What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。

拙稿「債務免除益の年度帰属」が第13回「税に関する論文」に入選しました。

この度,納税協会連合会が主催されている第13回「税に関する論文」専門家の部において奨励賞をいただけることになり,昨日授賞式に行って参りました。
受賞した論文は,「債務免除益の年度帰属」という書き下ろしのものになります。いずれ入選論文集に掲載されるほか,論文のウェブサイト上にも過去の入選論文としてアップロードされるかと思います。その場合は,この記事に追記いたします。
内容としては,タイトルのとおり,債務免除益の年度帰属,つまり課税されるタイミングにつき,米国における議論との比較法的検討を行ったものです。日本ではあまり議論がされていない領域なのですが,米国では債務免除益の供与に係る報告書(Form 1099-C)の提出制度との関連で裁判例が豊富にあるほか,関連する財務省規則の改正も頻繁に行われています。そのあたりを参照しながら,日本ではどのような議論をすべきか検討を行っています。
賞をいただけたこと自体はもちろん嬉しいのですが,他にも嬉しいことがたくさんありました。まず,今回執筆した論文は博士論文の一部を構成するものにおそらくなるので,それについて一定の評価をいただけたことは今後の研究に向けて自信になりました。また,今回の論文はかなり私法と関連付けて議論をしたので,『租税法と私法』を執筆されている村井先生や,『税法基本講義』にて私法関係準拠主義を主張されている*1谷口先生が選考委員をされている賞をいただけたのは,とても光栄でした。さらに,愛読書である『私たちはなぜ税金を納めるのか』を執筆されている諸富先生が第1回の受賞者にいらっしゃったので,同じ賞をいただけてこちらも光栄でした。

授賞式は大阪で行われ,選考委員長の村井先生をはじめ,錚々たる審査員の先生方が出席されました。賞をいただけたことと同じくらい,審査委員の先生方と少人数の会でお話しできたことに大きな価値があったように思います。今後の研究に資する有益なご示唆をたくさんいただきました。
また,今回は出張ではなく,先方に旅費を出していただいたので,帰りは京都に立ち寄り,京都ラーメンを食べた後,嵯峨嵐山天龍寺で紅葉を観て帰りました。かなり混んでいたのですが,ちょうど見ごろで,とてもきれいでした*2。個人的に日本の南北朝時代が大好きなので,天龍寺に行けてとても楽しかったです。また,京都駅で四大学ディベート大会が終わった後の木山先生木山ゼミの方に偶然会ったりもしました(優勝,おめでとうございます!)。
授賞式の席で「この賞を(特に関東で)ぜひ宣伝して欲しい」旨承ったのですが,本当に良い賞なので,ぜひ皆さん応募すべきだと思います。審査は錚々たる先生方が厳正に行っているそうですし,応募にあたってしっかりとしたものを書くべきだ(適当に書いたものならば応募しても仕方がないか)と思いますが,応募の動機はどんなものでも良いのではないかと思います。個人的には,同賞は過去に学部生の論文が一般の部で何度も受賞されていて(公募されている懸賞論文では,税法分野ではとても珍しいのではないかと思います),特に学部生の方がチャレンジする機会としてはとても優れたものだと思います。もちろん,修士論文等,専門家の部に応募するのもとてもオススメです。錚々たる先生方に読んでいただけるだけでも,本当に貴重な機会だと思います。

受賞によりいただいたガッツを活かして,今後とも研究を頑張って参ります。12月に学会報告を控えているので,まずはそれに向けて,寒さに負けず,ガリガリ書いていきたいと思います。

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*1:第5版の55~58頁参照。

*2:なお,写真は撮ったのですが,あまり撮るのが上手くないのでアップロードしません。ご容赦ください。

10月振り返り

前回の投稿(租税法学会大会)以降で,10月中にあった研究関連の出来事を振り返りたいと思います。

1.日本税法学会中部地区研究会
10/14(土),日本税法学会の中部地区研究会に参加して参りました(ちなみに私は関東地区の会員です)。
研究会では,まず,税理士の富永先生が重加算税の賦課要件をめぐる最高裁判例および国税不服審判所裁決について発表されました。次に,私の指導教員である三木先生が,交際費等の損金不算入規定(租特61条の4)該当性について争われた裁判例(福岡地判H29.4.25)について発表されました。
富永先生の発表は,重加算税の賦課要件について司法上の判断に揺れがあることを指摘されており,非常に勉強になりました。三木先生については,日頃より様々な形でお話はうかがっているのですが,研究報告という形でお話を拝聴したのはかなり久しぶりでした。上記判決の意義について考察されていて,参考になりました。
中部地区の皆さま,発表者の先生方,お邪魔いたしました。ありがとうございました。

