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税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

オンラインでの研究会(東アジア租税法研究会,2020年度第1回アメリカ税法研究会)

 久しぶりの投稿になってしまいました(なお,今月はそこそこ書くネタがある予定です)。最近,2つのオンラインでの研究会に参加したので,記事に残しておきたいと思います。

第2回東アジア租税法研究会

 8/21(金),第2回東アジア租税法研究会に参加しました。オンライン(MS Teams)にて開催されました。
 当該研究会は,これまで,関西租税法若手研究会と呼称していた研究会が今年度より改称したものです(関西租税法若手研究会の頃については下記の記事を参照)。岡山大学の小塚真啓先生が主催で,若手の研究者が参加している研究会であることは変わりません。

taxfujima.hatenablog.com


 第1回が5/25(月)に開催され,私も参加していたのですが,授業などに追われて記事に書き忘れていました。第1回の報告者は,学習院大学の長戸貴之先生でした(長戸先生,申し訳ありません)。

 第2回である今回は,2件の報告がされました*1
 まず,九州大学の田中晶国先生が,租税手続法に関するご報告をされました。手続保障という観点からはこれまで抜け落ちていた点に光を当てるご報告でした。今後,論文として公開予定とのことです。
 次に,小塚先生が,現在共著で執筆中の研究ノートについてご報告されました。昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大に対する対応として行われたとある取扱いの変更と租税法律主義の関連についてのご報告でした。

 いつもながら,この研究会は,今まさに何が問題になっているのか,という点について,形になる前の時点で議論に触れることができて,研究に関する刺激をたくさんいただけます。私も頑張らなければならないな,と強く思いました。

アメリカ税法研究会(2020年度第1回)

 8/30(日),アメリカ税法研究会に参加しました。オンライン(Zoomミーティング)にて開催されました。
 当該研究会は,これまで,青山学院大学にて開催されてきました(前回研究会につき,下記記事を参照)。ただ,今年から,青山学院大学に本拠を持つ中核メンバーがいなくなったので,私の本務校である神奈川大学の法学研究所の(研究費を受領しない)共同研究として再スタートすることになりました。
taxfujima.hatenablog.com

 今回の研究会では,2件の報告が行われました。
 まず,米国税理士の成田元男先生が,アメリカの連邦租税裁判所の判決であるJacobs v. Commissionerについてご報告されました。当該判決は,アメリカのプロアイスホッケーチームであるBoston Bruinsが選手に対して供与した食事の課税上の取扱いが争われた事案です。当該判決自体が面白かったことはもちろんのこと,アメリカと日本の制度の違いや,日本で起きたらどうなっていただろうという点など,非常に興味深い議論がされました。
 次に,私が,「連邦所得税が非課税となる”Gift”(内国歳入法典§102)の意義」という題で報告をしました。こちらについては,今後日本法との比較法的検討を行ったうえで論文として公表予定ですので詳しくは書きませんが,上記の条文につき,判例理論や学説を整理しました。

 今回の研究会は,オンラインで初めて,かつ神奈川大学法学研究所の共同研究に登録してからも初めて行われた研究会でしたが,色々な方が参加してくださり,議論も大変盛り上がりました。参加していただいた先生方,誠にありがとうございました。

オンラインでの研究会について

 最近の2回の研究会もそうですが,先日の若手法学研究者フォーラムなど(下記記事参照),今年度に入ってからの研究会は専らオンラインで行われています。
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 オンラインになることにより,何というかその場の雰囲気が醸成されにくかったり,あとリアルで同じ場所にいる懇親会でのぶっちゃけトークができなかったり,色々と不便な点はあります。一方,住んでいる場所を問わずに気軽に参加できたり,他の人の報告中もリラックスしながら聴けたり,メリットもたくさんあるように感じています。懇親会の後にすぐにベッドで休むこともできますし,Zoomだと,懇親会のときとか,ブレイクアウトルームの機能も便利です。個人的には,(若手法学研究者フォーラムで横田先生に言われてやってみたのですが)チャット欄に事前に質問を書いておくと,質問する方もその場その場で思ったことを残しておけるし,回答する方も文字になったものを見ながら答えられるので,かなり検討の質が上がるな,と感じたりしています*2
 オンラインでの研究会の「気軽に参加できる」というメリットはとても大きいので,今後とも,特に小規模な研究会では残っていくのかな,と感じています。上記のアメリカ税法研究会は,今後ともオンラインで開催していくつもりですし,参加者も鋭意募集中です。報告機会が得られることと報告が聞けること以外に特に参加するメリットはありませんし,仲のいいメンバーでマイペースに,報告したい人がいたら開催するような形でやっていますが,逆に負担もありません。アメリカ税法に興味がある方がいれば,ぜひご連絡いただけますと幸いです。

*1:なお,いずれの報告も,今後文字にして公表予定ですので,詳細はボカしながら書きます。

*2:もっとも,報告を聞きながら質問をチャット欄に書いておく,という営みには,少しコツも必要そうではあります。また,一応,オフラインでの研究会でも,チャット機能のようなものを使うことは不可能ではないと思います。実際,若手法学研究者フォーラムでは,オフラインで開催している段階から,WorkFlowyを使って,似たようなことをしてきました。