What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

『パブリックコメントと租税法』をご恵贈いただきました。

 千葉商科大学泉絢也先生より,公刊された『パブリックコメントと租税法』をご恵贈いただきました。泉先生,ありがとうございます。

www.nippyo.co.jp

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 この書籍は,行政庁が発する法令解釈である政省令や通達につき,租税法律主義の観点からどのような統制をすることができるのか,という点を,パブリックコメント制度の活用を鍵に論じたものです。行政解釈のあり方について論じたのち(第1~3章),パブリックコメント制度について,米国法との比較法的見地から論じて(4~6章),パブリックコメント制度についてどのような改善策がありうるのか,提言を行っています(7章)。
 パブリックコメント制度は,当然ながら税法以外の行政法領域でも活用される手続ですが,アメリカの議論については税法領域以外の領域にも目を配った詳細な検討がされています。さらに,研究全体の方向性としても,パブリックコメントはよい制度だからもっと活用すべきだ,という点に留まらず,なぜパブリックコメント制度の積極的な活用が望ましいのか,という根本的な点から議論を行っており,説得力があるように思います。
 まだまだ読み切れていないですし,個人的にあまり明るくない領域ではあるのですが,今後少しずつ読んで勉強したいと存じます。

租税法学会大会

 昨日,オンラインで開催された租税法学会第49回大会に参加いたしました。プログラムは下記参照。

sites.google.com

 また,昨年傍聴した記事といて,下記参照。

taxfujima.hatenablog.com

 今回の研究総会では,上記のプログラムのとおり,「消費課税の将来構想」 と題して,消費税を中心とする消費課税について今後の立法論や解釈論に関する課題について議論がされました(詳細は租税法研究の次号に掲載されます)。付加価値税制度のそもそもの望ましさという点から最新の諸課題に至るまで,また自動車関連の個別消費税についても,幅広く議論されました。
 今回は初めてオンラインで開催された租税法学会の大会でしたが,とても参加しやすく(「コーヒーを片手に参加する大会」と佐藤英明理事長もおっしゃっていました),また議論も盛んにされていました。議論自体が勉強になったという点はもちろんのこと,オンラインでの学会運営という点でも,学ぶところが多かったです。

 私は,これまでもほぼ毎年傍聴してはいたのですが,今年の3月に租税法学会に入会しました。今回の大会はオンラインでの開催ということがあり傍聴できなかったので,入会できて幸運でした。入会をお認めいただき,会員の先生方,ありがとうございました。
 最近入会した会員が担当するのが通例のようなのですが,私が研究総会の午後の部司会を務めました*1。いわゆる司会のように議論を整理する役割を担うことはなく,お名前と論題を読むだけではあるのですが,非常に緊張しながら担当していました。ただ,無事担当することができて,ホッとしました。
 簡単ですが,こんなところで。

*1:なお,午前の部の司会は,金沢星稜大学中尾真和先生が務められました。

『最新企業会計と法人税申告調整の実務』をご恵贈いただきました。

 税理士・公認会計士の峯岸秀幸先生より,『令和2年度版 最新企業会計法人税申告調整の実務』をご恵贈いただきました。

www.daiichihoki.co.jp

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 この書籍は,日本公認会計士協会東京会税務委員会小委員会のメンバーの先生方が執筆された書籍です。峯岸先生も,同委員会のメンバーとして執筆陣に加わっています。昨年いただいた下記書籍の後掲書という位置づけになるようです。

taxfujima.hatenablog.com

 書籍の内容としては,会計的な観点から,法人税に関する様々な論点を設例なども交えながら整理している書籍です。令和2年度税制改正への対応や,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として用いられている災害に関する税制などについてもまとめられており,非常に有用な書籍であろうと思います。
 峯岸先生は,上記記事で書いたとおり,修士時代の同級生に当たります。最近も研究のことで色々とご相談したり,修了後も仲良くしていただいている方です。書籍をいただいたことも含め,いつもありがとうございます。いただいた書籍で勉強したいと存じます。

