What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

日本税法学会関東地区研究会報告

 本日、日本税法学会関東地区研究会で報告の機会をいただき、報告して参りました。
 貴重な機会を与えていただき、ありがとうございました。とても参考になる質問を多数いただき、勉強になりました。質問をしてくださった先生方、誠にありがとうございました。
 内容については、今後形にしたいと思っているので詳しくは書きませんが、博士後期課程で行ってきた研究内容に深く関わる裁判例の判例研究です。かなり踏み込んだ判示をしていて、大変論じ甲斐のある判決でした。
 いただいたご示唆を活かして、今後とも研究を頑張って参りたいと存じます。今後ともご指導ご鞭撻のほどを宜しくお願いいたします。

第09回関西租税法若手研究会

 明けましておめでとうございます。今年も,このブログ(および藤間大順)のことを何とぞ宜しくお願いいたします。

 本日,大阪府大阪市で開催された第09回関西租税法若手研究会に参加して参りました。
 主催の小塚先生,日本滞在中の貴重な期間に企画してくださり*1,誠にありがとうございました。

 今回の研究会では,3人の研究会メンバーが報告しました。
 まず,私が,「債務免除益の課税理論」と題し,博士後期課程の研究を概観するような報告を行いました。総花的というか,取りとめの無い報告であったかと思うのですが,非常に有益なご示唆を多数いただきました。報告の機会を与えてくださり,また様々な議論をしてくださり,誠にありがとうございました。
 次に,一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻博士後期課程の堀さんが,「我が国国際課税制度の今日的考察」という題で報告をされました。外国税額控除制度という基本的な制度について,租税回避への対策等によって各国の税制が変化する中でどのような問題が生じうるかという点について議論されていました。ダイナミックな問題について精緻な分析をされているご報告で,大変勉強になりました。
 最後に,岡山大学の小塚先生が,”The Basic Functions of Basis”という題で報告をされました。包括的所得概念とは何か,という所得課税の根幹に関わるレベルからBasis(ベイシス)という概念の意義について検討をされていました。とても高度だったので全て理解できたかはわからないのですが,非常に刺激的かつ個人的な関心にもかなり近いご研究でした。

 博士後期課程在学中,関西租税法若手研究会での報告を論文を書く際の目標とすることによって,自分の研究のレベルを保つ努力を重ねることができたと思っております。まだまだ不勉強な点もありますが,ひとまず,博士後期課程で予定している研究の全体像について報告をすることができ,個人的にはホッといたしました。参加されている先生方,今後とも何とぞご指導ご鞭撻のほどを宜しくお願いいたします。

*1:小塚先生は,現在米国で在外研究をされています。

「企業再生税制と事業再生税制の差異」が公開されました。&2018年のふりかえり

 今月発行された日本租税理論学会編『租税理論研究叢書28 所得概念の再検討』(財経詳報社)に,拙稿「企業再生税制と事業再生税制の差異」が掲載されました。
 昨年の日本租税理論学会第29回大会における報告の一部を論文としてまとめたものです。昨年の報告については下記の記事を参照。
taxfujima.hatenablog.com

 論文の内容は,法人税法上の企業再生税制(法人税法59条等)と所得税における事業再生税制(所得税法44条の2,租税特別措置法28条の2の2)の違いを抽出したうえで,その違いは維持されるべきか,という立法論を検討したものです。
 上記記事にあるように,第29回大会では名古屋市の河村市長の講演が行われましたので,その講演録も当該書籍には収録されています。論文も,私のものはともかく,大変興味深い論文が多数掲載されております。ぜひご覧いただけますと幸いです。

 今年のブログ記事はこれで最後かと思いますので,少しだけ今年をふりかえっておきます。
 今年は,研究生活に一つの区切りをつける一年になりました。(これまでサボッてきたツケを払ったために)色々と大変でしたが,何とか平穏な年末を迎えられて,個人的にはホッとしております。業績としては論文を3本出しました(「貸与型奨学金と債務免除益課税」,「租税利益の原則(Tax Benefit Rule)」,「企業再生税制と事業再生税制の差異」)。
 ブログとしては,「eスポーツ大会の賞金と源泉徴収義務」を書いたことでアクセスが増えたことが大きかったかな,と思っています。eスポーツの試合は今でもちょくちょく見ているので,今後とも目を配っていきたい話です。
taxfujima.hatenablog.com

 あとは,倉敷青果荷受組合事件第二次上告審判決(最判平成30年9月25日)を傍聴した記事も書きました。傍聴したその日に急いで書いた覚えがあります。
taxfujima.hatenablog.com

 このところ自分の研究のことをまとめる記事しか書けていないので,また何か書く素材を見つけて書いていきたいと思っております。今後ともぜひこのブログ(と藤間大順)のことを温かく見守ってくださると嬉しいです。
 では,皆さま良いお年をお迎えくださいませ。

