What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

ディベート月間

 10月から11月にかけて,Teaching Assistant(TA)をしている木山ゼミが3回ディベートをしました。相手方をしてくださった方々への感謝をこめつつ,書いておきたいと思います。
 なお,ディベートのやり方等については,以前書いた下記記事をご覧ください。

taxfujima.hatenablog.com

1.テーマ
 一連のディベートでは,青山学院大学の税法ゼミは,①賃貸用不動産取得時に支払った贈与税の必要経費該当性(大阪地判H29.3.15,大阪高判H29.9.28),②非居住者に対して支払った不動産の購入対価に関する源泉徴収義務の有無(東京地判H28.5.19,東京公判H28.12.1),③不動産所得の廃止の是非(政策ディベート)の各テーマを扱いました。①は弊学の荒井先生のゼミが,②③は木山ゼミが担当しました。

2.税理士戦
 10/20(土),東京青年税理士連盟の先生方および有志の税理士の先生方と,荒井ゼミおよび木山ゼミの間でディベートが行われました。当日お相手をしてくださっただけでなく,事前の準備にも相当の労力を割いてくださったと推測します(ガイダンスをされた旨,こちらに書いてありました)。相手をしてくださった税理士の先生方,誠にありがとうございました。
 結果として,①②は税理士チームが,③は木山ゼミが勝利しました。当日,私は役割等が何も無かったので,客席でディベートを聞いていました。経験豊富な税理士の先生方に勇猛果敢に挑みかかるゼミ生の姿に感心するとともに,やはり税理士の先生方の経験は強いなぁ,と実感しました。①②は解釈論,③は立法論が議論されたわけですが,やはり解釈論については実際の運用への理解も大事なのだと思います。学生たちも学ぶところが大きかったように思いますし,個人的にも,研究に得られる示唆がありました。

3.長島ゼミ戦
 11/6(火),立正大学の長島先生のゼミと木山ゼミで,立正大学品川キャンパスにてディベートが行われました。
 木山ゼミは,長島ゼミに昨年よりディベートを行っていただいています。今回は,②③のテーマについてディベートを行いました。ディベートの相手をしてくださり,また会場も提供していただき,誠にありがとうございました。
 私は,昨年と同じく審査員を務めました。長島ゼミは,おそらく昨年が初めてのディベートの機会だったかと思うのですが,今年は昨年に比して格段にディベートの質が上がっていました。今後とも,ディベート等を通して,木山ゼミと仲良くしてくださいますと幸いです。

4.四大学税法ゼミディベート大会
 昨日(11/18(日)),弊学青山キャンパスにて,四大学税法ゼミディベート大会が行われました。当該大会の詳細については,上記記事をご覧くださいませ。
 今年は,立命館大学の望月先生のゼミ,関西大学の浦東先生のゼミ,名城大学の伊川先生のゼミならびに荒井ゼミおよび木山ゼミが出場しました。①について浦東ゼミと荒井ゼミが,②について望月ゼミと木山ゼミが,③について伊川ゼミと木山ゼミがディベートを行いました。結果としては,①は荒井ゼミ,②は木山ゼミ,③は伊川ゼミの勝利となりました。最終的には,勝ちとした審査員の数の差で,弊学税法ゼミの優勝となりました。
 まず,望月先生,浦東先生および伊川先生をはじめとする三大学の皆さま,弊学までお越しいただき,ありがとうございました。運営等至らない点も多くあったかと思いますが,どうかお許しいただけますと幸いです。
 当日,私は院生一同で運営の補助をしていました。全体として運営に携わっていた人数はそこそこいたのですが,中心として動いていたのは木山ゼミ4年生のわずかな人数で,彼ら彼女らのご尽力には頭が上がりません。お疲れさまでした。また,当日は木山ゼミOGも助けに来てくれていました。ありがとうございました。
 ディベートの内容については,とても高レベルな試合ばかりでした。特に,個人的に感動したのは,相手の議論を理解しながらそれを批判的に検討する場面が数多く見られたことでした。上記の記事にも書きましたが,私は,議論とは相互理解とそれによる深化を伴って為されなければならないと思っています。そのためには,どんなに自分が攻めたいと考えていようと,まずは相手の意見を聞いて,その考えの不明確なところや弱いところを突く,という姿勢が大事です。今年のディベートでは,そのような姿勢を取って,粘り強く相手を攻める場面が見られました。普段は木山先生の補助をして教えている子たちではあるのですが,今回の大会では色々と教えていただく場面が多かったように思います。ありがとうございました。

