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税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

教養としての「税法」入門

 弊学法学部教授の木山泰嗣先生より,昨日出版された『教養のための「税法」入門』(日本実業出版社,2017年)をご恵贈いただきました。木山先生,ありがとうございます。

 詳細はこちら↓から。
www.njg.co.jp

 この本で個人的に面白かったのは,税法の歴史がしっかりと整理されている点でした。第1章で体系的に論じられているのですが,イギリスのマグナ・カルタから,日本の明治時代の税法を含む法律の整備,シャウプ勧告に基づく戦後の税制の構築を経て現在に至るまで,コンパクトかつ詳細に書かれています。歴史については他の部分でも触れられていて,租税法律主義(憲法84条)の文言の意義(146~147頁)や申告納税制度の導入過程(220~226頁)などの部分で,歴史的な経緯が論じられています。
 弁護士として携わられてきたものを含め具体的な事件を縦糸として,研究者として整理されてきた税法の歴史を横糸として,まさしく木山先生だから書ける税法の入門書かな,と読んでいて思います。税務に携わっている方はもちろんのこと,税金をなんだか納得できずに払っている経営者の方,給与から引かれている税金に少し興味がある社会人の方,これから社会に出ようとしている学生の方にもオススメです。少しニッチな宣伝かもしれませんが,租税教育に携わっている税理士の方にも,色々な視点から税法を捉えられるのでオススメかもしれません。

 本書を読んで個別税法の仕組みにも興味を持たれた方は,税法の入門書・基本書に進まれるとより深い学習ができるのではないか,と愚考します(もちろん,個別税法の仕組みについては注で補足してくださっているので,前提知識が必要な本であるというわけではありません。むしろ,前提知識が無くとも税法の基礎を身に着けられる本だと思います)。
 以上,長々と書いてしまいましたが,お礼がてら宣伝でした。木山先生,誠にありがとうございました。読んでしっかり勉強したいと思います。