(2019/1/28追記)
 財経詳報社のウェブサイトに,当該叢書のページができていました。下記よりぜひご覧ください。

zaik.jp

日本租税理論学会研究大会

 12/22(土)から23(日)にかけて,日本租税理論学会第30回研究大会に参加して参りました。会場は,大東文化大学の大東文化会館でした。
 前回の大会については,昨年書いた下記記事を参照。
taxfujima.hatenablog.com

 1日目は,2件の一般報告およびシンポジウムの第1部が行われました。
 まず,白鴎大学法学部の石村耕治先生が,「トランプ税制改革:私立大学内部留保課税の導入」と題した一般報告をされました。いわゆるトランプ税制改革*1によって導入された私立大学の内部留保に対する課税について,所得課税における内部留保に対する課税全般から丁寧に解説してくださいました。
 その後,大東文化大学の浅野先生が,「租税立法と法理論」と題した一般報告をされました。租税法規の立法政策について,憲法上どのような理論的制約や根拠があり得るのか,という点を議論されていました。
 シンポジウム第1部は,「わが国税制改革の課題」と題し,3件の研究報告が行われました。
 まず,名城大学の伊川先生が,「わが国の所得税の現状と課題」と題した報告をされました。雑所得(所得税法35条)という所得分類の範囲が「拡大」してきていることや,「家族」のあり方が多様化している現状において,人的控除等の税法上の制度がどのように対応してきているのかという点を論じていました。
 次に,立正大学の長島先生が,「法人税法22条の2の検討」と題した報告をされました。平成30年度税制改正*2によって新設された法人税法22条の2の意義およびその問題点について論じていました。
最後に,愛知大学の木村先生が,「相続税の性格の再検討」と題した報告をされました。相続税の課税根拠や,生保年金二重課税訴訟*3等を根拠に近年盛んに論じられている相続税と譲渡所得課税の二重課税の問題*4について,議論を整理したうえで自身の考えを論じていました。

 2日目は,シンポジウム第2部「各国の税制改革の動向」について,3件の研究報告が行われました。
 まず,立命館大学の河音先生が,「トランプ税制改革(2017年減税・雇用法)の特徴と課題」と題した報告をされました。トランプ税制改革について,その国際課税の側面を中心に論じていました。トランプの特異性はあるものの,むしろそれ以前の議論と連続する改正という側面もあると論じられている点が印象的でした。
 次に,税理士の一由先生が,「英国における法人税改革と我が国の法人税」と題した報告をされました。マーリーズ・レビューが英国の法人課税に与えた影響を整理したうえで,日本の法人税制について得られる示唆を論じていました。
 最後に,立命館大学の安井先生が,「ドイツにおける近年の企業税改革について」と題した報告をされました。ドイツにおける2008年の税制改正によって企業税がどのように改正されたのか論じたうえで,それに対する学会等の評価やご自身の関心である欠損金の繰越制度が受けた影響を論じていました。
 2日目は,その後,シンポジウム第1部および第2部についての質疑応答も行われました。

 個人的には,そろそろ博士後期課程の研究をまとめる段階に入ってきて,次の研究テーマをどうしようか考えています。そんな中で,多様な論点について議論された今回の学会は非常に興味深かったです。
 簡単ですがこんなところで。昨年の報告内容の一部を研究叢書に掲載していただいたようですので,掲載されたことを確認し次第書くと思います。年内に書くブログ記事はそれで最後だろうと思います。

*1:Tax Cuts and Jobs Act of 2017, Pub. L. 115–97, 131 Stat. 2054 (2017).

*2:平成30年法律第7号。

*3:最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁。

*4:東京高判平成25年11月21日税資263号順号12339など参照。

アメリカ税法研究会

 本日,弊学法学研究科アメリカ税法研究会が開かれました。
 前回の研究会についてはこちらをご覧ください↓

taxfujima.hatenablog.com

 本日の研究会では,米国税理士(Enrolled Agent)の成田先生が,減価償却費の控除に関する米国の租税裁判所の裁判例*1について報告してくださいました。当該事件は,プロのexotic dancerが豊胸手術によって胸に入れたシリコンについての減価償却費の控除の可否という論点が争われた裁判例です。日本で起きることはなかなか考え難い,事案自体も非常に興味深い事件だったのですが*2,判決も,規範も当てはめもなかなか興味深い論点を提示しており,大変勉強になりました。また,もう1つ,興味深い近年の判決についてもお話しいただきました。参加者は少なめではあったのですが,議論が盛り上がる,とても楽しい研究会になりました。成田先生,ありがとうございました。

 短いですが,こんなところで。

*1: Hess v. Commissioner, T.C. Summary Opinion 1994-79.

*2:所税令6条に列挙された減価償却資産のどれにも当てはまらなさそうに思えます。どうなんでしょうか。