What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

木山先生にお祝いいただきました。

 昨日,弊学法学部の木山先生に,先日の「税に関する論文」専門家の部奨励賞受賞をお祝いいただきました。木山先生,誠にありがとうございました。
 お祝いいただいたこと自体ももちろん嬉しかったのですが,それ以上に,木山先生とゆっくりお話しできたことが大きな収穫でした。昨年度までは,ゼミのTA等で木山先生とお話しする機会があったのですが,今年度になってから(木山先生が非常にご多忙なこともあり)なかなかお話しする機会がありませんでした。
 来年度のことも色々とお話しして,これからも頑張ろう,とリフレッシュできました。まだ終わったわけではありせんが,今年度を振り返ると,色々とメンタル的にも物理的にも研究の進捗に波のある一年でした。来年度はしっかりと計画を立てて,自分がすべきことをしっかりとやっていって博士後期課程の研究をまとめていく一年にしたいと思っています。そのために,様々な機会を活用して参りたいと思います。
 これからも頑張ります。

第06回関西租税法若手研究会

 今週日曜日(1/21),関西租税法若手研究会に参加して参りました。
 主催の小塚先生,お加減が宜しくない中企画してくださり,誠にありがとうございました。

 今回の研究会では,3人の研究会メンバーが報告しました。
 まず,私が,第13回「税に関する論文」を受賞した論稿(「債務免除益の年度帰属」)について報告いたしました。当該論稿では,所得の年度帰属一般について西南学院大学の倉見先生の議論に依拠した部分が大きかったのですが,(在学研究中をされていて不参加にも関わらず)倉見先生からコメントをいただき,非常に有益なご示唆をいただきました。倉見先生,本当にありがとうございました。また,参加されている先生方からもご質問をいただき,議論が深まりました。参加されていた先生方,ありがとうございました。今後とも継続して研究して参りたいと思います。
 次に,大阪経済大の漆先生が,今後発表予定の判例評釈について報告してくださいました。今後発表されるとのことですので詳細は控えますが,これまで裁判例が積み重なってきた分野について新たな要素を付け加えた裁判例で,非常に興味深く拝聴いたしました。
 最後に,京都大学法学研究科博士後期課程の住永さんが,税法学574号に掲載された論稿(「株式〈貸借〉と譲渡についての一考察」)および第40回「日税研究賞」を受賞された論稿(「内国歳入法典1259条と課税における譲渡についての一考察」)について報告されました。住永さんは,所得の「実現」という概念について,金融取引を主たる場面として研究されています。複雑な金融取引について正確に腑分けされ,「実現」という観点から課税関係を論じられていて,非常に勉強になりました。

 今回の研究会は,実現主義という考え方について一貫して議論された研究会でした。実現主義は,基本的な考え方にも関わらず,なかなか整理が難しいものです。おそらく,具体的な場面を想定して何が「実現」と呼びうるのか,議論を積み重ねていくしかないのだろうな,と思いました。また,その考え方が通じる場面についても整理が必要なのだと考えます。
 今回の研究でいただいたご示唆を活かして,今後とも研鑽を積んで参りたいと思います。

日本租税理論学会大会(初めての学会報告)

 一昨日(12/8)から昨日(12/9)まで,日本租税理論学会第29回大会に参加して参りました。
 会場は名古屋市の椙山女学園大学星が丘キャンパスでした。周辺を含めとても素敵なキャンパスでした。

 1日目(12/8)は,一般報告として2件,シンポジウム報告として3件の報告が行われました。
 齊藤先生は,椙山女学園大学の先生であり,今回の大会にあたってもご尽力くださった先生です。「消費税増税を巡る議論と課題」と題して,消費税を増税した場合や複数税率(軽減税率)制度を導入した場合にどのような効果が生じるのか,推計データを元に発表してくださいました。
 黒川先生は,「会計学批判―税法研究の現場からみる企業会計中心の会計学の問題点」と題して,税法学上の様々な問題について,複式簿記的思考によって解決することが可能なのではないか,という提言をされていました。

