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税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

日本税法学会大会,東アジア租税法研究会

はじめに

 先週末から今週月曜日にかけて学会と研究会が続いたので,ブログに書いておきます。

日本税法学会大会

 先週末(6/12,13),日本税法学会の大会・総会が行われました。昨年の大会については,下記の記事を参照。
taxfujima.hatenablog.com

 今年も,昨年に引続き,オンラインにて大会および総会が行われました。オンライン開催にご尽力くださった学会本部の先生方,誠にありがとうございました。
 今回の大会でも,例年と同じく,2件の個別報告および3件のシンポジウム報告が行われました。いずれの報告についても,税法学585号に掲載されている論説をもとに行われています。

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 まず,1日目の個別報告として,尾道市立大学の前田謙二先生が,「外国法人等に対する源泉徴収制度に関する一考察―課税情報に着目した手続的保障の観点から―」という論題で報告をされました。近時訴訟で争われてもいる外国法人や非居住者に対する所得の支払いに伴う源泉徴収義務について*1,特に課税情報という観点に着目して議論をしていました。
 2日目の個別報告としては,東洋大学の金子友裕先生が「消費税法における仕入税額控除の考察」という論題で報告をされました。こちらも近時訴訟でしばしば争われている賃貸マンションの譲渡に伴う仕入税額控除などを租税としながら*2,消費税法上の仕入税額控除はどのような位置づけのものなのか,という議論をしていました。

 シンポジウムは,「最高裁租税判例をめぐる法的諸問題―判例における租税法律主義の『実相』―」という統一論題にもとづき,近時(ここ15年ほど)の最高裁の租税判例の分析・検討を通じて,租税法律主義(憲法30,84条)が実際にどのような議論に繋がっているのか,という議論が行われました。
 まず,関西学院大学の一高龍司先生が,「租税回避分野の最高裁判例に見る租税法律主義の実相」という論題で報告をされました。租税回避をめぐる最高裁の判例について,特に事実認定アプローチと法解釈アプローチという見方を手掛かりに議論していました。
 次に,九州大学の田中晶国先生が,「固定資産税分野の最高裁判例の検討―租税法律主義と裁量統制・立法裁量・司法的救済―」という論題で報告をされました。固定資産税における資産の評価をめぐる最高裁判例について,行政裁量という観点から議論していました。
 シンポジウム報告の最後としては,青山学院大学の木山泰嗣先生が,「手続法分野における租税法律主義の特色―最高裁判決にみる救済解釈等の手続法的解釈を中心に―」として,租税手続法に関する最高裁の判例について,文理解釈の要請との関連などの観点から議論していました。

 今回のシンポジウムでは,租税法律主義というおそらく税法を論じるにあたって最も重要な考え方について,正面から捉える議論がされていました。どうしても租税法律主義について論じる場合には抽象的な議論にならざるを得ない側面があると思うのですが,「実相」という題が付されているとおり,具体的な事件や問題に引き付けて議論がされていました。私自身はまだ未熟者なので租税法律主義を正面から捉えるような議論はまだできていないのですが,いずれ,今回のシンポジウムのように地に足をつけつつ正面から捉えるような議論をしたいな,と思っています。

東アジア租税法研究会

 今週月曜日(6/14),東アジア租税法研究会が行われました。研究会自体は継続的に開催されているのですが,私が参加するのはかなり久しぶりでした。前回参加した際の記事として,下記参照。

taxfujima.hatenablog.com

 今回の研究会では,名古屋経済大学の山田麻未先生および私が報告しました。今後,山田先生と同じ場で報告の機会をいただいているので,そのプレ報告という形でした。
 まだ形にはなっていない研究内容なので,詳細は書きません。ただ,かなり意欲的というか,私がこれまでやってきた議論よりもスケールが大きな議論をする予定なので,事前に先生方から忌憚ない意見をいただき,大変勉強になりました。いただいたご教示を活かして頑張っていきたいと思います。ご臨席を賜った先生方,誠にありがとうございました。

 当たり前のようにオンラインでの研究の場に参加したりその場で発表したりする機会をいただいているのですが,これはそのような場を保ってくださっている先生方のご尽力あってのことだと思います。コロナ禍のなかでも研究の場を続けていただいていることに,この場を借りて改めて感謝の意を表したいと思います。ありがとうございます。

*1:たとえば,非居住者に対する不動産の購入対価の支払いに伴う源泉徴収義務が争われた事案として,東京地判平成28年5月19日税資266号順号12856参照。

*2:たとえば,エーディーワークス事件(東京地判令和2年9月3日裁判所ウェブサイト)参照。