5.感想等
 以上,この2ヶ月間のディベートをざっとまとめてみました。上記のほか,私個人として,荒井ゼミにお邪魔して①についてディベートの相手をしたり,③について木山ゼミの相手をしたりしていました。
 全体として感じたのは,やはり学部生の能力はすごいなぁ,ということでした。以前,とある判例についての発表に関する指導の中で,「学部生だからこの程度で良いや」という手加減をしたり壁を作ったりすべきではないな,ということを実感したことがありました。今回のディベート大会では,そんなレベルを超えて,むしろ学部生の真剣な姿に学ぶことが数多くありました。みるみる成長して,知識としても,ディベートのテーマについて私よりも断然詳しい子たちが数多くいました。
 ただ,どんなに勉強しても,悔しい思いをすることはあります。ディベートは相手がいる勝負であり,勝敗は時の運ですから,当然のことです。また,それ以上に,税法は奥深いものである,ということでもあると思います。たぶん,私は一生かかっても税法の全てを理解できることは無いのだろうと思います。どんなに真剣に勉強して研究しても,そこには果てはありません。
 そして,ディベート大会で受けた悔しさを税法の奥深さに対する驚きや好奇心に昇華することができた人がもしいたならば,ぜひ学部を出た後も税制に携わる立場に就くことをお勧めします。税制に携わる人は,今の日本には数多くいます。国税の職員と税理士が典型例かと思いますが,財務省の職員,地方公共団体の課税課等の職員,弁護士,公認会計士,民間企業の経理等々,その関わり方は様々です。出場者の中にそんな道を朧気に考える人がいても面白いのではないかな,と個人的には考えたりしています。

 長くなりましたが,こんなところで。
 研究生活でも最近大きなことが1つあったりしたのですが,それは結果が出てから書きたいと思います。

「租税利益の原則(Tax Benefit Rule)」が公開されました。

 拙稿「租税利益の原則(Tax Benefit Rule)―米国における生成および展開ならびに日本法に与える示唆―」が,今月発行された青山社会科学紀要47巻1号に掲載されました。
 リポジトリで公開され次第,追記しておきます(→公開されました)。

 同稿は,米国において判例理論上および制定法上展開してきたTax Benefit Ruleについて,その展開する過程を整理したうえで,日本法の現行の解釈論において同原則が見出しうるのか,また見出すことが必要かという点を議論したものです。
 「おわりに」でも書いたのですが,当初は債務免除益の課税理論との関連性についても論じるつもりでした。ただ,分量や時間の都合から,そこまでは論じきれませんでした。しかし,その分,租税利益の原則それ自体についての一般的な検討に焦点を当てることができたかな,と思っています。

 この論文の内容については,先日の関西租税法若手研究会で報告の機会を賜りました。
taxfujima.hatenablog.com

 報告時既に入稿済であり,いただいたご指摘の内容はあまり活かせませんでした。申し訳ございません。ただ,今後とも研究していくテーマの予定ですので,その際にはぜひいただいたご指摘を活かしたいと存じます。

 ぜひご笑覧いただけますと幸いです。様々な課税問題を横断的に見る考え方ですので,色々な課税局面についてヒントとなる可能性があろうかと存じます。

(2018/10/11追記)
 当該論稿ですが,弊学リポジトリで公開されました。下記リンクより,ぜひご笑覧くださいませ。
www.agulin.aoyama.ac.jp

(2019/11/30追記)
 当該論稿につき,学会回顧にて取り上げていただきました(藤谷武史「租税法」法律時報91巻13号(2019年)35頁参照)。ありがとうございます!

