What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

租税法学会総会

 昨日,明治学院大学白金キャンパスで行われた租税法学会の第48回大会の研究総会に,オブザーバーとして参加しました。
 租税法学会の傍聴は,二年ぶりとなります。一昨年の記事として,下記を参照。

taxfujima.hatenablog.com

 今回の研究総会は,「家族と税制」をテーマとし,5件の研究報告が行われました。
 まず,東北学院大学の加藤友佳先生が,「多様化する家族と税制の対応」と題する報告をされました。加藤先生は,同性婚などに対する税制のあり方について専門的に研究されている方です。『現代租税法講座』のご論稿*1などから続く問題関心についてご報告されていました。
 次に,中央大学の渋谷雅弘先生が,「家族財産の管理・承継の変化と税制」と題する報告をされました。現行の相続税・贈与税の仕組みと,財産の承継形態の変化がどのように関わるのか,不整合な点をどうすべきか,という点を議論されていました。
 3番目に,京都大学の岡村忠生先生が,「消費・投資の場としての家族ー租税理論の観点から」という報告をされました。家族という場においてどのような消費や投資が行われるのか,それに対して税制はどのように関わっているか論じられていました。
 4番目に,東京大学の藤谷武史先生が,「家族と(再)分配」と題する報告をされました。税制のみならず,国家がどのように家族を捉えてきたのか,という根本的な点から議論をされていました。
 最後に,広島修道大学の奥谷健先生が,「ドイツにおける家族課税ー所得税を中心にー」と題する報告をされました*2。ドイツ憲法裁判所の判例を中心に,家族の多様化と税制の関わりがどのようにドイツで捉えられてきたのか論じたうえで,日本法に対して得られる示唆を検討されていました。

 家族のあり方の多様化については,私法上の対応(e.g. 同性婚を認めるべきか)がしばしば議論になります。ただ,税制もそれに大きく影響を受けるのであって(e.g. 同性のパートナーに配偶者控除を認めるべきか),今後とも注視していかなくてはならない,重要な領域であると感じました。傍聴して本当に良かったです。租税法学会の先生方,誠にありがとうございました。
 学会を傍聴されていた方から,ブログについて話を振っていただけたりして,それもとても嬉しかったです。今後とも,研究の傍ら,ブログも細々と続けていきたいと思います。

*1:加藤友佳「家族のあり方と租税」金子宏監修『現代租税法講座 第2巻 家族・社会』(日本評論社,2017年)3頁参照。

*2:奥谷先生ご自身もブログを書かれています。こちらを参照。