『租税回避と法』をご恵贈いただきました。

 立命館大学本部勝大先生より,執筆された『租税回避と法』をご恵贈いただきました。本部先生,ありがとうございます。

www.unp.or.jp

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 この書籍は,本部先生が執筆された博士論文をもとに加筆修正を行った書籍です。
 本部先生は,租税回避の包括的否認規定(GAAR)を研究テーマの1つにされています。既に,アメリカおよびカナダの包括的租税回避否認規定(GAAR)について論文を発表されていますし*1,その成果を日本税法学会の大会でも報告されています*2。税法学会で報告された際の記事として,下記を参照。

taxfujima.hatenablog.com

 この書籍は,上記の研究成果をもとにして,大幅に加筆したうえで執筆されたものです。日本法について論じた第Ⅲ部があることにくわえ,序章では,租税回避についての丁寧な説明もされています。非常に難解なイメージがある租税回避否認の議論へと平易な言葉で導いてくれる序章に始まり,第Ⅰ部および第Ⅱ部における外国法についての緻密な分析へと,深い議論へ自然と進んでいける構成になっています。さらに,第Ⅲ部では,バランスがとれた,説得的な意見が提示されています。
 租税回避の議論は,「租税回避を規制すべきだ」という意見と「納税者の権利を守るべきだ」という意見がぶつかる主戦場であり,GAARの導入はまさにその中心にある論点の1つです。この書籍は,それらの対立を踏まえたうえで,緻密な外国法の分析に基づき,新たなステージへと日本の議論を進めるもののように思いました。理解しやすい導入に始まり,バランスのとれた説得的な意見が述べられていることもあり,今後の日本の租税回避否認に関する立法論に大きな影響を与えうる書籍なのではないかと思いました。
 租税回避やその否認に少しでも興味がある人なら,予備知識がなくとも,とても興味深く読める本だと思います。

 個人的な話もしたいと思います。
 本部先生は,他大学ではありますが1学年上の先輩であり,博士後期課程在学時から仲良くさせていただいています。いつも学会の度に色々と他愛もない話をしていただいて,元気づけていただきながら研究を続けてきました。もちろん,私なんかよりも断然優秀な方ではあるのですが,「自分も本部さんのように頑張らなければならない」と常に目標にしながらこれまで研究をしてきたように思っています。
 書籍を拝読して,自分はまだまだこんなすごいものは書けないな,と思ったりもしたのですが,目標になる存在が近い年齢にいることを幸運に思いつつ,精進を重ねて学界に貢献していきたい,と思いました。この記事をお読みいただいているかはわからないですが,仮にお読みいただいていたならば,今後とも色々とご指導いただけると大変嬉しく思います。

*1:アメリカ法につき,「経済的実質主義の制定法化に関する一考察(1)(2・完)」名古屋大学法政論集263号(2015年)401頁同264号(2015年)229頁参照。カナダ法につき,「カナダにおけるGeneral Anti-Avoidance Rule (GAAR)の生成と展開(1)~(4・完)」名古屋大学法政論集274号(2017年)111頁同275号(2017年)291頁同276号(2018年)327頁同278号(2018年)239頁参照。

