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税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。

日本租税理論学会大会(初めての学会報告)

一昨日(12/8)から昨日(12/9)まで,日本租税理論学会第29回大会(PDFにつき注意)に参加して参りました。
会場は名古屋市椙山女学園大学星が丘キャンパスでした。周辺を含めとても素敵なキャンパスでした。

1日目(12/8)は,一般報告として2件,シンポジウム報告として3件の報告が行われました。
齊藤先生は,椙山女学園大学の先生であり,今回の大会にあたってもご尽力くださった先生です。「消費税増税を巡る議論と課題」と題して,消費税を増税した場合や複数税率(軽減税率)制度を導入した場合にどのような効果が生じるのか,推計データを元に発表してくださいました。
黒川先生は,「会計学批判―税法研究の現場からみる企業会計中心の会計学の問題点」と題して,税法学上の様々な問題について,複式簿記的思考によって解決することが可能なのではないか,という提言をされていました。

以上の2件が一般報告であり,その後,今回の「所得概念の再検討」というテーマに沿ったシンポジウム報告が行われました。
まず,川勝先生(財政学)は,「ミード報告にみるイギリス型支出税の意義と限界」と題して,『現代租税の理論と思想』に掲載された論稿を元にした発表をされました。個人的に,『現代租税の理論と思想』は『所得税の理論と思想』と合わせて愛読書としておりますし,支出税構想には(賛否はともかくとして)興味があるので,とても勉強になりました。
次に,依田先生税務会計学)は,「法人税における課税所得概念の再検討」と題し,企業会計の変遷とそれに対する法人税法の対応を整理してくださいました。会計の三重構造は崩壊しつつあるのではないか,といったような議論が(特に大竹貿易事件(最判H2.11.25)やビックカメラ事件(東京高判H25.7.19)等を素材として)議論されるところですが,具体的にどのように法人税法が乖離しつつあるのかが鮮明になりました。
シンポジウム報告の最後には,奥谷先生(税法学)が, 「包括所得概念の問題点と市場所得概念」 と題した報告をしてくださいました。包括的所得概念が現行の税法上の取扱いを説明しきれない点,市場型所得概念がむしろ取られるべきではないかという点を議論されていました。奥谷先生は長年市場型所得概念について研究されており,非常に勉強になりました。
1日目の最後には,名古屋市河村市長が自身の行ってきた改革について講演してくださいました。当然テレビ等で拝見している方なので,生でお話を聴けたのはとても嬉しかったです。

2日目は,債務免除益課税をテーマとして,弊学法学研究科関係者によるグループ報告が行われました。
櫻井先生は,法学研究科OBの税理士であり,ご自身の論稿(「所得税法における債務免除益課税 : 遅延損害金の場合を中心として」)を元に「所得税法上の債務免除益課税問題―遅延損害金の債務免除益課税を中心として―」という報告をされました。
次に,峯岸先生は,税理士および公認会計士業務の傍ら法学研究科ビジネス法務専攻の博士課程に在学し研究をされています。会計基準法人税法の関係性について研究をされており(詳細はこちらの論稿をご覧ください),ご自身のテーマと債務免除益課税を絡め,「法人税法における債務免除益課税の法解釈と制度の概要」と題した報告をされました。
3番目に,私が,「広義の事業再生税制に現在する2つの差異」と題した報告をいたしました。詳細は後に書きます。
最後に,木山先生が,「債務免除益課税の諸問題―判例等の状況を中心に―」と題した報告をされました。木山先生は倉敷青果荷受組合事件(最判H27.10.8)の判例評釈を発表されるなど,債務免除益課税について研究されています。今回はその集大成のような形で,債務免除益に対する源泉徴収制度のあり方について報告されました。

今回,私は初めての学会報告でした。大学院生という若輩の身でありながらこのような機会をいただけたことを,租税理論学会の皆さまに本当に感謝しなければならないと思っております。ありがとうございました。
報告の内容は,「広義の事業再生税制」と題して,企業再生税制(法税59等)に内在する差異および企業再生税制と事業再生税制(所税44の2)の差異について考察しました。「広義の事業再生税制」とは,債務免除益に対して課税しない旨を定めた税法上の規定の総称(私の造語)です。債務免除益課税という分野で中心的に論じられてきた点であり,今回発表できたことは個人的な研究の進捗という意味で非常に大きいものでした。
また,発表したことで,色々な改善点や発見がありました。特に,発表の技術についてはまだまだ未熟な点が大きく,聴衆の皆さまにしっかりと伝えることを考えた発表を行わなければならないな,と反省もしました。また,グループの中でより綿密に報告の内容を練る(4つの報告を寄せ集めるのではなく,グループとして1つの報告を形作るような作業をする)必要があったな,とも感じました。
報告後,いくつか質問もいただき,この点も勉強になりました。質問いただいた皆さま,ありがとうございました。

今回の学会は,初めて報告を行ったという点はもちろんのこと,自分の研究テーマ(債務免除益課税)にも深く関わるテーマ(所得概念)について行われ,とても有意義でした。学会でいただいたものを活かして,今後研究を頑張って参りたいと思います。
2017年の研究生活も,成果物が要求されるものはひとまず一段落しました。とはいえ,ここでサボるのではなく,次の成果物のために,まずはインプットから始めて参りたいと思います。
今年も弊ブログをお読みいただきありがとうございました(たぶん,今年最後なんじゃないかと思います)。良いお年をお迎えくださいませ。