What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

『租税法』(日本評論社)をご恵贈いただきました。

 立教大学の浅妻章如先生および大阪府立大学の酒井貴子先生より,両先生が執筆された『租税法』をご恵贈いただきました。浅妻先生および酒井先生,誠にありがとうございます*1

www.nippyo.co.jp

 この書籍は,大学の学部生などの税法の初学者に向けて書かれた教科書です。目次を見てもわかりますが,税目もかなり網羅的に記述されています。ただ,「薄く広く」といった性質の教科書ではありません。帯でもはしがき(ⅱ頁)でも強調されていますが,メリハリをつけて,個別の論点を深いところまで解説している教科書です。いわば,枝葉は落として,深い幹をしっかりと叙述している,と言って良いかと思います。個人的にも,色々と研究で参考になる記述が多く,読んでいてとても刺激を受けています。
 とはいえ,ものすごく難しい書籍ではありません。あくまで初学者向けの教科書という性質は持ったままで,深いところまで書いてくれている書籍です。各節の最初には,その節で問題となる論点について1文で副題を付しています*2。具体的な判例や裁判例も数多く取り上げています。
 また,教科書の使い方として,8頁ごとに章や節の境目があり,8頁×28回で授業や学習を設計できるようになっているので,使いやすい教科書でもあろうと思います。かなりしっかりと設計したうえで書かれた教科書であることがうかがえます。
 「この制度はこうなっていますー」というだけの「解説」に満足できない,個々の制度の根幹から理解をしたいという方にお勧めの教科書だと思います。個人的にも,そういった制度の根本にある考え方や価値観を伝えることを大事にしながら授業をしたいと思っているので,ぜひこの教科書を参照しながら(研究はもちろんのこと)授業をしたいと思いました。重ね重ね,浅妻先生および酒井先生,すばらしい教科書をお贈りいただき,誠にありがとうございました。

*1:なお,浅妻先生は『租税法概説』(有斐閣)を,酒井先生は『租税法』(有斐閣アルマ)を,既に共著で執筆されています。

*2:たとえば,第1章Ⅰの租税法律主義と租税公平主義では,「大嶋訴訟:サラリーマンが実額経費を控除できないことは違憲となる差別か?」(1頁)という副題がついています。