2.関西租税法若手研究会
10/22(日),以前より参加している関西租税法若手研究会に参加しました。
台風が接近していたので,開始時間および終了時間を早めていただきました。おかげさまで,無事帰ることができました(夜には止まった新幹線もあったようです)。主催の小塚先生および奥さま,お気遣いいただき,誠にありがとうございました。
研究会では,まず,岡山大の小塚先生が,もうすぐ投稿される原稿について発表されました。未発表の原稿ですので詳細は書きませんが,租税回避規制を出発点として,租税立法のあり方全体について重要な示唆を与える論稿でした。
次に,名古屋大博士後期課程の本部さんが,博士論文の概要について発表されました。本部さんは,以前の投稿にも書いたとおり,租税回避についての一般的否認規定(GAAR)について研究をされています。既に税法学会の大会で報告するなど順調に研究を遂行されており,他大の方ではありますが私にとってもとても高くかつ良い目標になっています。博士論文の内容も,綿密な分析に基づく非常に意欲的なものでした。
関西若手は,若手の先生方が今行っている最先端の研究に触れることができて,いつもとても勉強になっています。ありがとうございました。

3.博士論文中間報告会
10/25(水)の夜,私の博士論文の中間報告会がございました。
私は,債務免除益の課税問題について研究を行っています。近年最高裁判例が出るなど,非常に重要な分野です。債務免除益については,その課税理論(なぜ課税されるのか,課税所得としての債務免除益とは何か)から検討を行う必要があると私は考えており,博士論文でも,そのような検討を行う予定でおります。
博士論文の検討の出発点となるような検討は既に修士論文でしているのですが(こちらこちらからダウンロードできます),「わかりにくい」という指摘を指導教員をはじめ学内学外問わず多くの方から受けており,中間報告会でも同様の指摘が相次ぎました。
債務免除益課税という分野がそもそも(規定で定められている部分が少なく,解釈を行う余地が多くある等のことにより)わかりにくいのかもしれませんが,難しいことを明快な論理でいかに整理できるか,というところが研究者として求められていることなのだろうと思います。博士論文の段階でどこまで噛み砕くことができるかはわかりませんが,今後とも精進せねばならないな,と反省しました。
もっとも,反省する点ばかりではなくて,博士論文の構成や現在の進捗を再確認し,参考文献を整理できたのは,非常に大きな進歩でもありました。
ご臨席いただいた先生方,大変お忙しい中,ありがとうございました。

10月は,租税法学会の大会に始まり,博士論文の中間報告会まで,研究について大きな刺激を受けた1ヶ月でした。来月からは,いただいたものを活かして,自分の研究成果を精力的に公開して参りたいと思っています。「来月から本気出す」というといかにも何もしない感じですが,本当に本気を出して,頑張りたいと思います。

租税法学会総会

昨日(10/1),租税法学会の研究総会を傍聴して参りました。
本来ならば多いだろうとは思うのですが,実は東京で開催される学会に参加したのはこれが初めてでした。いつも利用している池袋の,時々図書館を利用している立教大学*1で学会が行われているというのは,何だか不思議な気分でした。

今回の研究総会は,「イノベーションと税制」と題し,5件の研究報告が行われました。
まず,神山先生は,「研究開発と税制」と題して報告をされました。イノベーション促進をめざす税制のうち研究開発税制について,租税政策以外の政策オプション(知的財産権制度等)も視野に入れながら,そのあるべき姿を議論されていました。
次に,漆先生は,「特区と税制」と題して報告をされました。以前関西租税法若手研究会で報告してくださった内容です。イノベーションを促進するものとして産業の集積があり,産業の集積という観点から特区制度がどのように評価できるか議論されていました。
3番目の報告は,片山先生による,「地方環境税をめぐる法的諸問題」と題した報告でした。法定外目的税のうち地方環境税とされるいくつかの地方税について,各地で生じている問題点を議論されていました。
4番目の報告は,高橋先生による,「技術革新による税務行政の課題」と題した報告でした。技術革新によって生じた新たな取引に現行の税制がどのように関わるのか,また,技術革新によって生じた変化により,税制上新たな制度が可能となるのではないか,と論じられていました。
最後に,増島先生により,「イノベーション法務の最先端と税制」と題する報告が行われました。イノベーションがどのようなプレイヤーのどのような目的によりどのように生じてきたのか解説くださったうえで,税制がどのように対応すべきか議論されていました。

