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What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。

判例研究が重要判例解説に引用されました!

9月に発表した判例研究が、『平成28年度重要判例解説』に引用されました(吉村政穂「判批」ジュリスト1505号(2017年)213頁参照)。吉村先生が、当該事件の控訴審判決の意義について述べる部分で引用してくださいました。ありがとうございました。
上記ブログ記事に加筆したとおり、弊学の木山先生は既に引用してくださっていました(木山泰嗣「判批」税経通信71巻13号(2016年)176頁)。しかし、外部の先生に引用していただけるとは思っておりませんでした。特に、大学院入学後しばらく、私は興銀事件(最判平成16年12月24日民集58巻9号2637頁)について研究しており、興銀事件の判例評釈を租税判例百選第5,6版と担当されている吉村先生に引用していただけたのは本当に嬉しかったです。ありがとうございました。
とても嬉しいのですが、これに浮かれることなく、今後も引用していただけるような研究成果を公表できるよう、目の前の研究に集中してまいりたいと思います。

(4/28追記)
弊学のリポジトリにて当該判例研究が公開されました。下記リンクよりダウンロード可能です。
青山学院大学 学術リポジトリ

債務免除益課税の基礎理論(下)が公開されました

3月に発行された青山ビジネスロー・レビュー6巻2号に,拙稿「債務免除益課税の基礎理論―事業再生税制の「資力喪失要件」に対する解釈を中心として―(下)」が掲載されました。(上)と同じく,修士論文「債務免除益課税の理論的根拠」に加筆修正を行った上で投稿したものです。
下記リンクよりダウンロードできます。

青山学院大学 学術リポジトリ

(下)では,まず,従来通達(旧所得税基本通達36-17)で規定されていた事業再生税制が法定化されたことに伴い(所得税法44条の2),その射程範囲が縮小されたことを述べます(昨年末に第01回租税実務Lightening Talkで述べた内容です)。その後,(上)で整理した債務免除益課税の理論を私法と関連付けて論じ,債務免除益課税の理論と事業再生税制のあるべき解釈が整合しないことを述べます。そのうえで,私独自の理論を展開しています。
正直なところ,今見ると論証不足が目立つ面も多く,恥ずかしい気持ちでいっぱいです。しかし,博士後期課程の研究を通して,この論稿で述べた議論をより補強しつつ展開していきたいと思っております。ご笑覧いただければ幸いです。

現金を「販売」した場合の譲渡所得課税について

この話。
togetter.com
この場合,譲渡所得課税(所税33条)についてはどのように考えれば良いのだろう。

まず,原則として,金銭は譲渡所得の起因となる「資産」に含まれないものとされている。これは,譲渡所得課税が「資産の値上りによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のもの」*1とされていることに起因する。金銭は価値が増減しないため,値上がり益(キャピタル・ゲイン)が発生せず,したがってこれを清算する趣旨である譲渡所得も発生しない,ということである*2
この論理を裏から述べるならば,金銭であっても値上がり益が生じうるものであれば,その譲渡からは譲渡所得が生じうる。したがって,金銭的価値以外の価値がある金銭,例えば古銭等の収集用の金銭の譲渡からは譲渡所得が生じるものと解される。
この事案でも,上記サービスにおいて金銭の出品が可能となっている理由としては,収集用の金銭との区別が困難であることが挙げられている。したがって,当該金銭は原則とは異なる取扱いをされる可能性がある。実際に譲渡益が生じているという事情も,このような議論を支持するであろう。

譲渡所得が発生するとされた場合,次に検討すべきは非課税所得(所税9条)への該当性である。
まず検討すべきは,生活に通常必要な動産の譲渡(所税9条1項9号,所税令25条)への該当性であろう。納税者やその親族が有する資産のうち生活に通常必要な動産については,その譲渡により譲渡益が生じても,その譲渡益は原則として非課税所得に該当するものとされている。
金銭の動産該当性については,問題なく該当するものであろう*3。次に,金銭が「生活に通常必要」であるかが問題となる。例えば,この規定への該当性が争われたサラリーマン・マイカー税金訴訟第一審判決においては*4,サラリーマンが有する自動車は「日常生活に必要なものとして密接に関連しているので、生活に通常必要な動産…に該当するものと解するのが相当である」と判示されている。上記サービスで出品されている金銭も同様に日常生活に必要なものとして密接に関連しており*5,同様な論理で生活に通常必要な動産と言うことができよう。
したがって,上記サービスにおける現金の譲渡によって譲渡所得が発生すると解したとしても,それは非課税所得に該当し,所得税は課されないものと考えられる。

