What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

ご卒業おめでとうございます!

 昨日は,2年間TA(Teaching Assistant)を勤めたゼミ(木山ゼミ)の卒業祝いでした。

 以下のように色紙や花束をいただいて,本来こちらがお祝いする側なのに,感謝の気持ちをたくさんいただいてしまいました。ありがとうございました。僕自身も来年からはゼミのTAには携わらない予定なので,一つの区切りとなりました。


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 木山ゼミは,大学教員に憧れるきっかけを作ってくれたゼミでした。

 TAになったのは2年前の4月,木山先生が青学に赴任されたタイミングでした。お互い知り合いの人が多いとは言えない中,木山先生に導かれてゼミがどんどんまとまっていって,各々もたくましくなって,自分たちで積極的に色々なこと(授業での発表やディベート)に取り組んで行く姿は,とても感動的でした。特に,全員一丸となって取り組んだディベート大会は,大変なことも多かったですが得るものも非常に大きかったように思います。

 正直,大学院に来る前は,学部教育ってなんなんだろうという疑問が自分の中にありました。社会で役立つスキルを身に着けるだけならば専門学校で良い訳です。あるいは,大学院での研究の基礎を作る場なのならば,もっと大学院への進学率は高くなって良いと思います。

 その答えは,片方(教わった立場)から言えば,自分で示していくしかないのだろうと思います。私は学部時代は全く別の分野(ドイツ哲学)の勉強をしていました。その経験が他分野(税法学)の研究でどう活きるのか,それは自分で探求していきたいと思っています。一方で,教える立場から言えば,学部教育の意義は確実にあるのだと,木山ゼミを微力ながらお手伝いする中で確かな実感を得ることができました。

 

 いつか,今回卒業された皆さんとまた飲む機会があらんことを祈っています。その時には,木山ゼミみたいなゼミを自分で教えられていたら良いなぁ。

 そんな時を迎えられるために,今は研究を頑張ります。

関西租税法若手研究会

 3/4(土)に,大阪で開かれた第二回関西租税法若手研究会に参加して参りました。
 新進気鋭というか,若手ながら名を知られた先生方ばかりの中に招き入れていただき,とても貴重な体験をして参りました。関西に何の縁もゆかりもない大学院生に参加を許してくださり,ありがとうございました。

 今回はお二方発表してくださいました。
 山田先生は,必要経費と家事費および家事関連費の関係について発表されました。必要経費と家事費等の切り分けの判断方法について,米国法との比較検討から詳しく論じられていました。
 藤岡先生は,為替差損益の課税問題について発表されました。為替差損益の発生するメカニズムからそのあるべき課税関係を考察されていました。

 両先生とも,大きな論文の底にあるアイデアを発表して下さり,とても参考になりました。
 私も,そろそろ博士論文のアイデアを固めていかないとなとずっと考えています。私の能力では両先生のようにすばらしい論文を書けるとはとても思えないのですが,それでもやはり,大きなテーマについて,自分なりの一貫した議論を構築しなければならないのだと思います。そのお手本を二つ示していただいたように感じました。

 とはいえ,大きなものを見据えつつ,今は目の前のテーマに集中して,一生懸命に書いていくしかないのだと思います。
 来年度良いスタートが切れるよう,花粉症で苦しみつつ研究に邁進して参ります。どうぞ暖かく見守ってくださいますと幸いです。

最判H27.10.8の差戻控訴審について問い合わせてみました

 現在,修士論文の加筆修正版の後半の校正作業をしています*1
 修士論文で,私は債務免除益課税についての基礎的な考察およびそれに基づく事業再生税制における債務免除益非課税規定(所税44条の2)の適用要件の解釈を行いました。現在は,その基礎的な考察を基礎づけつつ,他の債務免除益課税の問題についても検討を行っています。

