What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

ディベート審査員

 先月,2つのディベート大会の審査員をつとめましたので,記事として残しておきたいと思います。

名城大学ディベート大会

 10/4(日),名城大学の伊川正樹先生のゼミと名古屋青年税理士連盟のディベートの審査員を務めました。ディベートはオンライン上の会議室で行われ,私も神奈川の自宅から審査員を務めました。
 伊川先生には日ごろからお世話になっています。また,名古屋青年税理士連盟(名青税)さんには,昨年度,研修の講師として招いていただきました。その際の記事として,下記参照。

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 当該ディベートでは,個人事業者が自身が経営している会社に対して支払った業務委託費が必要経費に該当しないとした裁判例を素材として争われました*1。必要経費の要件については,所得税法37条および45条1項1号,同法施行令96条を前提として,必要性要件および関連性要件という2つの要件があるものと解されています。当該裁判例では,このうち必要性要件について議論がされています。同族会社の行為計算否認規定(所得税法157条)との境目という点も議論の対象となっており,興味深い事例です。
 ディベートは,初めてのオンラインでの開催ではありましたが,スムーズに運営がされていて,心地よく審査できました。審査員の審査には関わりはないのですが,観客の投票がその場で共有されたりもして,オンラインだからこそできたこともたくさんあったように思いました。内容としては,税理士の先生方の豊富な経験を活かしたディベートに対して伊川ゼミの学生さんは苦戦されていましたが,あと一歩粘ることができていれば,もっと良いディベートになったのではないか,と感じました。

青山学院大学ディベート大会

 10/31(土),青山学院大学の木山泰嗣先生のゼミおよび荒井英夫先生のゼミと,同大学大学院法学研究科の大学院生および税理士の先生方(東京青年税理士連盟の先生方と有志の先生方)のディベート大会の審査員を務めました。こちらの大会もオンラインで行われ,私も自宅から審査をしました*2。計3試合行われたのですが,このうち,私は,荒井ゼミと院生の試合および木山ゼミと税理士有志の先生方の試合を審査しました。
 まず,荒井ゼミと院生の試合では,法人税法34条を改正して役員給与を原則として損金算入とすべきか,という立法論が争われました。個人的には,「役員報酬が会社法上利益処分じゃなくなったんだから,税法上も役員給与は損金算入していいんじゃないか」という単純な感想しか持っていない論点なのですが,それよりも深い,面白い議論がされていました。
 その後,木山ゼミと税理士有志の先生方の試合では,いわゆる倉敷青果荷受組合事件差戻上告審判決*3(クラカグループ事件ともいいますし,第二次上告審判決ともいいます)を素材としてディベートがされました。当該判決は,下記の記事のとおり,判決言渡しを傍聴した思い入れのある判決です*4。差戻上告審では論点とはされていませんが,私の研究テーマである債務免除益課税について,差戻控訴審判決までの計5回の判決で様々な判示がされた判決でもあります。差戻上告審判決は,下記の記事のとおり,錯誤無効による納税告知処分の取消しが認められるべきか,という点について判示しています。

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 今回のディベートでは,錯誤無効による課税関係の修正という抽象的な議論から具体的な事案の内容に至るまで,幅広い論点が扱われました。大変勉強になりました。

2つの大会の審査員を務めて

 以上に書いた2つのディベート大会は,四大学ディベート大会(四大戦)に向けて,学生が事前に税理士の先生方の胸を借りる場という性格があります。四大戦については下記記事参照。

taxfujima.hatenablog.com

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 先日,四大戦に向けて,香川大学の青木丈先生のゼミでゲストスピーカーの機会もいただきました。

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 2年前に木山ゼミのTAを務めた後は,四大戦に学生の指導などの形で直接関わることはなくなっているのですが,こうやって折に触れて携わる機会をいただいています。ディベートは私が博士後期課程に進学するきっかけになった思い入れのある営みなので,今後とも,自分のゼミで実施することも含めて,何らかの形で携わっていきたいと思っています。審査の機会を賜り,伊川先生,木山先生,荒井先生をはじめとする様々な先生方,誠にありがとうございました。

*1:大阪地判平成30年4月19日。控訴審である大阪高判平成30年11月2日でも結論は維持されています。

*2:第1試合と第3試合の審査だったのですが,試合の間に家事をできたりして,オンラインの良さを実感したりしました。

*3:最判平成30年9月25日。この判決が確定しています。

*4:いつか素材としてとりあげて評釈か論文を書きたいとは思っているのですが,なかなか手が出せずにいます。