が始まったばかりであり、今後とも注視していく必要がある、ということは言えるように思いました。

 例えば、今回の改正された点の一つとして、口頭意見陳述手続きにおいて審査請求人(納税者)から処分行政庁(課税庁)に対する直接の質問ができるようになったことが挙げられます(行政不服審査法31条5項、国税通則法95条の2第2項)。従来の口頭意見陳述は、審査庁(国税不服審判所)が審査請求人の意見を聴取する(いわば縦のやり取り)のみであり、争っている審査請求人が処分行政庁に質問すること(いわば横のやり取り)はありませんでした。

 この改正は、抽象的には、審査請求手続を当事者主義的な方向に導くものと評価できるかと思います。ただ、実際には、審判官の心証への影響は薄いのではないか、審査請求人の心理的満足が得られるにすぎないのではないかという指摘がありました。また、実際に利用されているケースはまだあまり多くは無いようでした。

 他にも、様々な点(写しの交付等)について、立法趣旨から実際の運用、および今後の可能性まで含めた非常に興味深い議論が行われました。

 

 個人的には、審査請求手続の充実は租税行政手続にとって重要な意味を持つように思っています。というのも、米国の租税裁判所(Tax Court)は最初内国歳入庁の不服審査機関(Board of Tax Appeals)から出発しているからです。

 もちろん、日本では特別裁判所を設けることは憲法上できませんから(憲法76条2項)、租税裁判所の設置を望むことは愚かなことかもしれません。しかし、税務訴訟(の特に実体法上の争い)については、一般の行政訴訟とは少し毛色が違うことが多いのもまた事実かと思います。従って、専らそれを取り扱う機関の審査手続が充実することは、納税者の権利救済においてとても大きな意味を持つのではないかと考えています。

 

 さて、話は変わりますが、本日より約一週間、米国で在外研究を行って参ります。

 私は、米国本土に行くのがそもそも初めてですし、研究の用事で日本を出るのも初めてです。とても緊張していますが、Trump新大統領誕生直後の米国がどんな雰囲気なのか、肌で感じつつ、精一杯研究して参りたいと思っています。

2016年を振り返って

 本年も皆さまには大変お世話になりました。
 今年の研究関連の出来事を振り返りたいと思います。これまでブログに書いたことのまとめのような形になりますが,ご容赦ください。

・修士論文
 1月,修士論文を提出し,博士前期課程を修了しました。税法ゼミどころか法学部出身ですらない私が研究をもう少し続けてみようと思えたのは,ひとえに青山学院大学大学院法学研究科博士前期課程の優れた環境のおかげだと思っています。本当にありがとうございました。
 修士論文については,提出で終わりではなく,9月末に青山ビジネスロー・レビュー6巻1号へ加筆修正版の(上)を投稿しました*1。(下)についても,現在同巻2号への投稿に向け準備を行っています。
 修士論文で示した仮説に基づき,今後とも債務免除益課税という分野について研究を行っていくつもりでいます。(下)で仮説を示しておりますので,公開後ぜひご笑覧くださると嬉しいです。

・進学
 4月,博士後期課程に進学いたしました。また,進学と同時に日本学術振興会特別研究員に採用されました。進学したからどうということではなく,業績を精一杯積んでまいりたいと思っております。
 また,進学以来,学内の研究会であるアメリカ税法研究会へとお邪魔しております。寄附金控除(内国歳入法典§170)という債務免除益課税とは一見関わりの無さそうな分野なのですが,深いところでかかわっているような気がいたします。今後ともお邪魔して勉強していきたいです。

・学会等
 6月に日本税法学会,10月に日本租税理論学会に入会いたしました。入会させていただき,ありがとうございました。若手として,精力的に活動してまいりたいと思っております。
 また,7月に第4回若手法学研究者フォーラム(横田明美先生主催),12月に第01回租税実務Lightning Talk(小塚真啓先生主催)に参加いたしました。いずれも,参加者との距離が近い機会で発表の機会をいただき,非常に刺激を受けました。ありがとうございました。

・判例研究
 9月,ノンリコース債務免除益の所得分類について争われた事案(東京地判平成27年5月21日裁判所ウェブサイト,東京高判平成28年2月17日裁判所ウェブサイト)につき,判例研究を投稿し*2,日本税法学会の関東地区研究会にて発表しました。
 ブログにも書きましたが,様々な問題が交錯した事案であると思います。未だ確定はしていないようですので,今後とも見守ってまいりたいです。

