What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

ニュースやコラム的な記事

税法を研究する社会人院生にオススメの3つのサブスクサービス

はじめに 日税研学生会員 丸善リサーチ TAINS おわりに 追記 はじめに この記事は,院生を指導している教員の立場から,税法を研究する社会人の大学院生の方にオススメの3つのサブスクサービスをご紹介するものです*1。この春から,税理士試験の科目免除など…

輸出物品販売場制度(いわゆる免税店制度)の抜本的改正に向けた議論の整理

はじめに 宮川(2010) 政府税調答申(2023) 令和6年度税制改正大綱(とその前提となる要望) おわりに:若干のコメントをふくめて 追記(記事を書いた後の報道など) はじめに 以前,下記のとおりに,輸出物品販売場制度(いわゆる免税店制度)について研…

22世紀も租税法律主義が残ると思う理由:成田悠輔『22世紀の民主主義』におぼえた違和感

はじめに 『22世紀の民主主義』における税制アルゴリズムの議論 租税法律主義と租税回避の緊張関係 用語の整理:租税法律主義 用語の整理:租税回避 租税法律主義と租税回避のいたちごっこ アルゴリズムは租税回避を打ち負かすことができるか? 打ち負かすこ…

事業所得と雑所得の区別に関する通達の改正について

はじめに 事実経過 私が出した意見 意見の補足 新しい通達改正案についての意見 おわりに はじめに 事業所得と雑所得の区別に関して国税庁が取扱いを変えようとしている件について,下記の日経新聞の報道など関心が集まっています。www.nikkei.com 事業所得…

所得税法44条の2の立法趣旨をめぐる2つの謎

はじめに 平成26年度税制改正による所得税法44条の2の立法と2つの謎 なぜこの条文ができたのか? 「総収入金額」にはどのような意味があるのか? おわりに はじめに 明けましておめでとうございます。本年もこのブログをよろしくお願いします。 今月ブログに…

塩川酒造事件控訴審判決について(「私的整理手続における債務免除と第二次納税義務」補論)

はじめに 裁判所の判示 判示の評価 残された課題 本判決の射程 国税徴収法39条の規定ぶり おわりに はじめに 今年の秋に,下記のとおり判例研究を執筆しました(リポジトリのURLを追加しました:2022年2月22日)。hdl.handle.nettaxfujima.hatenablog.com こ…

「債務免除益に係る確定申告をしていない」ことは,「債務が消滅していなかった」ことの証左となるか?

はじめに 素材にしたい部分 国の主張 裁判所の判示 若干の感想 国の主張を否定した,という読み方 国の主張について論じる必要がなかった,という読み方 おわりに はじめに 昨日の研究会(第900回租税判例研究会)で扱われた裁判例のうち研究会では取り上げ…

50,000アクセス突破記念企画「税法学執筆雑記」③ 事件の呼称

はじめに 最判昭和60年3月27日の呼称について 事件名の呼称のパターン 納税者の名前で呼ぶ トピックで呼ぶ いくらかの具体例 右山事件/ゴルフ会員権贈与事件 倉敷青果荷受組合事件/(役員)債務免除益事件/クラカグループ債務免除益事件 武富士事件/TFK…

50,000アクセス突破記念企画「税法学執筆雑記」② 「第」をつけるかどうか

はじめに 基本的に「第」はあまりつけない 「第」をつけることが多いように感じる場合 「第」をつける必要がある場合 枝番号について 枝番号付きの条文の後ろは「第」をつけて書く 統一性がないようにも感じるか? おわりに はじめに 50,000アクセス突破記念…

50,000アクセス突破記念企画「税法学執筆雑記」① 法令の略称

企画の趣旨 はじめに スタンダードな略称はたぶんあまり使われていない 主要な2つのやり方 「所得税法→所税」 「所得税法→所法」 私はどうしているか おわりに 企画の趣旨 このブログのアクセス数が50,000アクセスを突破しました。読んでいただいている皆さ…

「修習給付金は雑所得に該当する」と「修習給付金に必要経費は生じない」は整合するか:国税不服審判所裁決令和3年3月24日を素材として

はじめに 修習給付金の雑所得該当性 修習給付金には必要経費が発生しないこと 雑所得に関する理由付けと必要経費に関する理由付けは整合しているのか? おわりに はじめに 山中理司弁護士の下記のブログ記事を契機として,司法修習生が受け取る修習給付金の…

総合支援資金の償還免除より生じる債務免除益をどのように非課税と規律すべきか

はじめに 今ある法律を使う:所得税法44条の2の適用対象とする 制度改正を行う:新型コロナ税特法2条を改正する そもそも論で考えてみる:所得税法36条の解釈論により,「債務免除益は生じていない」と考える おわりに はじめに 昨夜の地震で被害に遭われた…

コロナウイルスの問題から税法を考える③ 所得分類を持続化給付金の支給要件に組み込むべきか

はじめに 素材にしたいこと:持続化給付金の受給要件 所得分類が設けられている趣旨 従来の考え方:担税力に基づく課税 従来の考え方は本当に妥当なのか? 今回の素材から見えてくるもの 従来の考え方に基づく考察:事業所得と雑所得の分類の曖昧さ 従来の考…

コロナウイルスの問題から税法を考える② お酒はなぜ自由に売れないのか

はじめに 素材にしたいこと:高度数のお酒の転売について お酒の販売免許とは? お酒を売るには税務署が発行する免許が必要 なぜ免許が必要なのか:酒類販売免許制度合憲判決 販売免許制度による安売り規制 おわりに―今回の転売を免許制度違反で罰するべきか…

コロナウイルスの問題から税法を考える① あなたは所得税を納めていますか?

