What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

判例研究が,月刊税務事例51巻8号に掲載されました。

 先日公刊された月刊税務事例51巻8号に,拙稿「不動産所得および一時所得の意義または範囲―東京地判平成30年4月19日裁判所ウェブサイト―」が掲載されました。
 6月に,アコード租税総合研究所判例研究会で行った報告を原稿にまとめたものです。報告時のブログ記事については下記を参照。
taxfujima.hatenablog.com

 報告から何と2ヶ月足らずで掲載していただきました。アコード租税総合研究所の皆さまおよび財経詳報社の皆さま,誠にありがとうございます。

 タイトルどおり,東京地判平成30年4月19日の判例研究になります。当該判決の判示のうち,不動産所得と一時所得の要件の解釈論について述べた部分を論じています。
 この判決は,今回論じた所得分類の解釈論のほか,債務免除益の課税理論についてかなり積極的な判示をしています。こちらについても,いずれ判例研究を公表する予定です。
 ご笑覧いただけますと幸いです。

(2019/12/2追記)
 上記の「いずれ……公表する」予定だった判例研究ですが,税法学582号に掲載されました。ぜひご笑覧ください。
taxfujima.hatenablog.com

中村芳昭「公益財産寄附税制」の参考資料を執筆しました。

 先日公刊された青山ローフォーラム8巻1号に,中村芳昭先生が「公益財産寄附税制―その寄附控除要件の日米比較―」という研究ノートを執筆されています。
 これは,2016年度に開催していた青山学院大学大学院法学研究科アメリカ税法研究会の成果報告として執筆されたものです。当時の研究会に関する記事として,下記を参照。

taxfujima.hatenablog.com

 当該研究ノートの参考資料として,私が日本の裁判例をまとめています(青山ローフォーラム8巻1号(2019年)151~164頁)。
 3年前に作った研究会の資料を(誤字等を修正のうえで)そのまま載せたものです。資料の注1に書きましたが,その後に税制改正もあったので,今どの程度意味がある資料かは正直なところあまりわからないのですが,中村先生の研究ノートの一助となっていれば良いな,と思います。ぜひご笑覧いただけますと幸いです。
 また,他に,米国の裁判例の資料も参考資料として載っています。上記のブログ記事にも書きましたが,日本では考えられないような裁判例がたくさんあるので,読んでみると面白いだろうと思います。
 リポジトリ公開などがされたら,また追記します。

(2019/9/24追記)
 下記のとおり,当該原稿がリポジトリ公開されました(中村先生の研究ノート全体で1つのファイルになっています)。ぜひご笑覧ください。
www.agulin.aoyama.ac.jp

第7回若手法学研究者フォーラムの集い

 昨日,第7回若手法学研究者フォーラムの集いが開催されました。今回,引継ぎを兼ね,早稲田大学の吉田朗さんとともに,主催のぱうぜ先生を事務的にお助けすることになりました。研究会をどう開催するか,経験を積むことができました。ありがとうございました。
 昨年の記事については下記を参照。

taxfujima.hatenablog.com


 今回の「集い」では,研究報告が3本行われました。その後,研究ハックフォーラムの集いも行われました。
 まず,研究報告の1本目として,日本学術振興会特別研究員(PD)の宍戸聖さんが,ご自身の博士論文を概観する報告をされました。宍戸さんは,経済法,特に独占禁止法の研究をされている方です。今回は,日・米・欧の3点を比較するダイナミックな研究を,コンパクトに,かつ様々な視点の特徴を明らかにしながら報告されていました。
 宍戸さんは,私の修士課程(博士前期課程)の同期であり*1,(向こうがどう思っているかはわかりませんが)私にとってはとても大切な,同志ともいうべき友人です。そんな友人が素晴らしい報告をしていて,とても刺激を受けました。
 その後,私が,クラウドファンディング(Crowdfunding,CF)と課税についての報告をしました。今年,同テーマで学会報告を行う予定であり,その前提として,日本法の状況と問題関心を明らかにするような報告をしました。スライドを↓に置いておきます。ご笑覧いただけますと幸いです。
https://drive.google.com/open?id=1eHR3iLKEcQW71TbFnF5Dmu4AI5WK_XDLdrive.google.com

