What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

名古屋青年税理士連盟合同研修会

 昨日,ウインクあいちで行われた名古屋青年税理士連盟(以下「名青税」)の合同研修会にて,講師を担当しました。
 ご依頼いただいた論題は,「源泉徴収制度とその問題点」として,東京地裁の平成28年の判決*1で争われた非居住者に対する土地等の譲渡に伴う源泉徴収義務(所税161条1項5号,212条,213条)の問題および倉敷青果荷受組合事件*2で争われた給与所得(所税28条)に該当する債務免除益に対する源泉徴収義務(所税183条)の問題を論じて欲しい,というものでした*3。そこで,「源泉徴収制度をめぐる近時の法的紛争とその課題―『天引』との関連からの整理―」と題して,源泉徴収制度の基本的な性格や*4,平成20年代の最高裁判決*5を絡めながら議論をしました。天引が困難であったり不可能な所得に対する源泉徴収義務については,そのようなものはありうるにせよ,源泉徴収制度の基本的性格から言えば,天引が容易な所得に対するものよりもより強い根拠づけが必要であるべきこと,現状の判例や裁判例にはそのような傾向はあまり見られないことを指摘しました*6

 税理士の先生方の前でお話しする機会をいただくのは初めてだったので,かなり緊張しておりました。研究会などでの報告とも学生に対する講義とも違う感じなのだろうな,と思っておりました。実際そうでしたが,名青税の先生方はとても温かく私の拙い議論に付き合ってくださり,非常に充実した議論をすることができました。初めて機会をいただいたのが名青税さんで本当に良かったと思います。誠にありがとうございました。今後とも何とぞ宜しくお願いいたします。
 また,私は名青税の研究部の先生方に呼んでいただいたのですが,制度部の先生方は,税理士の安田信彦先生をお呼びして,「情報化社会と税理士制度」と題する講演を開催されました。内容が大変興味深かったのはもちろん,様々なお話が面白く,大変勉強になりました。

 名古屋は,初めて学会に参加した場所であり*7,初めて学会報告をした場所でもあり*8,何かと縁があるな,と感じております。食べ物が美味しいですし,とても好きな土地です。今後とも名古屋に研究関連のことで来られるよう,研鑽を積んで参りたいと思います。

(2019/9/30追記)
 名青税さんのブログにて,下記のとおりに取り上げていただいていました。ありがとうございます!
meiseizei.blogspot.com

*1:東京地判平成28年5月19日税資266号順号12856東京高判平成28年12月1日税資266号順号12942により確定。

*2:最判平成27年10月8日集民251号1頁最判平成30年9月25日民集72巻4号317頁

*3:両判決を素材として源泉徴収制度について論じた論文として,木山泰嗣「源泉徴収制度をめぐる諸問題」青山ローフォーラム6巻2号(2018年)73頁があります。ただし,木山先生は天引の可否にはあまり着目しておらず(木山・同106~107頁参照),この点,私とは少し関心が異なります。また,片山直子「源泉徴収義務をめぐる近時の法的諸問題」税法学581号(2019年)229頁も参照。

*4:最判昭和37年2月28日刑集16巻2号212頁最判昭和45年12月24日民集24巻13号2243頁最判平成4年2月18日民集46巻2号77頁を素材にしました。

*5:破産管財人の源泉徴収義務に係る最判平成23年1月14日民集65巻1号1頁および給与債権の強制執行に係る最判平成23年3月22日民集65巻2号735頁を扱いました。

*6:なお,天引との関連から債務免除益に対する源泉徴収義務を論じた論文として,竹内眞「所得税法183条1項における支払概念と債務免除益課税」青山ビジネスロー・レビュー8巻2号(2019年)35頁があります。竹内先生は,名青税のOBであり,今回私がお話しする機会を設けるにあたり,名青税の研究部の先生方とともに尽力してくださいました。誠にありがとうございました。

*7:日本税法学会第105回大会です。

*8:こちらの記事を参照。