 債務免除益課税といえば,一昨年の10月8日,恐らくこの分野について初めて判示した最高裁判決が出ました*2
 この事件は,人格なき社団から役員が得た債務免除益につき,①所得分類に加え,②事業再生税制(当時は旧所基通36-17)の適用の可否についても争われたものです。最高裁判決では,①所得分類については給与所得に該当するとした上で,②事業再生税制の適用の可否については下級審に差し戻す,という判断がされています(通達の適用の可否という言葉は用いていませんが,文言からそのように読めると思います)。

 校正作業をしながら,そういえば当該事件の差戻控訴審判決は出たのかな,出ていたらこの論文で言及しなければまずいよな,と思ったので,裁判所の方に問い合わせてみました。
 まず,最初の控訴審判決が出た広島高裁岡山支部に問い合わせたところ,広島高裁の本部の方で審議している旨の回答をいただきました。続いて,広島高裁に問い合わせたところ,本日(2018年2月7日)までに差戻控訴審判決は出ていない,とのことでした。
いずれの裁判所でも,どこの馬の骨かもわからない怪しい学生からの電話に非常に親切かつ丁寧に対応していただきました。ありがとうございました。

 なお,私は差戻控訴審での事件番号は把握しておりませんので,「恐らくこの事件だと思いますが」という前提の上での回答でした。したがって,確かな情報ではありません。そもそもこのブログも個人が勝手に書いているものですし,伝聞情報ですし,信憑性のある(例えば学術論文で引用するソースになるような)情報ではないことにご注意いただければと思います。
 ただ,私の備忘録および情報を共有する目的で,ここに記しておきます。

(2017/3/13追記)
 差戻控訴審判決ですが,2/8に出ていたようです。判決が出る前日に何とも間の悪いブログを書いてしまい,申し訳ございません。また,上記情報は岡山大の小塚先生のFacebookへの投稿で知りました。小塚先生,ありがとうございます。
 まだデータベース等には判決文は載っていないようですが,何らかの形で判決文を入手したいと思います。

*1:前半はこちらからダウンロード可能です。

*2:最判平成27年10月8日判タ1419号72頁。判決文はこちら(裁判所ウェブサイト)からも入手できます。たしか租税法学会の直前に出されたように記憶しています。修論執筆中だったので,修論のどこで言及しようか悩みました。

I visited Duke University School of Law!

 1/23(月)から29(日)まで,デューク大学のロースクールを訪問いたしました。
 私が研究している債務免除益の分野において権威的な論文を書かれているLawrence A. Zelenak先生を訪問するためです(論文は以下のリンクからダウンロードできます)。
scholarship.law.duke.edu


 Zelenak先生とは,姉弟子の道下知子先生が彼のEITCについての論文を翻訳されていますが,この他に特に繋がりがあったわけではありません。10月ごろメールをし,アポイントを取った上で訪問しました。
 行く前はとても不安で,正直,なんで行くことにしちゃったんだろうと思っていたこともありました。しかし,行って本当に良かったです。得難い経験ができました。

 貴重な経験ができたのは,全てZelenak先生が親切だったことによります。授業への参加を許可してくださったほか,何度も議論に応じてくださいました。今後の研究に非常に資する知識を得られました。
 Zelenak先生は今季,法人課税と租税政策の授業を担当されていて,いずれの授業にも参加させていただきました。法人課税は,担保資産の現物出資に係る課税関係という,『租税法と市場』において岡村忠生先生が論じている分野についての講義でした。債務免除益課税とも非常に深く関わる分野で,非常に興味深く拝聴しました。
 また,偶然だそうなのですが,租税政策の授業では,日本の消費税の導入課程についてのペーパーを使ったセミナーを実施していました(Paul Caron先生のブログ記事でも取り上げられています)。米国への付加価値税導入の可否というところまで議論が及んで,非常に刺激的なセミナーでした。

