明けましておめでとうございます。本年も,このブログおよび藤間大順をよろしくお願いいたします。
昨年は,初めての単著の出版であったり*1,2つの学会誌に論文を掲載していただいたり*2,盛りだくさんな1年でした。今年は,昨年ほどは記事の数は多くはならなさそうですが,その分,しっかりと1つ1つのことに集中したいと思いますし,インプットをしっかりとして,さらなるアウトプットに繋げていきたいとも思っています。
さて,タイトルに書きましたが,先日公刊された本務校の紀要である神奈川法学53巻1号に,「クラウドファンディング(Crowdfunding, CF)に携わった法人および匿名組合に対する所得課税」が掲載されました(以下,クラウドファンディングをCFと略します)。
CFと所得課税については,既に,日本租税理論学会にて学会報告のうえ,租税理論研究叢書に載せていただいた論文があります。下記記事参照。
上述の学会報告および租税理論研究叢書の論文では,米国法との比較法的検討により,個人から個人が寄附型CFによって資金を調達した場合に資金調達者に贈与税が課されるべきか所得税が課されるべきかという問題を主に論じました。付随して,公益目的の活動をしている法人に対して寄附型CFにより資金を提供した個人に寄附金控除が認められるべきかという点も少しだけ論じました。
今回の神奈川法学の論文では,上記の論文の補論的なものとして,CFと所得課税について他に論じるべき事項について論じました。具体的には,①法人が寄附型CFにより資金を提供した場合に,その提供は法人税法上の寄附金(法人税法37条)と解されるべきか,②法人が購入型CFにより資金を調達した場合に,その法人に低額取引課税が行われるべきかおよび③融資型CF(ソーシャルレンディング)により得る利益に対して,匿名組合の営業者には源泉徴収義務(所得税法210条)が生じるか,という点を専ら日本法の解釈論として論じました。
上記のとおり,論点をある程度網羅する目的で書いた論文なので,とりとめのないものにはなっているかな,と思います。それぞれの論点にはあまり関係はありません。また,日本法の解釈論のみを書いていることもあり,あまり新規性はないかもしれません。それと,これは言い訳にすぎないのですが,前回の緊急事態宣言前後に書いたものなので,文献の渉猟は不十分だな,と出てから思ったりもしています。
ただ,クラウドファンディングというある程度新しい取引類型の課税問題について早めに論じたという意味では意義がある文献になってくれていたら嬉しいです。CFについては,今後とも業界の動向など注視していきたいと思っています。
(2021/11/30追記)
こちらの論文ですが,2021年学界回顧で引用していただいていました*3。ありがとうございます。
(2022/3/20追記)
こちらの論文ですが,リポジトリでも公開されました。
また,改めて見返したところ,注51で渕圭吾先生の漢字を間違えていました。渕先生,申し訳ありません。ご容赦を賜れますと幸いです。