 以上の2件が一般報告であり,その後,今回の「所得概念の再検討」というテーマに沿ったシンポジウム報告が行われました。
 まず,川勝先生(財政学)は,「ミード報告にみるイギリス型支出税の意義と限界」と題して,『現代租税の理論と思想』に掲載された論稿を元にした発表をされました。個人的に,『現代租税の理論と思想』は『所得税の理論と思想』と合わせて愛読書としておりますし,支出税構想には(賛否はともかくとして)興味があるので,とても勉強になりました。
 次に,依田先生(税務会計学)は,「法人税における課税所得概念の再検討」と題し,企業会計の変遷とそれに対する法人税法の対応を整理してくださいました。会計の三重構造は崩壊しつつあるのではないか,といったような議論が(特に大竹貿易事件(最判H2.11.25)やビックカメラ事件(東京高判H25.7.19)等を素材として)議論されるところですが,具体的にどのように法人税法が乖離しつつあるのかが鮮明になりました。
 シンポジウム報告の最後には,奥谷先生(税法学)が, 「包括所得概念の問題点と市場所得概念」 と題した報告をしてくださいました。包括的所得概念が現行の税法上の取扱いを説明しきれない点,市場型所得概念がむしろ取られるべきではないかという点を議論されていました。奥谷先生は長年市場型所得概念について研究されており,非常に勉強になりました。
 1日目の最後には,名古屋市の河村市長が自身の行ってきた改革について講演してくださいました。当然テレビ等で拝見している方なので,生でお話を聴けたのはとても嬉しかったです。

 2日目は,債務免除益課税をテーマとして,弊学法学研究科関係者によるグループ報告が行われました。
 櫻井先生は,法学研究科OBの税理士であり,ご自身の論稿(「所得税法における債務免除益課税 : 遅延損害金の場合を中心として」)を元に「所得税法上の債務免除益課税問題―遅延損害金の債務免除益課税を中心として―」という報告をされました。
 次に,峯岸先生は,税理士および公認会計士業務の傍ら法学研究科ビジネス法務専攻の博士課程に在学し研究をされています。会計基準と法人税法の関係性について研究をされており(詳細はこちらの論稿をご覧ください),ご自身のテーマと債務免除益課税を絡め,「法人税法における債務免除益課税の法解釈と制度の概要」と題した報告をされました。
 3番目に,私が,「広義の事業再生税制に現在する2つの差異」と題した報告をいたしました。詳細は後に書きます。
最後に,木山先生が,「債務免除益課税の諸問題―判例等の状況を中心に―」と題した報告をされました。木山先生は倉敷青果荷受組合事件(最判H27.10.8)の判例評釈を発表されるなど,債務免除益課税について研究されています。今回はその集大成のような形で,債務免除益に対する源泉徴収制度のあり方について報告されました。

 今回,私は初めての学会報告でした。大学院生という若輩の身でありながらこのような機会をいただけたことを,租税理論学会の皆さまに本当に感謝しなければならないと思っております。ありがとうございました。
 報告の内容は,「広義の事業再生税制」と題して,企業再生税制(法税59等)に内在する差異および企業再生税制と事業再生税制(所税44の2)の差異について考察しました。「広義の事業再生税制」とは,債務免除益に対して課税しない旨を定めた税法上の規定の総称(私の造語)です。債務免除益課税という分野で中心的に論じられてきた点であり,今回発表できたことは個人的な研究の進捗という意味で非常に大きいものでした。
 また,発表したことで,色々な改善点や発見がありました。特に,発表の技術についてはまだまだ未熟な点が大きく,聴衆の皆さまにしっかりと伝えることを考えた発表を行わなければならないな,と反省もしました。また,グループの中でより綿密に報告の内容を練る(4つの報告を寄せ集めるのではなく,グループとして1つの報告を形作るような作業をする)必要があったな,とも感じました。
 報告後,いくつか質問もいただき,この点も勉強になりました。質問いただいた皆さま,ありがとうございました。

