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税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

東京地方税理士会マルチメディア研修収録

 本日,東京地方税理士会の税理士会館にて*1,私が講師を担当する動画による研修(マルチメディア研修)の収録がありました。テーマは「債務免除益をめぐる所得税法上の諸問題」でした。

 拙著『債務免除益の課税理論』の議論をベースとして,裁判例の動向を中心に,債務免除益課税について所得税法上争われることが多い論点を扱いました。

www.keisoshobo.co.jp

 まず,拙著で議論の出発点とした事業再生税制の解釈論を論じました。具体的には,平成17年仙台高判*2,平成24年大阪地判*3,平成29年広島高判*4を取り扱いました。平成30年6月4日の文書回答事例も取り上げました*5
 次に,債務免除益の所得分類を論じました。具体的には,平成27年最判*6,平成28年東京高判*7,平成30年東京地判*8を取り扱いました。平成30年東京地判については,下記の判例研究を参照。

taxfujima.hatenablog.com

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 最後に,近時の事例である令和5年東京地判を取り扱いました*9。争点(5)として争われた経費控除の論点と,争点(1)として争われた債務免除益の存否の論点をいずれも扱いました。TAINSだよりの判例研究やそれをもとにした先月の弁護士会研究会での報告と重なるところですが,その後に争点(1)について判例研究をまとめて下記のようにドラフトを公開しているので,こちらの研究成果も反映しました。

taxfujima.hatenablog.com

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 5時間の動画収録ということで,5時間も人の前で話したのが人生でおそらく初めてだったので,とても緊張しながら準備を進めてきました。ただ,東地会の先生方が温かく見守ってくださったこともあり,リラックスしながら収録をすることができました。債務免除益課税という領域の魅力をどの程度伝えられたのかは自信がないのですが,何とか無事に終えることができて,今はホッとしています。
 収録内容は,いずれ日税連にも提供されて,全国の税理士の先生方がご覧いただけるようになる…という話だったかと記憶しています。東地会所属の先生方はもちろんのこと,他会所属の先生方も,ぜひご笑覧いただき,様々にご意見などいただけたら幸いです。
 まだ来週にオンライン会議もあるのですが,人前で話したり文章をガリガリ書いたりという意味では今日が「仕事納め」と言ってよかったかと思います。最後に重い仕事でしたが,今は幸せな開放感に包まれています。東地会の皆さま,重ね重ね,私のような未熟者をお招きいただきありがとうございました。今後とも色々と機会をいただけたら幸いです。

*1:先月のプレゼン大会以来の税理士会館でした。プレゼン大会の記事として,こちらを参照。

*2:仙台高判平成17年10月26日税資255号10174

*3:大阪地判平成24年2月28日税資262号11893。pdfにつき注意。

*4:倉敷青果荷受組合事件差戻控訴審判決(広島高判平成29年2月8日民集72巻4号353頁)。pdfにつき注意。

*5:平成30年6月4日付文書回答事例「特定調停スキーム(廃業支援型)に基づき債権放棄が行われた場合の課税上の取扱いについて」

*6:倉敷青果荷受組合事件第一次上告審判決(最判平成27年10月8日集民251号1頁)。

*7:東京高判平成28年2月17日税資266号順号12800

*8:東京地判平成30年4月19日判時2405号3頁

*9:東京地判令和5年3月14日(判例集等未登載,TAINSコードZ888-2487)。