 デューク大ロースクールはとても過ごしやすい環境でした。
 授業に参加したりしている以外の時間は,ロースクールの図書館(Goodson Law Library)に籠もっていました。学外の人でも8時から17時まで利用できました。勉強用のスペースはとても静かで,集中して本を読むことができました。ずっと読みたかったFederal Income Taxation of Individualsも読むことができました。
 昼食はロースクール内のカフェ(CAFE De Novo)で食べられましたし,図書館が閉まった後は,(時差ぼけで寝てしまわなければ(結構これも多かったのですが))Bryan Centerという学生向けの施設で夕食を食べていました。Bryan Centerには,コンビニのような売店がある他,教科書販売所もありました。Bryan Centerの周りには大きな公園があり,時たま散歩していました。

 貴重な経験はできたのですが,一方で,自分の未熟さも思い知りました。
 税法の知識もそうですが,やはり英語力,特に自分から発語する力が足りないことを痛感しました。日本語でもあまり話が上手い方ではないのですが,英語では頭に浮かんだことの半分も発語できませんでした。研究の遂行に加え,これから磨いて行くべき点だと思います。
 しかし,そんな未熟な英語でも,Zelenak先生やあちらの学生は粘り強く話を聞いてくれました。得られた経験は全て,彼らの親切心によるものだと思います。
今後の研究で恩返ししてまいりたいと思います。

租税行政法ワークショップ拡大研究会

 一昨日、弊学法学研究科において、租税行政法ワークショップ拡大研究会が行われました。

 租税行政法ワークショップは、弊学法学研究科において設けられているワークショップの一つです。税法と行政法の教員および大学院生が集まり、主に租税手続法について研究を行っています。

 租税行政法ワークショップでは、例年、年度末前後に拡大研究会を行っております。今年度の拡大研究会は、「平成26年行政不服審査法・国税通則法改正の動向と問題点」がテーマでした。平成26年6月の両法改正および平成28年4月1日からの両法施行により何が起こる(起こりうるまたは実際に起こっている)のか、立法に携わられた弊学法学研究科非常勤講師の青木丈先生、元国税不服審判所の審判官で現在は弁護士の石井亮先生、元弁護士で現在国税不服審判所の審判官の根本純真子先生より報告がありました。

 

 全体として、制度の運用が始まったばかりであり、今後とも注視していく必要がある、ということは言えるように思いました。

 例えば、今回の改正された点の一つとして、口頭意見陳述手続きにおいて審査請求人(納税者)から処分行政庁(課税庁)に対する直接の質問ができるようになったことが挙げられます(行政不服審査法31条5項、国税通則法95条の2第2項)。従来の口頭意見陳述は、審査庁(国税不服審判所)が審査請求人の意見を聴取する(いわば縦のやり取り)のみであり、争っている審査請求人が処分行政庁に質問すること(いわば横のやり取り)はありませんでした。

 この改正は、抽象的には、審査請求手続を当事者主義的な方向に導くものと評価できるかと思います。ただ、実際には、審判官の心証への影響は薄いのではないか、審査請求人の心理的満足が得られるにすぎないのではないかという指摘がありました。また、実際に利用されているケースはまだあまり多くは無いようでした。

 他にも、様々な点(写しの交付等)について、立法趣旨から実際の運用、および今後の可能性まで含めた非常に興味深い議論が行われました。

 

 個人的には、審査請求手続の充実は租税行政手続にとって重要な意味を持つように思っています。というのも、米国の租税裁判所(Tax Court)は最初内国歳入庁の不服審査機関(Board of Tax Appeals)から出発しているからです。

 もちろん、日本では特別裁判所を設けることは憲法上できませんから(憲法76条2項)、租税裁判所の設置を望むことは愚かなことかもしれません。しかし、税務訴訟(の特に実体法上の争い)については、一般の行政訴訟とは少し毛色が違うことが多いのもまた事実かと思います。従って、専らそれを取り扱う機関の審査手続が充実することは、納税者の権利救済においてとても大きな意味を持つのではないかと考えています。

 

 さて、話は変わりますが、本日より約一週間、米国で在外研究を行って参ります。

 私は、米国本土に行くのがそもそも初めてですし、研究の用事で日本を出るのも初めてです。とても緊張していますが、Trump新大統領誕生直後の米国がどんな雰囲気なのか、肌で感じつつ、精一杯研究して参りたいと思っています。