What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

日本租税理論学会研究大会(初めてのシンポジウム報告)

 一昨日および昨日(12/7,8),愛知大学名古屋キャンパスで行われた日本租税理論学会第30回大会*1に参加して参りました*2
 昨年の記事として,下記参照。
taxfujima.hatenablog.com

 今回の大会では,2件の一般報告,1件の講演,5件のシンポジウム報告が行われました*3
 まず,一般報告として,日本大学の阿部徳幸先生が,「韓国における納税者権利保護の動向」と題する報告をされました。日本ではまだ制定されていない納税者権利憲章について,韓国における立法や運用の動向を報告されていました。
 次に,大東文化大学の髙沢修一先生*4,「東アジアの儒教的経営と不正会計」 と題する報告をされました。東アジア,主に韓国の大企業の経営と儒教の関係性を議論されていました。

 講演は,名古屋市立大学の伊藤恭彦先生による,「タックス・ジャスティス―税の規範学―」というものでした。伊藤先生は,マーフィーおよびネーゲルの著作の翻訳や,ご自身の著作など,正義論の観点から税のあるべき姿について検討されている方です。実務誌である税務弘報においても,「タックス・ジャスティス入門」という連載をされています。今回は,伊藤先生のお考えのエッセンスについてお話ししてくださいました。
 
 今回のシンポジウムのテーマは,「租税上の先端課題への挑戦」というものでした。私は,関西大学の鶴田廣巳先生の「プラットフォーマーとデジタル課税」,千葉商科大学の泉絢也先生の「仮想通貨(暗号資産)取引と課税」,日本大学の本村大輔先生の「シェアリングエコノミーと課税」,立命館大学の望月爾先生の「デジタル化・グローバル化と納税者権利保護―税務行政のデジタル化とデータ保護を中心に―」と並んで報告の機会を賜り,「クラウドファンディング(Crowdfunding, CF)に対する課税―寄附型CFに関する実体法における問題点を検討対象として―」と題する報告をしました。
 一般報告については,2年前の租税理論学会大会で機会をいただいたのですが(こちらの記事参照),シンポジウム報告を行うのは今回が初めてでした。錚々たる先生方のご報告に比べると,当然ながら拙く,またダイナミックさには欠ける報告でした。ただ,自分のできる範囲でのことはしっかりできた,関心や意見は明示できた報告だったかな,とは考えています。内容としては,寄附型CFにつき,個人が一定の法人に対して行ったものについて寄附金控除が認められるべきかという点と,個人から個人が受けたものについて贈与税が課されるべきか所得税が課されるべきかという点を議論しました*5
 7日に報告,8日に質疑応答があったのですが,質疑応答では,大変勉強になる質問を数多くしていただきました。詳細は学会誌(租税理論研究叢書)に掲載されるかと思いますのでここでは控えますが,今後の課題を数多く見出せる,とても勉強になる機会でした。ご質問いただいた先生方,誠にありがとうございました。

 今回の報告は,正直なところ,私のような未熟者でもしっかりとできるのか不安に思いながら準備をしてきました。ただ,結果としては,自分の議論をある程度展開しつつ,研究を進める過程や質疑応答をとおして今後の研究にも繋がる,非常に有意義な機会となりました*6。今後しばらくの大きな研究テーマも,朧気ながら見えてきました。
 このような有意義な結果が得られたのは,私自身によることよりも,途中で報告の機会を何度か与えていただいたこと,そこで得たフィードバックによって報告を練ることができたことによる面が大きいです。途中でいただいた報告の機会については,下記の記事を参照。いずれの機会においても,出席いただいた先生方やご質問いただいた先生方,誠にありがとうございました。

taxfujima.hatenablog.com

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 また,報告にあたり,アカデミスト㈱の大塚美穂さまには,CF取引の実際のところについて,色々とご指導を賜りました。弊学名誉教授の中村芳昭先生にも,(いつもながら)報告内容についてご指導を賜りました。ありがとうございました。
 以上のように,様々な方のお助けを得ながら,何とか,初めてのシンポジウム報告を行うことができました。今後とも精進を重ねていきたいと思います。

*1:こちらの日本租税理論学会会報第59号を参照。

*2:なお,大会終了後,9月に研修としてお話しさせていただいた名古屋青年税理士連盟研究部の先生方にお招きいただき,その後の研究の進行状況について議論させていただきました。ありがとうございました。

*3:報告のレジュメは,全て学会のウェブサイトにアップロードされています。こちらを参照。

*4:髙沢先生は,今回の大会をもって事務局長を退任されました。これまで大変お世話になりました。ありがとうございました。

*5:詳細は,前掲注(3)に上がっている私のレジュメを参照。アップロードしていただき,ありがとうございます。

*6:今回の報告に当たっては,立命館大学の望月先生に,報告希望を出すよう勧めていただくなど大変お世話になりました。ご自身のご報告もあるなか,ありがとうございました。今後とも何とぞご指導ご鞭撻のほどを宜しくお願いいたします。