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税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

ケースブック租税法[第6版]をご恵贈いただきました。

 著者の先生方より,先日公刊された『ケースブック租税法』の第6版をご恵贈いただきました。

www.koubundou.co.jp

 この書籍は,いわゆるケース・メソッドによる税法の授業のために,主にロースクールの講義での活用を主眼として書かれた書籍です。基礎理論,所得税,法人税ならびに相続税および贈与税について,重要判例を中心に様々な重要文献を交えながら書かれています。
 第5版から様々な議論が付け加わっていますが,個人的な関心との関係でいえば,債務免除益課税について多くの判例裁判例が追加されていた点を興味深く感じました。具体的には,債務免除益に係る源泉徴収義務と錯誤の問題が争われたクラカグループ事件第二次上告審判決や*1,債務免除益の所得分類が争われた航空機リース組合債務免除事件*2,同じく債務免除益の所得分類が争われた赤堀農協債務免除事件などが*3,新たに追加されています。クラカグループ事件と航空機リース組合債務免除事件は所得分類に関する議論として拙著『債務免除益の課税理論』で取り上げましたし*4,赤堀農協債務免除事件は税法学582号と月刊税務事例51巻8号に判例研究を書いています*5。このように,債務免除益課税という分野について議論が盛んになってきていることを,この本の改訂から改めて実感しました。
 個人的な体験としても,博士課程の1年か2年の頃に,今は閉じてしまった青学のロースクール(法務研究科)で木山泰嗣先生が開講していた租税法の講義を許可を得て聴講していたことがあり,その際のテキストが『ケースブック租税法』でした。時期からいっておそらく第4版だったかと思います。そういった意味で,私はロースクールに通ったことはないのですが,この本は懐かしい思い出のある本です。
 拝読してまた勉強しつつ,学生の教育にも活かしていきたいと思います。ありがとうございました。

*1:最判平成30年9月25日民集72巻4号353頁。なお,私は「倉敷青果荷受組合事件」と呼んでいます。また,第一次上告審判決(最判平成27年12月8日集民251号1頁)は第5版の頃から収録されていました。

*2:東京高判平成28年2月17日税資266号順号12800

*3:東京地判平成30年4月19日判時2405号3頁

*4:拙著『債務免除益の課税理論』(勁草書房,2020年)202~239頁参照。

*5:こちらこちらの記事を参照。