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税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

日本租税理論学会研究大会

 12/22(土)から23(日)にかけて,日本租税理論学会第30回研究大会に参加して参りました。会場は,大東文化大学の大東文化会館でした。
 前回の大会については,昨年書いた下記記事を参照。
taxfujima.hatenablog.com

 1日目は,2件の一般報告およびシンポジウムの第1部が行われました。
 まず,白鴎大学法学部の石村耕治先生が,「トランプ税制改革:私立大学内部留保課税の導入」と題した一般報告をされました。いわゆるトランプ税制改革*1によって導入された私立大学の内部留保に対する課税について,所得課税における内部留保に対する課税全般から丁寧に解説してくださいました。
 その後,大東文化大学の浅野先生が,「租税立法と法理論」と題した一般報告をされました。租税法規の立法政策について,憲法上どのような理論的制約や根拠があり得るのか,という点を議論されていました。
 シンポジウム第1部は,「わが国税制改革の課題」と題し,3件の研究報告が行われました。
 まず,名城大学の伊川先生が,「わが国の所得税の現状と課題」と題した報告をされました。雑所得(所得税法35条)という所得分類の範囲が「拡大」してきていることや,「家族」のあり方が多様化している現状において,人的控除等の税法上の制度がどのように対応してきているのかという点を論じていました。
 次に,立正大学の長島先生が,「法人税法22条の2の検討」と題した報告をされました。平成30年度税制改正*2によって新設された法人税法22条の2の意義およびその問題点について論じていました。
最後に,愛知大学の木村先生が,「相続税の性格の再検討」と題した報告をされました。相続税の課税根拠や,生保年金二重課税訴訟*3等を根拠に近年盛んに論じられている相続税と譲渡所得課税の二重課税の問題*4について,議論を整理したうえで自身の考えを論じていました。

 2日目は,シンポジウム第2部「各国の税制改革の動向」について,3件の研究報告が行われました。
 まず,立命館大学の河音先生が,「トランプ税制改革(2017年減税・雇用法)の特徴と課題」と題した報告をされました。トランプ税制改革について,その国際課税の側面を中心に論じていました。トランプの特異性はあるものの,むしろそれ以前の議論と連続する改正という側面もあると論じられている点が印象的でした。
 次に,税理士の一由先生が,「英国における法人税改革と我が国の法人税」と題した報告をされました。マーリーズ・レビューが英国の法人課税に与えた影響を整理したうえで,日本の法人税制について得られる示唆を論じていました。
 最後に,立命館大学の安井先生が,「ドイツにおける近年の企業税改革について」と題した報告をされました。ドイツにおける2008年の税制改正によって企業税がどのように改正されたのか論じたうえで,それに対する学会等の評価やご自身の関心である欠損金の繰越制度が受けた影響を論じていました。
 2日目は,その後,シンポジウム第1部および第2部についての質疑応答も行われました。

 個人的には,そろそろ博士後期課程の研究をまとめる段階に入ってきて,次の研究テーマをどうしようか考えています。そんな中で,多様な論点について議論された今回の学会は非常に興味深かったです。
 簡単ですがこんなところで。昨年の報告内容の一部を研究叢書に掲載していただいたようですので,掲載されたことを確認し次第書くと思います。年内に書くブログ記事はそれで最後だろうと思います。

*1:Tax Cuts and Jobs Act of 2017, Pub. L. 115–97, 131 Stat. 2054 (2017).

*2:平成30年法律第7号。

*3:最判平成22年7月6日民集64巻5号1277頁。

*4:東京高判平成25年11月21日税資263号順号12339など参照。