What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

アコード租税総合研究所租税判例研究会

 昨日,弊学の木山先生アコード租税総合研究所租税判例研究会で報告されるということで,拝聴して参りました。
 木山先生は,非居住者への不動産所得の支払いに係る源泉徴収義務の有無が争われた事件(第一審判決の東京地判平成28年5月19日および控訴審判決の東京高判平成28年12月1日)について,判例評釈を報告されました。質問も相まって,この問題について実務的にも研究としても興味深い議論が展開されていました。
 木山先生のご関心としては,源泉徴収制度全般に通じる問題について報告されていて,債務免除益課税と給与等に対する源泉徴収制度が交錯した事案である倉敷青果荷受組合事件(最判平成27年10月8日等)との関係性も議論されました。
 源泉徴収制度については,それが正当化されうる根拠が常に問題とされねばならないのではないか,と個人的には考えています。言わば,手数料の支払い無しでの徴税業務代行ですから,課税権者である国民が法律を通して支払者にその業務を代行させる正当性を何らかの形で常に立証しなければならない,ということです。最判平成23年3月22日等,極限的な事例が様々に出てきている中で,果たして源泉徴収制度を正当化する一貫した根拠が定立されうるのか,今一度問われるべきなのではないか,と考えています。
 今後の研究を通して,この問題についても少しずつ考えを深めて参りたいと思います。そのきっかけになるとても貴重な機会でした。アコード租税総合研究所の皆さま,木山先生,ありがとうございました。