・ブログ
 10月,このブログを開設しました。手探りですが,ゆるゆると続けてまいりたいと思っております。一介の大学院生のブログをご覧いだたき,本当にありがとうございます。
 来年からも書いてまいりますので,どうぞ宜しくお願いいたします。

*1:こちらからダウンロード可能です。

*2:青山社会科学紀要45巻1号59頁。リポジトリ公開はまだされていません。

1000アクセス突破しました!(このブログの目的とか)

 題名の通り,1000アクセスを突破しました!
 一介の大学院生がただやったことをまとめているだけに等しいこのブログにのべ1000人の方が訪れてくださって(そのうち50人くらいはたぶん私ですが),最低でも題名は1000回見ていただいたということ,とてもありがたいと思っております。
 もっともっとたくさん見ていただけるよう,今後とも精進して参ります!コンテンツの拡大,とかはあまり考えていないのですが(あ,でも,こんなこと書いて欲しいとかあったら検討します),興味あることをなるべく頻度高く書いていきたいです。

 これだけだと何にもならないので,このブログを始めた目的について,書いてみたいと思います。
 このブログを始めた目的は,①今まで自分が発表したものをまとめておいてかつ発信する場が欲しかった,というのがまず一番にあります。researchmapもあるんですが,あまりコメントを付したりできませんし,味気ないし,たぶん研究者の方しか見ないですよね。このブログに来れば,藤間大順という税法を研究しているらしい人が何を考えているか朧気ながらわかる,みたいな場を目指したいです。
 上記目的と重なるのですが,②インプットのためのアウトプットをしたいな,という動機もあったりします。博士前期課程の間は発表に継ぐ発表という感じで,その発表のために勉強をして知識を蓄えたことが今の糧になっています。博士後期課程になると,なかなか発表の機会は自分から作りに行かないと無くて,正直,勉強が足りていないんじゃないかという恐怖心があります。ブログに何か書いて色々な人からコメントやお叱りを受けたりして,そこで自分を鍛える場としても使いたいな,という動機はありました。
 ①に重なる部分は,業績だったり研究活動だったり色々書いています。②は今のところ判例研究しか無いのですが,ゆるゆる色々と書いていきたいと思います。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします!

第01回租税実務Lightning Talk

 昨日,この企画に参加いたしました。
 主催の小塚先生と奥さま,場所を提供してくださった田辺総合法律事務所の皆さま(特に主催の吉峯先生),誠にありがとうございました。
 当日の流れについては,ぱうぜ先生が実況してくださいました。吉峯先生がとぅぎゃってくださっています。ありがとうございます!↓
togetter.com


 当日はとても興味深い話ばかりでした。第一線で活躍されている先生方のお話は,今後の研究に資するものばかりでした。今やっている研究会のテーマに直結する発表もありました。また,小塚先生の発表は処女作で扱った裁判例について論じているものでした(資料をこちらにアップロードしてくださっています)。
 それらに比べとても拙いものではありましたが,私も発表をいたしました。修論で書いたことの一部について,「論理的に考えたらこうなるよな」ということを述べました。
 資料はこちらにアップロードしております。個人的には,オチがしっかりウケて良かったです。後輩たちに聞いてもらった時はダダ滑りだったので…↓
1drv.ms




 発表後,参加者の方々からコメントをいただくことができました。
 若手法学研究者フォーラムでお世話になっているぱうぜ先生からとても有益なコメントをいただけました。法学部出身ではないので,正直税法以外の分野の知見は完全に足りていないのですが,しっかりとそれを踏まえつつ,でも今の方向性を信じて頑張りたいと思います。ありがとうございます!
 また,なんと修論加筆修正版の上を読んでくださっている方がいて,かつ僕には無い視点から指摘をしてくださり,とても参考になりました(ありがとうございます!)。

 7月の若手法学研究者フォーラムに続きライトニングトークは2回目なのですが,正直まだまだ慣れません。ただ,自分の関心のエッセンスを抜き出してそれを5分間で伝わるように説明するというのは,恐らく研究者として(たぶん実務家としても)とても重要なスキルなのだと思います。エッセンスが上手く詰まっていれば,とても有益なコメントをいただけるのだな,と思いました。
 今後とも機会があればぜひやっていきたいです。学内とかでもやってみたいなー。あと,この企画についても,ぜひ第02回も参加したいです!重ね重ね,ありがとうございました。