倉敷青果荷受組合事件第二次上告審判決を傍聴しました。

 本日,倉敷青果荷受組合事件の第二次上告審判決が下されましたので,最高裁判所まで傍聴しに行って来ました。
 当該事件は,人格なき社団等がその理事長に供与した債務免除益につき,給与所得(所税28条1項)に該当して源泉徴収義務(所税183条)が発生するか否かが争われた事案です。第一審では,当該債務免除益には資力喪失時の債務免除益の非課税を定める旧所基通36-17が適用され源泉徴収義務は発生しない旨の判決が下され*1,控訴審では,当該債務免除益は給与所得に該当しないので源泉徴収義務は発生しない旨の判決が下されました*2。その後,第一次上告審では,当該債務免除益は給与所得に該当する旨の判示がされた後,旧所基通36-17の適用の可否を判断させるため原審に差し戻す判決が下されました*3。差戻控訴審では,旧所基通36-17の適用額について主に資産の評価額を検討し,一部額については源泉所得税の納税告知処分等は適法であったとの判決が下されています*4。当該差戻控訴審判決については,以下の(間の悪い)記事を以前書きました。
taxfujima.hatenablog.com

 以上書いたように,この事件では,従来,①債務免除益の額(所税36条やその解釈通達である旧所基通36-17の問題)および②所得分類(所税28条1項や所税183条1項の問題)の問題が主に争われてきました。ただ,今回の第二次上告審判決では,税負担の錯誤と処分の無効の問題について判示されました。
 税負担の錯誤と処分の無効の問題とは,単純に言えば,「こんなに税金がかかるならこんな取引はしなかった,だから取引を無効にするので,税金はかけないでくれ」という問題です。まずは,税負担の錯誤によって民法上の錯誤無効(民法95条)が認められるのか,という点が問題となります。この点については,例えば,最高最判決において,税負担の錯誤による財産分与契約の無効が認められた事案があるなど*5,私人間の取引の効力については,税負担の錯誤による無効が認められる余地があるとされています。次に,税負担の錯誤による法律行為の無効を理由として,当該法律行為によって生じた税負担の無効を主張することができるか,という点が問題となります。この点については,議論が盛んにされているところです*6。本判決も,このような議論の中で出された判決となります。

 この事件における税負担の錯誤の主張とは,「旧所基通36-17が適用されず源泉所得税が生じてしまうならば,債務免除はしなかった。したがって,債務免除は無効であり,納税告知処分も無効である」という主張となります。
 この点については,第一審の段階より,主張がされていました。第一審を審理した岡山地裁がまとめたX(原告,納税者)の主張を以下に書きます。

 源泉徴収義務者であるXは,源泉徴収義務に基づき被告に対し源泉所得税を負担するのであるから,税負担の有無につき錯誤が生じ得る。
 Xは,Aからすれば本件債務の支払を受けることが著しく困難であったところ,倉敷税務署長が,以前にAが受けた債務免除益につき,本件通達に該当する旨の判断をしていたことから,その判断を前提として,本件債務免除をした。Xは,本件債務免除をすることにより源泉徴収義務を負うことを想定しておらず,源泉徴収義務に基づく税負担がないことが本件債務免除の重要な要素となっていた。
 したがって,仮に本件債務免除益に本件通達の適用がないのであれば,本件債務免除は,錯誤により無効である。
 なお,錯誤無効を主張する時期は,法律によって制限されておらず,Xによる本件債務免除の錯誤無効の主張は,源泉所得税の法定納期限後であっても妨げられるものではない。

 これに対し,Y(被告,国)は,以下のように主張をしていました。源泉所得税であることを重く見た主張と言うことができるかと思います。

 源泉所得税は,最終的にはAが負担すべきものであり,最終的な税負担を負う立場にない源泉徴収義務者であるXに,税負担を原因とする錯誤が生じることはあり得ない。
 また,本件債務免除は,AのXに対する強い影響力を背景として,Xが債務免除をすることを強いられたものにすぎず,Aが資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であったことを理由として行われたものではないから,Xが,本件債務免除をするに当たって,本件通達の要件に該当すると誤信した事実はない。仮に,Xにとって非課税となることが本件債務免除の重要な要素となっていたとしても,かかる動機は,本件債務免除に当たり明示的に表示されておらず,AのXに対する強い影響力を背景とした本件債務免除の実質からすれば,黙示的に表示されていたと評価することもできない。
 さらに,源泉徴収義務の発生原因となる法律行為の錯誤無効を安易に認めて,源泉徴収義務を免れさせることは,源泉徴収義務者間の公平を害するとともに,租税法律関係を不安定にし,ひいては源泉徴収制度の破壊につながるものであるから,法定納期限後においては,Yに対して,源泉徴収義務の発生原因となる法律行為の錯誤無効を主張することはできないと解すべきである。Xが本件債務免除の錯誤無効の主張をしたのは源泉所得税の法定納期限後であるから,XはYに対し本件債務免除の錯誤無効を主張することはできない。