*2:アメリカ及びカナダにおける租税回避へのアプローチ」税法学577号(2017年)141頁参照。

『租税法』(日本評論社)をご恵贈いただきました。

 立教大学浅妻章如先生および大阪府立大学酒井貴子先生より,両先生が執筆された『租税法』をご恵贈いただきました。浅妻先生および酒井先生,誠にありがとうございます*1

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www.nippyo.co.jp

 この書籍は,大学の学部生などの税法の初学者に向けて書かれた教科書です。目次を見てもわかりますが,税目もかなり網羅的に記述されています。ただ,「薄く広く」といった性質の教科書ではありません。帯でもはしがき(ⅱ頁)でも強調されていますが,メリハリをつけて,個別の論点を深いところまで解説している教科書です。いわば,枝葉は落として,深い幹をしっかりと叙述している,と言って良いかと思います。個人的にも,色々と研究で参考になる記述が多く,読んでいてとても刺激を受けています。
 とはいえ,ものすごく難しい書籍ではありません。あくまで初学者向けの教科書という性質は持ったままで,深いところまで書いてくれている書籍です。各節の最初には,その節で問題となる論点について1文で副題を付しています*2。具体的な判例や裁判例も数多く取り上げています。
 また,教科書の使い方として,8頁ごとに章や節の境目があり,8頁×28回で授業や学習を設計できるようになっているので,使いやすい教科書でもあろうと思います。かなりしっかりと設計したうえで書かれた教科書であることがうかがえます。
 「この制度はこうなっていますー」というだけの「解説」に満足できない,個々の制度の根幹から理解をしたいという方にお勧めの教科書だと思います。個人的にも,そういった制度の根本にある考え方や価値観を伝えることを大事にしながら授業をしたいと思っているので,ぜひこの教科書を参照しながら(研究はもちろんのこと)授業をしたいと思いました。重ね重ね,浅妻先生および酒井先生,すばらしい教科書をお贈りいただき,誠にありがとうございました。

*1:なお,浅妻先生は『租税法概説』(有斐閣)を,酒井先生は『租税法』(有斐閣アルマ)を,既に共著で執筆されています。

*2:たとえば,第1章Ⅰの租税法律主義と租税公平主義では,「大嶋訴訟:サラリーマンが実額経費を控除できないことは違憲となる差別か?」(1頁)という副題がついています。

アメリカ法2019-2号に,論文紹介を載せていただきました。

 タイトル通り,日米法学会が発行している雑誌であるアメリカ法の2019-2号に,論文紹介を掲載していただきました(254頁)。
 「公平性と中立性の対立を越えて」というタイトルで,Ari Glogower, Taxing Inequality, 93 N.Y.U. L. Rev. 1421 (2018)を紹介したものです*1。当該論文は,所得や富の再分配機能を強化するための課税ベースの改革案を論じたものですが,単純な富への課税(富裕税)を主張するのではなく,所得と富を合算した新たな課税ベースを創出すべきだと主張する,非常に興味深い論稿です。
 論文のなかでは様々な実例を用いながら議論が展開されていますが,紙幅の関係上,実例は省きながら紹介しました。私の紹介を読んでご興味を持たれたら,ぜひ原文もお手に取っていただけますと嬉しく思います。米国における課税ベースの選択の議論に私はあまり明るいわけではありませんが,それでも興味深く読むことができる,独自の主張をわかりやすく展開している論文でした。その魅力を少しでも伝えられていたなら,大変嬉しく思います。

*1:全文は,下記のSSRNのリンクから読むことができます。 papers.ssrn.com

オンラインでの研究会(東アジア租税法研究会,アメリカ税法研究会)

 久しぶりの投稿になってしまいました(なお,今月はそこそこ書くネタがある予定です)。最近,2つのオンラインでの研究会に参加したので,記事に残しておきたいと思います。

第2回東アジア租税法研究会

 8/21(金),第2回東アジア租税法研究会に参加しました。オンライン(MS Teams)にて開催されました。
 当該研究会は,これまで,関西租税法若手研究会と呼称していた研究会が今年度より改称したものです(関西租税法若手研究会の頃については下記の記事を参照)。岡山大学小塚真啓先生が主催で,若手の研究者が参加している研究会であることは変わりません。

taxfujima.hatenablog.com


 第1回が5/25(月)に開催され,私も参加していたのですが,授業などに追われて記事に書き忘れていました。第1回の報告者は,学習院大学長戸貴之先生でした(長戸先生,申し訳ありません)。

 第2回である今回は,2件の報告がされました*1
 まず,九州大学田中晶国先生が,租税手続法に関するご報告をされました。手続保障という観点からはこれまで抜け落ちていた点に光を当てるご報告でした。今後,論文として公開予定とのことです。
 次に,小塚先生が,現在共著で執筆中の研究ノートについてご報告されました。昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大に対する対応として行われたとある取扱いの変更と租税法律主義の関連についてのご報告でした。