以上のように,上記サービスによる現金の譲渡には(仮に譲渡所得が発生するとしても)所得税は課されないものと考えられる。
以下,何点か補足する。
・上記togetterで述べられるとおり,現金の出品をしている理由が生活の困窮にある場合には,資力喪失者が得る譲渡所得の非課税規定(所税9条1項10号,所税令26条)の適用もありうる。
・当該譲渡が適法か否かは,所得税の課税には関係しない*6
・消費税の課税についても,古銭と同じく,上記サービスによる資産の譲渡は課税対象ともなりうる。しかし,上記サービスを利用しているのは多くが事業者ではなく消費者であろうから,「事業として対価を得て行われる」ものではないため資産の譲渡等に該当せず(消税2条1項8号),課税対象外と解すべきであろう(消税4条1項)。

*1:榎本家事件上告審判決(最判昭和43年10月31日集民92号797頁)。

*2:三木義一編著『よくわかる税法入門[第11版]』(ゆうひかく選書,2017年)129頁[伊川正樹執筆部分]参照。

*3:民法上,動産は不動産以外のすべての物とされている(民法86条2項)。

*4:神戸地判昭和61年9月24日判時1213号34頁。なお,同控訴審判決(大阪高判昭和63年9月27日高民集41巻3号117頁)も参照。

*5:なお,収集用の金銭はこれに該当しないものと考えられる。

*6:制限超過利息事件上告審判決(最判昭和46年11月9日民集25巻8号1120頁)参照。

研究会発表,楽しいかも。

昨日は,日本税法学会関東地区研究会で発表の機会をいただきました。
テーマは,「貸与型奨学金と債務免除益課税」というものです。ここ半年ほど取り組んできたテーマでした。いずれ,何らかの形で雑誌等の媒体に論文として発表したいと考えています。
質問やご意見を下さった先生方,本当にありがとうございました。

内容はまだ秘密というか,ご指摘をいただいてもっと練らなければならない点が多いので何も書けないのですが,研究会発表って楽しいなと感じたことを記しておきたいと思います。
研究会で発表の機会をいただくのはこれが初めてではなくて,昨年10月に同じ日本税法学会関東地区研究会で発表しております。ただ,この時は何分初めてでしたので,楽しむ余裕も無く,先生方の優しい質問に背を向けてただひたすらに原稿にしがみついていたように記憶しています。
一方,今回は(もちろんとてもとても緊張していたのですが)外部で研究成果を発表する醍醐味を味合わせていただいたように思います。自分が切り開いた研究をたたき台に一流の先生方がそこから論ずべき点を拾い上げて(もちろん数段も数十段も上のレベルではありますが)議論をしてくださいました。自分の未熟さを思い知る一方で,知的な刺激をたくさんいただきました。ありがとうございました。

少し短いですが,こんなところで。
今後とも,しっかりと研究した上で,積極的に研究内容を発信していきたいと思います。口頭でもそうですし,このブログでも。

ご卒業おめでとうございます!

昨日は,2年間TA(Teaching Assistant)を勤めたゼミ(木山ゼミ)の卒業祝いでした。

以下のように色紙や花束をいただいて,本来こちらがお祝いする側なのに,感謝の気持ちをたくさんいただいてしまいました。ありがとうございました。僕自身も来年からはゼミのTAには携わらない予定なので,一つの区切りとなりました。


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木山ゼミは,大学教員に憧れるきっかけを作ってくれたゼミでした。

TAになったのは2年前の4月,木山先生が青学に赴任されたタイミングでした。お互い知り合いの人が多いとは言えない中,木山先生に導かれてゼミがどんどんまとまっていって,各々もたくましくなって,自分たちで積極的に色々なこと(授業での発表やディベート)に取り組んで行く姿は,とても感動的でした。特に,全員一丸となって取り組んだディベート大会は,大変なことも多かったですが得るものも非常に大きかったように思います。

正直,大学院に来る前は,学部教育ってなんなんだろうという疑問が自分の中にありました。社会で役立つスキルを身に着けるだけならば専門学校で良い訳です。あるいは,大学院での研究の基礎を作る場なのならば,もっと大学院への進学率は高くなって良いと思います。

その答えは,片方(教わった立場)から言えば,自分で示していくしかないのだろうと思います。私は学部時代は全く別の分野(ドイツ哲学)の勉強をしていました。その経験が他分野(税法学)の研究でどう活きるのか,それは自分で探求していきたいと思っています。一方で,教える立場から言えば,学部教育の意義は確実にあるのだと,木山ゼミを微力ながらお手伝いする中で確かな実感を得ることができました。