 今回の学会は,初めて報告を行ったという点はもちろんのこと,自分の研究テーマ(債務免除益課税)にも深く関わるテーマ(所得概念)について行われ,とても有意義でした。学会でいただいたものを活かして,今後研究を頑張って参りたいと思います。
 2017年の研究生活も,成果物が要求されるものはひとまず一段落しました。とはいえ,ここでサボるのではなく,次の成果物のために,まずはインプットから始めて参りたいと思います。
 今年も弊ブログをお読みいただきありがとうございました(たぶん,今年最後なんじゃないかと思います)。良いお年をお迎えくださいませ。

拙稿「債務免除益の年度帰属」が第13回「税に関する論文」に入選しました。

 この度,納税協会連合会が主催されている第13回「税に関する論文」専門家の部において奨励賞をいただけることになり,昨日授賞式に行って参りました。
 受賞した論文は,「債務免除益の年度帰属」という書き下ろしのものになります。いずれ入選論文集に掲載されるほか,論文のウェブサイト上にも過去の入選論文としてアップロードされるかと思います。その場合は,この記事に追記いたします。
 内容としては,タイトルのとおり,債務免除益の年度帰属,つまり課税されるタイミングにつき,米国における議論との比較法的検討を行ったものです。日本ではあまり議論がされていない領域なのですが,米国では債務免除益の供与に係る報告書(Form 1099-C)の提出制度との関連で裁判例が豊富にあるほか,関連する財務省規則の改正も頻繁に行われています。そのあたりを参照しながら,日本ではどのような議論をすべきか検討を行っています。
 賞をいただけたこと自体はもちろん嬉しいのですが,他にも嬉しいことがたくさんありました。まず,今回執筆した論文は博士論文の一部を構成するものにおそらくなるので,それについて一定の評価をいただけたことは今後の研究に向けて自信になりました。また,今回の論文はかなり私法と関連付けて議論をしたので,『租税法と私法』を執筆されている村井先生や,『税法基本講義』にて私法関係準拠主義を主張されている*1谷口先生が選考委員をされている賞をいただけたのは,とても光栄でした。さらに,愛読書である『私たちはなぜ税金を納めるのか』を執筆されている諸富先生が第1回の受賞者にいらっしゃったので,同じ賞をいただけてこちらも光栄でした。

 授賞式は大阪で行われ,選考委員長の村井先生をはじめ,錚々たる審査員の先生方が出席されました。賞をいただけたことと同じくらい,審査委員の先生方と少人数の会でお話しできたことに大きな価値があったように思います。今後の研究に資する有益なご示唆をたくさんいただきました。
 また,今回は出張ではなく,先方に旅費を出していただいたので,帰りは京都に立ち寄り,京都ラーメンを食べた後,嵯峨嵐山の天龍寺で紅葉を観て帰りました。かなり混んでいたのですが,ちょうど見ごろで,とてもきれいでした*2。個人的に日本の南北朝時代が大好きなので,天龍寺に行けてとても楽しかったです。また,京都駅で四大学ディベート大会が終わった後の木山先生木山ゼミの方に偶然会ったりもしました(優勝,おめでとうございます!)。
 授賞式の席で「この賞を(特に関東で)ぜひ宣伝して欲しい」旨承ったのですが,本当に良い賞なので,ぜひ皆さん応募すべきだと思います。審査は錚々たる先生方が厳正に行っているそうですし,応募にあたってしっかりとしたものを書くべきだ(適当に書いたものならば応募しても仕方がないか)と思いますが,応募の動機はどんなものでも良いのではないかと思います。個人的には,同賞は過去に学部生の論文が一般の部で何度も受賞されていて(公募されている懸賞論文では,税法分野ではとても珍しいのではないかと思います),特に学部生の方がチャレンジする機会としてはとても優れたものだと思います。もちろん,修士論文等,専門家の部に応募するのもとてもオススメです。錚々たる先生方に読んでいただけるだけでも,本当に貴重な機会だと思います。

 受賞によりいただいたガッツを活かして,今後とも研究を頑張って参ります。12月に学会報告を控えているので,まずはそれに向けて,寒さに負けず,ガリガリ書いていきたいと思います。


(2018/3/30追記)
当該論文ですが,下記の「税に関する論文」を主催されている納税協会連合会のウェブサイトで公開されました。ぜひご笑覧くださいませ。
https://www.nouzeikyokai.or.jp/files/pdf/ronbun/2017_13/13-01.pdf
(pdfにつき注意)