 いつもながら,この研究会は,今まさに何が問題になっているのか,という点について,形になる前の時点で議論に触れることができて,研究に関する刺激をたくさんいただけます。私も頑張らなければならないな,と強く思いました。

アメリカ税法研究会(2020年度第1回)

 8/30(日),アメリカ税法研究会に参加しました。オンライン(Zoomミーティング)にて開催されました。
 当該研究会は,これまで,青山学院大学にて開催されてきました(前回研究会につき,下記記事を参照)。ただ,今年から,青山学院大学に本拠を持つ中核メンバーがいなくなったので,私の本務校である神奈川大学法学研究所の(研究費を受領しない)共同研究として再スタートすることになりました。
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 今回の研究会では,2件の報告が行われました。
 まず,米国税理士の成田元男先生が,アメリカの連邦租税裁判所の判決であるJacobs v. Commissionerについてご報告されました。当該判決は,アメリカのプロアイスホッケーチームであるBoston Bruinsが選手に対して供与した食事の課税上の取扱いが争われた事案です。当該判決自体が面白かったことはもちろんのこと,アメリカと日本の制度の違いや,日本で起きたらどうなっていただろうという点など,非常に興味深い議論がされました。
 次に,私が,「連邦所得税が非課税となる”Gift”(内国歳入法典§102)の意義」という題で報告をしました。こちらについては,今後日本法との比較法的検討を行ったうえで論文として公表予定ですので詳しくは書きませんが,上記の条文につき,判例理論や学説を整理しました。

 今回の研究会は,オンラインで初めて,かつ神奈川大学法学研究所の共同研究に登録してからも初めて行われた研究会でしたが,色々な方が参加してくださり,議論も大変盛り上がりました。参加していただいた先生方,誠にありがとうございました。

オンラインでの研究会について

 最近の2回の研究会もそうですが,先日の若手法学研究者フォーラムなど(下記記事参照),今年度に入ってからの研究会は専らオンラインで行われています。
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 オンラインになることにより,何というかその場の雰囲気が醸成されにくかったり,あとリアルで同じ場所にいる懇親会でのぶっちゃけトークができなかったり,色々と不便な点はあります。一方,住んでいる場所を問わずに気軽に参加できたり,他の人の報告中もリラックスしながら聴けたり,メリットもたくさんあるように感じています。懇親会の後にすぐにベッドで休むこともできますし,Zoomだと,懇親会のときとか,ブレイクアウトルームの機能も便利です。個人的には,(若手法学研究者フォーラムで横田先生に言われてやってみたのですが)チャット欄に事前に質問を書いておくと,質問する方もその場その場で思ったことを残しておけるし,回答する方も文字になったものを見ながら答えられるので,かなり検討の質が上がるな,と感じたりしています*2
 オンラインでの研究会の「気軽に参加できる」というメリットはとても大きいので,今後とも,特に小規模な研究会では残っていくのかな,と感じています。上記のアメリカ税法研究会は,今後ともオンラインで開催していくつもりですし,参加者も鋭意募集中です。報告機会が得られることと報告が聞けること以外に特に参加するメリットはありませんし,仲のいいメンバーでマイペースに,報告したい人がいたら開催するような形でやっていますが,逆に負担もありません。アメリカ税法に興味がある方がいれば,ぜひご連絡いただけますと幸いです。

*1:なお,いずれの報告も,今後文字にして公表予定ですので,詳細はボカしながら書きます。

*2:もっとも,報告を聞きながら質問をチャット欄に書いておく,という営みには,少しコツも必要そうではあります。また,一応,オフラインでの研究会でも,チャット機能のようなものを使うことは不可能ではないと思います。実際,若手法学研究者フォーラムでは,オフラインで開催している段階から,WorkFlowyを使って,似たようなことをしてきました。