 

いつか,今回卒業された皆さんとまた飲む機会があらんことを祈っています。その時には,木山ゼミみたいなゼミを自分で教えられていたら良いなぁ。

そんな時を迎えられるために,今は研究を頑張ります。

関西租税法若手研究会

3/4(土)に,大阪で開かれた第二回関西租税法若手研究会に参加して参りました。
新進気鋭というか,若手ながら名を知られた先生方ばかりの中に招き入れていただき,とても貴重な体験をして参りました。関西に何の縁もゆかりもない大学院生に参加を許してくださり,ありがとうございました。

今回はお二方発表してくださいました。
山田先生は,必要経費と家事費および家事関連費の関係について発表されました。必要経費と家事費等の切り分けの判断方法について,米国法との比較検討から詳しく論じられていました。
藤岡先生は,為替差損益の課税問題について発表されました。為替差損益の発生するメカニズムからそのあるべき課税関係を考察されていました。

両先生とも,大きな論文の底にあるアイデアを発表して下さり,とても参考になりました。
私も,そろそろ博士論文のアイデアを固めていかないとなとずっと考えています。私の能力では両先生のようにすばらしい論文を書けるとはとても思えないのですが,それでもやはり,大きなテーマについて,自分なりの一貫した議論を構築しなければならないのだと思います。そのお手本を二つ示していただいたように感じました。

とはいえ,大きなものを見据えつつ,今は目の前のテーマに集中して,一生懸命に書いていくしかないのだと思います。
来年度良いスタートが切れるよう,花粉症で苦しみつつ研究に邁進して参ります。どうぞ暖かく見守ってくださいますと幸いです。

最判H27.10.8の差戻控訴審について問い合わせてみました

現在,修士論文の加筆修正版の後半の校正作業をしています*1
修士論文で,私は債務免除益課税についての基礎的な考察およびそれに基づく事業再生税制における債務免除益非課税規定(所税44条の2)の適用要件の解釈を行いました。現在は,その基礎的な考察を基礎づけつつ,他の債務免除益課税の問題についても検討を行っています。

債務免除益課税といえば,一昨年の10月8日,恐らくこの分野について初めて判示した最高裁判決が出ました*2
この事件は,人格なき社団から役員が得た債務免除益につき,①所得分類に加え,②事業再生税制(当時は旧所基通36-17)の適用の可否についても争われたものです。最高裁判決では,①所得分類については給与所得に該当するとした上で,②事業再生税制の適用の可否については下級審に差し戻す,という判断がされています(通達の適用の可否という言葉は用いていませんが,文言からそのように読めると思います)。

校正作業をしながら,そういえば当該事件の差戻控訴審判決は出たのかな,出ていたらこの論文で言及しなければまずいよな,と思ったので,裁判所の方に問い合わせてみました。
まず,最初の控訴審判決が出た広島高裁岡山支部に問い合わせたところ,広島高裁の本部の方で審議している旨の回答をいただきました。続いて,広島高裁に問い合わせたところ,本日(2018年2月7日)までに差戻控訴審判決は出ていない,とのことでした。
いずれの裁判所でも,どこの馬の骨かもわからない怪しい学生からの電話に非常に親切かつ丁寧に対応していただきました。ありがとうございました。

なお,私は差戻控訴審での事件番号は把握しておりませんので,「恐らくこの事件だと思いますが」という前提の上での回答でした。したがって,確かな情報ではありません。そもそもこのブログも個人が勝手に書いているものですし,伝聞情報ですし,信憑性のある(例えば学術論文で引用するソースになるような)情報ではないことにご注意いただければと思います。
ただ,私の備忘録および情報を共有する目的で,ここに記しておきます。

(2017/3/13追記)
差戻控訴審判決ですが,2/8に出ていたようです。判決が出る前日に何とも間の悪いブログを書いてしまい,申し訳ございません。また,上記情報は岡山大の小塚先生のFacebookへの投稿で知りました。小塚先生,ありがとうございます。
まだデータベース等には判決文は載っていないようですが,何らかの形で判決文を入手したいと思います。

*1:前半はこちらからダウンロード可能です。

*2:最判平成27年10月8日判タ1419号72頁。判決文はこちら(裁判所ウェブサイト)からも入手できます。たしか租税法学会の直前に出されたように記憶しています。修論執筆中だったので,修論のどこで言及しようか悩みました。