前回の投稿(租税法学会大会)以降で,10月中にあった研究関連の出来事を振り返りたいと思います。
1.日本税法学会中部地区研究会
10/14(土),日本税法学会の中部地区研究会に参加して参りました(ちなみに私は関東地区の会員です)。
研究会では,まず,税理士の富永先生が重加算税の賦課要件をめぐる最高裁判例および国税不服審判所裁決について発表されました。次に,私の指導教員である三木先生が,交際費等の損金不算入規定(租特61条の4)該当性について争われた裁判例(福岡地判H29.4.25)について発表されました。
富永先生の発表は,重加算税の賦課要件について司法上の判断に揺れがあることを指摘されており,非常に勉強になりました。三木先生については,日頃より様々な形でお話はうかがっているのですが,研究報告という形でお話を拝聴したのはかなり久しぶりでした。上記判決の意義について考察されていて,参考になりました。
中部地区の皆さま,発表者の先生方,お邪魔いたしました。ありがとうございました。
2.関西租税法若手研究会
10/22(日),以前より参加している関西租税法若手研究会に参加しました。
台風が接近していたので,開始時間および終了時間を早めていただきました。おかげさまで,無事帰ることができました(夜には止まった新幹線もあったようです)。主催の小塚先生および奥さま,お気遣いいただき,誠にありがとうございました。
研究会では,まず,岡山大の小塚先生が,もうすぐ投稿される原稿について発表されました。未発表の原稿ですので詳細は書きませんが,租税回避規制を出発点として,租税立法のあり方全体について重要な示唆を与える論稿でした。
次に,名古屋大博士後期課程の本部さんが,博士論文の概要について発表されました。本部さんは,以前の投稿にも書いたとおり,租税回避についての一般的否認規定(GAAR)について研究をされています。既に税法学会の大会で報告するなど順調に研究を遂行されており,他大の方ではありますが私にとってもとても高くかつ良い目標になっています。博士論文の内容も,綿密な分析に基づく非常に意欲的なものでした。
関西若手は,若手の先生方が今行っている最先端の研究に触れることができて,いつもとても勉強になっています。ありがとうございました。
3.博士論文中間報告会
10/25(水)の夜,私の博士論文の中間報告会がございました。
私は,債務免除益の課税問題について研究を行っています。近年最高裁判例が出るなど,非常に重要な分野です。債務免除益については,その課税理論(なぜ課税されるのか,課税所得としての債務免除益とは何か)から検討を行う必要があると私は考えており,博士論文でも,そのような検討を行う予定でおります。
博士論文の検討の出発点となるような検討は既に修士論文でしているのですが(こちらとこちらからダウンロードできます),「わかりにくい」という指摘を指導教員をはじめ学内学外問わず多くの方から受けており,中間報告会でも同様の指摘が相次ぎました。
債務免除益課税という分野がそもそも(規定で定められている部分が少なく,解釈を行う余地が多くある等のことにより)わかりにくいのかもしれませんが,難しいことを明快な論理でいかに整理できるか,というところが研究者として求められていることなのだろうと思います。博士論文の段階でどこまで噛み砕くことができるかはわかりませんが,今後とも精進せねばならないな,と反省しました。
もっとも,反省する点ばかりではなくて,博士論文の構成や現在の進捗を再確認し,参考文献を整理できたのは,非常に大きな進歩でもありました。
ご臨席いただいた先生方,大変お忙しい中,ありがとうございました。
10月は,租税法学会の大会に始まり,博士論文の中間報告会まで,研究について大きな刺激を受けた1ヶ月でした。来月からは,いただいたものを活かして,自分の研究成果を精力的に公開して参りたいと思っています。「来月から本気出す」というといかにも何もしない感じですが,本当に本気を出して,頑張りたいと思います。