技術革新によって,税制は確実に影響を受けるだろうと思います。もっとも,その影響の仕方は様々だろうと思います。技術革新が行われることが恒常化した社会において,社会の一部である税制も変化するのか。技術革新によって,税制上可能となる政策オプションが増えるのか。技術革新によって生じた変化に対応するために,税制も変化せざるを得なくなるのか。様々なレベルでの影響について,綺麗に整理されたうえで,刺激的な議論が行われていました。学んだことを活かして,今後とも研究を頑張って参りたいと思います。

*1:立教大学および弊学を含む山手線沿線のいくつかの私立大学は,山手線コンソーシアムという,互いの大学の図書館を利用しあえる協定を結んでいます。

アコード租税総合研究所租税判例研究会

昨日,弊学の木山先生アコード租税総合研究所租税判例研究会で報告されるということで,拝聴して参りました。
木山先生は,非居住者への不動産所得の支払いに係る源泉徴収義務の有無が争われた事件(第一審判決の東京地判平成28年5月19日および控訴審判決の東京高判平成28年12月1日)について,判例評釈を報告されました。質問も相まって,この問題について実務的にも研究としても興味深い議論が展開されていました。
木山先生のご関心としては,源泉徴収制度全般に通じる問題について報告されていて,債務免除益課税と給与等に対する源泉徴収制度が交錯した事案である倉敷青果荷受組合事件(最判平成27年10月8日等)との関係性も議論されました。
源泉徴収制度については,それが正当化されうる根拠が常に問題とされねばならないのではないか,と個人的には考えています。言わば,手数料の支払い無しでの徴税業務代行ですから,課税権者である国民が法律を通して支払者にその業務を代行させる正当性を何らかの形で常に立証しなければならない,ということです。最判平成23年3月22日等,極限的な事例が様々に出てきている中で,果たして源泉徴収制度を正当化する一貫した根拠が定立されうるのか,今一度問われるべきなのではないか,と考えています。
今後の研究を通して,この問題についても少しずつ考えを深めて参りたいと思います。そのきっかけになるとても貴重な機会でした。アコード租税総合研究所の皆さま,木山先生,ありがとうございました。

『現代租税法講座』輪読会

昨日(9/13)まで,今年出版された『現代租税法講座』(日本評論社)のうち第2巻 家族・社会および第3巻 企業・市場の輪読会を学内で行っておりました。
8月中旬から昨日までの5週間,週1回の全5回で行いました。1回につき2本の論文を取り上げ,計10本の論文を抜粋して取り扱いました。

輪読は,学部時代にはゼミ等で良くやっていたのですが,大学院に入ってからは初めて行いました。したがって,税法分野について行うのは初めてでした。また,学部時代は1つの書籍について行っていたので,論文集について行うのも初めてでした。
やるきっかけになったのは,『現代租税法講座』が出版されたことはもちろんですが,以下のブログ記事を見たことも大きかったです。
chickenribs.hatenablog.com
このブログ記事に書いてあるとおり,様々なメリットがありました。1人で読むのとは比べものにならないほど理解が深まりましたし,あまり話したことがなかった人とも仲良くなれたような気がします。

書籍についても書いておきます。
全体として,『現代租税法講座』は,最新の議論を追いつつ,伝統的な議論との接合を目指す質の高い論文が網羅的に収録されているように感じました。
税法分野の論文集としては,他に,有斐閣から出版されている『租税法の基本問題』『租税法の発展』『租税法と市場』があります。こちらは,網羅性というよりもどちらかと言えば専門性を重視した論文集であろうかと思います。
もちろん,いずれもすばらしい論文集であり,『現代租税法講座』とこれら3巻本のどちらが優れているといったようなものではないかと思います。ただ,少し毛色が違うものだと感じました。

今回取り上げなかった第1巻および第4巻にも,すばらしい論文が収録されているのだろうと思います。また,第2巻や第3巻の論文で今回取り上げなかったものの中にも,すばらしい論文がたくさんありました。
また輪読会を開いてみたいなー,と思っています。今回参加いただいた皆さま,ありがとうございました。インプットしたものを活かして,今後とも研究を頑張って参りたいと思います。