 ただ,この点については,第一審から第一次上告審までの審級では積極的な判示はされませんでした。一方,差戻控訴審判決では,以下のような判示がされています*7。法定納期限後は納税者は錯誤無効を主張できない,と一律に区切る議論と言えるかと思います。

 申告納税方式の下では,申告納税方式における納税義務の成立後に,安易に納税義務の発生の原因となる法律行為の錯誤無効を認めて納税義務を免れさせることは,納税者間の公平を害し,租税法律関係を不安定にすることからすれば,法定申告期間を経過した後に当該法律行為の錯誤無効を主張することは許されないと解されるところ…,源泉徴収制度の下においても,源泉徴収義務者が自主的に法定納期限までに源泉所得税を納付する点では申告納税方式と異なるところはなく,かえって,源泉徴収制度は他の租税債権債務関係よりも早期の安定が予定された制度といえることからすれば…,法定納期限経過後の錯誤無効の主張は許されないと解すべきである。
 …そうすると,本件でも,Xが法定納期限経過後に上記のような錯誤を主張することは,許されないというべきである。

 今日出された第二次上告審判決は,法定納期限によって一律に主張の可否を区切る原判決は誤りとしたうえで,錯誤無効によって経済的成果が失われたことをXが主張していないことをもって,債務免除の錯誤無効によって処分が無効になったとは言えない,として,Xの上告を棄却する判決でした。いずれ裁判所のウェブサイトに判決文が掲載されるかと思いますので,詳しくはそちらをお読みください。
 税負担の錯誤と処分の効力について,経済的成果が失われたか否かという議論を最高裁判所がしたのは,これが初めてではありません。譲渡所得に係る更正処分等が争われた事件において,以下のような判示をしています*8

 個人がその有する資産の譲渡による譲渡所得について所定の申告をしなかったとしても,当該譲渡行為が無効であり,その行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたときは,右所得は,格別の手続を要せず遡及的に消滅することになるのであって,税務署長は,その後に右所得の存在を前提として決定又は更正をすることはできないものと解される。

 今回の判決は,ここで挙げた平成2年最判のような法理の射程が申告所得税のみならず源泉所得税にも及ぶ旨を確認した判決と言うことができるのではないか,と思います。

 もっとも,当該判決について個人的に疑問に感じたのは,「債務免除益について,経済的成果が失われたと言えるのはどのような場合なのか」という点でした。
 債務免除益は,何か金銭や資産を取得することによって得られる収入ではありません。所税36条の分け方でいえば,金銭でも物でも権利でもなく,経済的利益によって収入するものです。このようなものの経済的成果を失わせる,例えば,返還したり原状に回復するということは,どのように為されるのだろうな,ということを疑問に思いました。例えば,債権者と債務者の間で債権の存在を確認する訴訟を起こす,ということになったりするのでしょうか(そうすると,なれ合い訴訟と課税関係というまた別の問題とも隣接しそうです)。この点については,今後研究を更に進めて参りたいと思います。

 倉敷青果荷受組合事件は,おそらくこれで全ての争いが終わったということになるのではないかと思います。これまでの訴訟で提示されてきた論点については,全て結論が出ました*9
 この事件でXの源泉徴収義務の有無が争われたのは,当時の理事長であるAの平成19年分の所得税ですから,10年以上経ってようやく課税関係が最終的に確定したということになります。処分および不服申立てがされたのは平成22年ですから,争った期間に限っても9年に及びます。租税訴訟は比較的長期に争われることが多いと言われますが*10,その中でもかなり長く争われた事案ということができるのではないかと思います。
 事案自体は(Aの資産等の評価を除き)そこまで複雑ではなかったように思うのですが,具体的な課税関係に当てはめると,給与所得の範囲をめぐっても,債務免除益の課税問題としても,非常に限界的な事例と言えるのではないかと思います。金子宏『租税法』が明確に第一次上告審判決を批判していることが,このことを表しているのではないかと思います*11
 個人的にも,債務免除益の課税問題を研究テーマとして選んだ後に,修士論文執筆中に(確か租税法学会傍聴中に)第一次上告審判決が出て,テーマを選ぶ契機になったわけではないのですが,ずっとこの事件を意識しながら研究を進めてきた,非常に思い入れのある事件です。博士後期課程の研究をまとめる段階にあるこの時期に判決が出て,勝手に感慨深く感じています。