はじめに(この企画の趣旨など) 素材にしたいこと:休校対応助成金の適格性について 納税は行政サービスの受給資格の対価か? 租税は何の対価でもないと最高裁は言っている 都営地下鉄が停まってしまう 多くの日本の納税者には日本の行政サービスを受ける資…

新型コロナウィルス対策の返済免除特約付き緊急小口資金制度と債務免除益課税

2月に書くことができず,久しぶりのブログとなってしまいました。 さて,書くまでもないところですが,昨今,いわゆる新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い,様々な問題が生じています。 私が非常勤職をしている青山学院大学でも*1,4月の授業…

イートイン脱税が(ほとんどの場合)脱税ではない4つの理由

はじめに 軽減税率制度に関する規定 「イートイン脱税」は以下の理由から脱税ではない 消費者(=お客さん)は消費税を脱税できないから 事業者(=店)は嘘をついていないから 税務署も,客に聞けばそれで良いと言っているから 容器に入れたり包装していれ…

ゲーム大会の賞金減額と源泉徴収義務―eスポーツ大会の賞金と源泉徴収義務・続―

1.はじめに この記事は,下記記事(以下「前稿」)から続く関心に添い,競技性のあるゲーム(いわゆるeスポーツ)の大会の賞金と課税関係について,最近起こった事例を素材に考察してみようとするものです。 taxfujima.hatenablog.com 前稿と同じく,実際に…

日本学生支援機構の学資貸与金の返済額の所得控除について

この記事は,下記の記事を読み,これに対する共感を表明するとともに,税法学の研究者として,1つの提案をするものである。nipo.hateblo.jp 私は,昨年度(2019年3月)まで,博士(後期)課程の大学院生だった。 博士課程在学中,私は,日本学術振興会特別研…

香川大学の青木丈先生を訪問しました。

今週月曜日(12/3)から今日(12/5)にかけて,香川大学法学部の青木先生にお招きいただき,香川大学を訪問して参りました。今回の訪問のことを,記録として残しておきたいと思います。 なお,自費で行きましたので,色々観光をしています。研究費で個人的な…

倉敷青果荷受組合事件第二次上告審判決を傍聴しました。

本日,倉敷青果荷受組合事件の第二次上告審判決が下されましたので,最高裁判所まで傍聴しに行って来ました。 当該事件は,人格なき社団等がその理事長に供与した債務免除益につき,給与所得(所税28条1項)に該当して源泉徴収義務(所税183条)が発生するか…

eスポーツ大会の賞金と源泉徴収義務

0.はじめに このブログ記事は,ゲーム提供者からプレイヤーへの高額賞金の支払いに伴う源泉徴収義務の有無の問題点を考察したものです。 まず,私の立場を述べておきます。私は,税法学(税金に関する法律についての学問)を研究している博士課程の大学院生…

大人のための国語ゼミ

昨日(8/8)まで,国語の勉強をしていました。 とはいっても,高校の頃までの国語の復習をしていた訳ではなく,先月出版された下記書籍を読んでいました。www.yamakawa.co.jp 野矢先生は,ヴィトゲンシュタインを中心とした分析哲学の研究を専門にされている…

平成29年司法試験租税法第2問設問1(所得税法44条の2の適用関係)について

司法試験で債務免除益課税の問題が出たと聞いたので*1,解説というか,論点をまとめてみる。 なお,私は司法試験を受けたことも,司法試験に関連する試験を受けたこともない。ロースクールに通ったこともない。そのため,的外れな記述もあろうかと思うが,ご…

判例研究が重要判例解説に引用されました!

9月に発表した判例研究が、『平成28年度重要判例解説』に引用されました(吉村政穂「判批」ジュリスト1505号(2017年)213頁参照)。吉村先生が、当該事件の控訴審判決の意義について述べる部分で引用してくださいました。ありがとうございました。 上記ブロ…

最判H27.10.8の差戻控訴審について問い合わせてみました

現在,修士論文の加筆修正版の後半の校正作業をしています*1。 修士論文で,私は債務免除益課税についての基礎的な考察およびそれに基づく事業再生税制における債務免除益非課税規定(所税44条の2)の適用要件の解釈を行いました。現在は,その基礎的な考察…

地方税についての詐害行為取消権の行使の可否(名古屋地岡崎支判H27.2.16,名古屋高判H28.4.27)

判例研究的な記事も書いていきたいと思っています。 もっとも,Blogに書くのは恐らく自分の手には余る裁判例ばかりです。しっかりとした研究というより,少しラフな形になろうかと思います。ご容赦いただけたらと思います。名古屋地岡崎支判平成27年2月16日…