読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。

Trump次期大統領とDES

ニュース

New York Timesこの記事
経営するカジノの再建にあたって問題となった債務免除益課税について,Trump次期米国大統領が"Stock-for-Debt Swap",日本でいう「デットエクイティスワップ(DES)」の手法を用いてこれを回避した旨が伝えられている。
DESとは,読んで字のごとく,債務の返済に苦しむ法人等が,債務と出資を交換してもらう取引である。一般的な法形式としては,債権者が債権を現物出資し,それに対して債務者が株式を発行する形式で行われる。債務者の事業再生が果たされる一方,債権者にも債務者の経営再建後に株式の売却益が得られるというメリットがあるとされる*1
DESにより債務を免れたことから課税所得(債務免除益)が生じるか否か,ということは,日米共に議論が盛んに行われて来た。ほとんど無価値の株式を発行して債務から免れたのだから利益が生じるとも考えられるし,ただ債務と株式を等価交換しただけであり利益は生じないとも考えうる。
この記事にも記載があるが,米国では,1993年まで,DESを受けた法人に課税所得(債務免除益)が生じるものとは取り扱われてこなかった*2。Trump氏が用いたpartnershipのDESは,更に2004年まで債務免除益が生じるとは考えられていなかったようである。Trump氏は,この仕組みを上手く利用したと言える。これをずるいと評するかどうかは,人により異なるだろう。
日本では,適格現物出資にあたる現物出資型DESにつき,混同(民法520条)から益金(法人税法22条2項)である債務免除益が生じる旨判示された裁判例がある*3。現在では,税制改正により,適格現物出資にあたるDESからは益金が生じる旨が明らかにされている(法人税法8条1項8号)。最近の事例として,DESから益金が生じる旨の説明義務を果たさなかったとして税理士への損害賠償請求が認容された裁判例がある*4

*1:「私的整理に関するガイドライン」Q&A(https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/hojin/050511/guideline.pdf(pdfにつき注意))のQ38参照。

*2:高橋祐介「企業再生と債務免除益課税」総合税制研究12号(2004年)169頁参照。

*3:東京地判平成21年4月28日税資259号順号11191。控訴は棄却され(東京高判平成22年9月15日税資260号順号11511),上告は不受理(最決平成23年3月29日税資261号順号11656)。

*4:東京地判平成28年5月30日(未公刊,LEX/DB文献番号25543800)。