関西租税法若手研究会

昨日(8/19),関西若手租税法研究会に参加して参りました。
主催の小塚先生,今回も誠にありがとうございました。

今回は,お三方報告してくださいました。
山田先生は,(今後発表予定のご論稿だそうですので詳細は控えますが)判例評釈をしてくださいました。個人的に興味がある判例であり,とても興味深く拝聴いたしました。
漆先生は,租税法学会の次回研究総会での報告内容につき発表してくださいました。イノベーション,特区ともに個人的には良くわかっていない分野なのですが,様々な議論を交えながらわかりやすく解説していただきました。「質を含めた論文発表率」という記述で,少し心が痛くなりました。
谷口先生は,以前発表された論稿(こちらこちら)に近年の判例の分析を加えた論稿を発表してくださいました。今年の税法学会のテーマだったことからもわかるように,租税回避は税法学において非常に重要な(一番大事だと言っても過言ではない)テーマとなっています。とても勉強になりました。

最近,少し研究のモチベーションが下がってしまっていました。とはいえ,サボっているわけにもいかないので,少し視野を広げて(『大人のための国語ゼミ』など)色々な本を読んでいましたが,本筋の研究がおろそかになってしまっていました。今回の先生方の報告を聞いて,ガッツをいただいたような気がします。今後とも頑張って参りたいと思います。

大人のための国語ゼミ

昨日(8/8)まで,国語の勉強をしていました。
とはいっても,高校の頃までの国語の復習をしていた訳ではなく,先月出版された下記書籍を読んでいました。

www.yamakawa.co.jp

野矢先生は,ヴィトゲンシュタインを中心とした分析哲学の研究を専門にされている哲学者の先生です。専門とされている分析哲学に関する文献はもちろん,哲学の入門書も数多く執筆されています(『哲学の謎』が個人的にオススメです)。
また,哲学と非常に近しいというか(アリストテレス等)重なり合う分野ですが,野矢先生は論理学の本もたくさん書かれています。『入門!論理学』を読まれたことがある方も多いのではないかと思います。『論理トレーニング101題』は,ビジネスマン向けのブックガイドでも紹介されています

『大人のための国語ゼミ』も,系統としては論理学の概説書に近いものかと思います。ただ,内容としてはおカタい論理学の本ではなくて(論理式も出てこないです),本当に「大人のための国語の本」という言い方がしっくりきます。論理を用いるとはどういうことなのか,実践的にそれを展開した本と言えるかと思います。
上記出版社のサイトに行けば目次が見られますが,内容も非常に実用的です。どのような場面で使う考え方なのか,明確にしながら書かれています。
実用性や明確さのカギとなっているのは,ところどころに挟まれている問題かと思います。野矢先生が書かれた具体的な文章を題材にしながら,テーマとなっていることをどのように実践するのか,演習形式で解説されています。また,可愛らしいイラストが内容に関連して描かれていて(近く漫画としても出版されるようです),非常に楽しみながら読むことができます。

内容を理解できるのはもちろんのこと,この本は自分と向き合うこともできる本だと思います。
章ごとのテーマがしっかりしているので,自分が得意なことや苦手なことが理解できます。私は「3.言いたいことを整理する」や「5.文章の幹を捉える」でテーマになっていた文章を腑分けする作業がとても苦手でした。
楽しくかつわかりやすいのでじっくり理解しながら読めますし*1,苦手な部分については繰り返し読んで自分の中になじませていくこともできる本かと思います。

楽しい,わかりやすい,実用的だ,為になる等々書いてきましたが,内容が浅薄という訳では当然ありません。
ところどころ,野矢先生だから書けるのだろうな,という記述は散見されます。例えば,「2.事実なのか考えなのか」の部分では,事実と意見の区別を重要だとしつつも,しかしその区別は相対的であり,事実の多面性にむしろ気を付けねばならないと指摘されています。他にも,野矢先生が第一線で研究されてきたからこそ書けるのであろう記述は数多くあります。

先日の記事と異なり,普通に買って読んだ本なのですが,とても感動したので書いてみました*2。こういうものって勝手に書いて良いのかわかりませんが,大丈夫ですよね,たぶん…
とりあえず法学をやられている方には非常におススメの本ですし,ビジネスマンの方にも,どんな人にもおススメです。読むにしろ書くにしろ話すにしろ聞くにしろ,何か言葉を使おうと思ったらぜひ参照すべき本だと思います。

*1:著者としては,「せめて一週間,できれば一箇月はかけてもらいたい」と書かれている(5頁)。

*2:『教養のための「税法」入門』を読んで感動しなかったことを意味しない。念のため。