 以上,長くなりましたが,判決を傍聴してきたということと,若干の検討を書きました。

(2018/9/25 14:45追記)
 判決文が裁判所のウェブサイトにアップロードされました。下記リンクよりご覧ください。
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

 なお,山崎裁判長による補足意見が付されています。法廷意見は,Xが錯誤無効による経済的成果の喪失を処分時点までに主張していなかったことを重視したものです。一方,補足意見は,仮に主張がされたとしても,要素の錯誤があったと言えるのか,という点を主に論じています。
 また,法廷申告期限後の錯誤無効の主張を一律に退ける(原審のような)考え方を批判する学説として,ブログ執筆後,渋谷雅弘「課税リスクへの対処方法を巡る一考察」金子宏ほか編『租税法と市場』(有斐閣,2014年)128~135頁に触れました。

*1:岡山地判平成25年3月27日税資263号順号12184。

*2:広島高岡山支判平成26年1月30日税資264号順号12402。

*3:最判平成27年10月8日判タ1419号72頁。

*4:広島高判平成29年2月8日(判例集未登載,LEX/DB文献番号25545867)。

*5:最判平成元年9月14日判時1336号93頁。

*6:金子宏『租税法[第22版]』(弘文堂,2017年)123~124頁参照。

*7:前掲注(4)。

*8:最判平成2年5月11日訟月37巻6号1080頁。

*9:なお,当該事件における不納付加算税の賦課決定処分について争う余地があると指摘する文献として,木山泰嗣「債務免除益事件の差戻審判決に含まれる諸問題」青山法学論集59巻3号(2017年)118頁参照。

*10:中里実ほか編『租税法概説[第2版]』(有斐閣,2015年)72~73頁[宮塚久執筆部分]参照。

*11:金子・前掲注(6)232頁参照。

『教養としての所得税法入門』をご恵贈いただきました。

 弊学法学部の木山先生より,本日発売された『教養としての所得税法入門』をご恵贈いただきました。詳細は下記リンクをご覧ください。

www.njg.co.jp

 前著『教養としての税法入門』(2017年)も昨年いただきました。このブログにも書いています↓

taxfujima.hatenablog.com

 前著に続き,入門書と称しながら,非常に骨太な記述がされています。「はじめに」において,税金百科のような書籍ではなく,ある程度読み応えのある書籍を目指したことが述べられています(3~4頁)。実際,なかなか難解な倉敷青果荷受組合事件(最判平成27年10月8日)が序章の主たる素材とされています(34~44頁)。著名かつ所得概念を考える出発点としやすい事例とはいえ,米国のMacomber判決*1についても論じられています(96~98頁)。
 私の関わり方としては,前著についてはある程度事前に読んでコメントしたのですが,今回は,お気遣いいただき,1頁だけ原稿を拝見するに留まりました。ただ,「はじめに」で名前を挙げていただき(4頁),拙稿も引用していただきました(113頁)。書籍をいただいたことも含め,木山先生,ありがとうございました。
 簡単ですが,こんなところで。

*1:Eisner対Macomber事件連邦最高裁判所判決(252 U.S. 189 (1920))。

アメリカ税法研究会

 一昨日(8/27),弊学法学研究科アメリカ税法研究会が開催されました。
 前回の研究会についてはこちらをご参照ください↓
taxfujima.hatenablog.com

 今回の研究会では,私が,米国の事業再生税制(内国歳入法典§§108, 1017)について報告しました。
 米国の事業再生税制に関する比較法的検討は,髙橋祐介先生が「企業再生と債務免除益課税」という先駆的な業績を残されています。また,近時の書籍として,長戸貴之先生の『事業再生と課税』は,倒産処理法制を含めた非常に幅広い観点と,法人税の創設から現代までの長い時間的幅を兼ね備えた非常に優れた分析をされています。
 これらの先行研究を参照しつつ私も報告したのですが,これらの優れた先行研究に書いていないことを探して新規性を生み出すのはなかなかに難しいなぁ,というのが正直な感想でした。新たなこともいくつか述べてはみたのですが,本質的な議論だったのか,正直なところあまり自信はありません。

 研究会では,様々な視点から質問をいただきました。自分の研究に足りない点がわかったのはもちろん,今後の研究に資するような,新たな議論もしていただきました。研究会の議論を活かして,今後とも頑張りたいと思います。
 今月はもう1記事書く予定です。お楽しみに!