*1:第5版の55~58頁参照。

*2:なお,写真は撮ったのですが,あまり撮るのが上手くないのでアップロードしません。ご容赦ください。

10月振り返り

 前回の投稿(租税法学会大会)以降で,10月中にあった研究関連の出来事を振り返りたいと思います。

1.日本税法学会中部地区研究会
 10/14(土),日本税法学会の中部地区研究会に参加して参りました(ちなみに私は関東地区の会員です)。
 研究会では,まず,税理士の富永先生が重加算税の賦課要件をめぐる最高裁判例および国税不服審判所裁決について発表されました。次に,私の指導教員である三木先生が,交際費等の損金不算入規定(租特61条の4)該当性について争われた裁判例(福岡地判H29.4.25)について発表されました。
 富永先生の発表は,重加算税の賦課要件について司法上の判断に揺れがあることを指摘されており,非常に勉強になりました。三木先生については,日頃より様々な形でお話はうかがっているのですが,研究報告という形でお話を拝聴したのはかなり久しぶりでした。上記判決の意義について考察されていて,参考になりました。
 中部地区の皆さま,発表者の先生方,お邪魔いたしました。ありがとうございました。

2.関西租税法若手研究会
 10/22(日),以前より参加している関西租税法若手研究会に参加しました。
 台風が接近していたので,開始時間および終了時間を早めていただきました。おかげさまで,無事帰ることができました(夜には止まった新幹線もあったようです)。主催の小塚先生および奥さま,お気遣いいただき,誠にありがとうございました。
 研究会では,まず,岡山大の小塚先生が,もうすぐ投稿される原稿について発表されました。未発表の原稿ですので詳細は書きませんが,租税回避規制を出発点として,租税立法のあり方全体について重要な示唆を与える論稿でした。
 次に,名古屋大博士後期課程の本部さんが,博士論文の概要について発表されました。本部さんは,以前の投稿にも書いたとおり,租税回避についての一般的否認規定(GAAR)について研究をされています。既に税法学会の大会で報告するなど順調に研究を遂行されており,他大の方ではありますが私にとってもとても高くかつ良い目標になっています。博士論文の内容も,綿密な分析に基づく非常に意欲的なものでした。
 関西若手は,若手の先生方が今行っている最先端の研究に触れることができて,いつもとても勉強になっています。ありがとうございました。

3.博士論文中間報告会
 10/25(水)の夜,私の博士論文の中間報告会がございました。
 私は,債務免除益の課税問題について研究を行っています。近年最高裁判例が出るなど,非常に重要な分野です。債務免除益については,その課税理論(なぜ課税されるのか,課税所得としての債務免除益とは何か)から検討を行う必要があると私は考えており,博士論文でも,そのような検討を行う予定でおります。
博士論文の検討の出発点となるような検討は既に修士論文でしているのですが(こちらこちらからダウンロードできます),「わかりにくい」という指摘を指導教員をはじめ学内学外問わず多くの方から受けており,中間報告会でも同様の指摘が相次ぎました。
 債務免除益課税という分野がそもそも(規定で定められている部分が少なく,解釈を行う余地が多くある等のことにより)わかりにくいのかもしれませんが,難しいことを明快な論理でいかに整理できるか,というところが研究者として求められていることなのだろうと思います。博士論文の段階でどこまで噛み砕くことができるかはわかりませんが,今後とも精進せねばならないな,と反省しました。
 もっとも,反省する点ばかりではなくて,博士論文の構成や現在の進捗を再確認し,参考文献を整理できたのは,非常に大きな進歩でもありました。
ご臨席いただいた先生方,大変お忙しい中,ありがとうございました。

 10月は,租税法学会の大会に始まり,博士論文の中間報告会まで,研究について大きな刺激を受けた1ヶ月でした。来月からは,いただいたものを活かして,自分の研究成果を精力的に公開して参りたいと思っています。「来月から本気出す」というといかにも何もしない感じですが,本当に本気を出して,頑張りたいと思います。