先月発行された租税法研究50号に,「資金調達と税制のこれから―ICOやIEOに対する法人税の課税を検討対象として」というタイトルで執筆した論文を掲載していただきました。
この論文は,昨年行われた租税法学会第50回記念総会で行った分科会報告を原稿化したものです。報告時の記事として,下記を参照。
この論文では,ICO(Initial Coin Offering)やIEO(Initial Exchange Offering)により調達した資金に対して法人税が課される現行制度について*1,資金調達と法人(所得)税制という大きな枠組から捉えて議論することを試みています。資金調達とは何か,それを法人税制でどのように取り扱うべきかなどの点を,もう一度立ち戻って議論する必要があるのではないか,という議論をしたつもりです。
テーマをかなり広くとったこともあり具体的な提言まではできていないのですが,これまで自分が議論してきた債務免除益課税やクラウドファンディングと課税の問題も色々と絡み合い,書いていくにつれて今後自分が論じていくべきテーマの1つが朧気ながら見えてきたように感じる原稿(および報告)でした。私のような未熟者に報告を任せてくださった租税法学会の諸先生方,特に,分科会の司会をしてくださった吉村先生,記録してくださった辻先生*2,ともに報告を担当してくださった山田先生,誠にありがとうございました。
また,論文の末尾に付記したのですが,租税法学会の報告後,論文が出るまでの間に,企業会計基準委員会がICOにより発行したトークンの会計処理に関する論点整理を公表していました*3。こちらの議論については(特に発行法人が自己保有するトークンの取扱いなど)この論文の段階ではフォローできていないので,今後,更に検討を進めたいと思います。
(2022/11/29追記)
こちらの論文ですが,2022年の学界回顧にて取り上げていただいていました*4。ありがとうございます。