 研究報告の最後として,一橋大学大学院法学研究科博士課程後期課程の乾直行さんが,ご自身の修士論文を概観する報告をされました。
 乾さんは,修士課程を出た後,予備試験および司法試験に合格し,修習を経てから博士課程に入学された,かなり異色の経歴を持つ方です。刑事訴訟法をご専門にされていて,特に,本人以外から捜査機関が捜査の情報を取得する場合の法的規律について関心を持たれています。私はなかなか刑事訴訟法の議論に触れることは無くて,何となくハードルが高いイメージがあるのですが,とても身近かつ自分にも起こりそうな話をしていて,とても勉強になりました。議論もとても盛り上がっていました。

 その後の研究ハックフォーラムでは,色々な議論が交わされました。
 特に,「法学研究って結局なんなの」という根本的な問いをめぐる議論は非常に刺激的であり,自分のやっていることを改めて顧みることができました。
 色々とオフレコな話もあったかと記憶しているので,ここまでにとどめておきたいと思います。気になる方はぜひフォーラムへの参加をご検討くださいませ!

 若手法学研究者フォーラムは,税法以外の集まりで私が唯一参加している集まりです。今回も,経済法などの私法や刑事法の議論に触れることができ,また研究の方法についても議論をすることができ,視野を広げてもらえる大切な集まりだな,と感じています。今回は事務的なことと報告で携わりましたが,今後とも,何かできることがあればやっていきたいと思っています。

*1:宍戸さんは,博士課程は京都大学大学院法学研究科に進学されました。

ディベート審査員

 昨日,立正大学の長島弘先生のゼミと,東洋大学の金子友裕先生ゼミのディベート対抗戦に,審査員としてお招きいただきました。
 私のような若輩者をお招きくださり,誠にありがとうございました。

 当該対抗戦では,いわゆる馬券札幌事件上告審判決*1を素材にディベートが行われました。
 言わずと知れた,所得分類や必要経費など,所得税法の根幹が関わる事案です。また,類似する事案の判決(馬券大阪事件上告審判決*2)もあるわけですが,当該判決やその後の通達改正も関わって,議論するのがなかなかに難しい事案です。当該ディベートでは,そんな事案について,ポイントを絞った上で,白熱した議論が行われていました。
 両ゼミとも,まだディベートを始めてそこまで年数が経っていないとのことでしたが,そんなことは微塵も感じさせない堂々たる試合ぶりでした。とても勉強になりました。

 先日の学内のディベート大会でも書きましたが(下記記事参照),ディベートはやはり楽しいし今後とも携わっていきたいな,と感じました。
taxfujima.hatenablog.com


 簡単ですが,こんなところで。

大学院ディベート大会

 昨日,母校である青山学院大学大学院法学研究科税法専攻*1のディベート大会がありました。私は,審査員およびディベーターとして関わりましたので,関わった部分について,記録を残しておきたいと思います。
 昨年度の記事は,下記参照。

taxfujima.hatenablog.com

 まず,第2試合,学部木山ゼミ v. 大学院M1の試合の審査員をしました。
 多くの場合,特定の裁判例を素材としてディベートは行われます。この試合では、金地金の保管契約と譲渡所得課税の有無が争われた判決*2が素材となりました。
 この判決は短めの判決ではあるのですが,なかなか奥深い判決でした。当該事件では,「資産の譲渡」(所得税法33条1項)があったかどうかが争われたのですが,所得分類の問題というよりも,所得がそもそも生じたかどうかという本来ならば所得税法36条や7条の解釈論として議論されそうな点が議論されていました。この議論の背景には,実現と所得概念という所得課税の本質的な問題があるように思いました。実際,原審*3と判断が分かれているあたり(原審は納税者敗訴,控訴審は納税者勝訴でした),かなり微妙な事案であったとも思います。
 そんな魅力的な素材でしたが,実際のディベートにおいても,両チームともにしっかりとしたストーリーのある議論をして,素材の魅力を十二分に引き出せていたように思いました。大変勉強になりました,ありがとうございました。

 その後,第4試合において,院生OBチームの一員として,大学院M2チームと対戦しました。
 事案は,有名なデンソー事件*4でした。CFC税制(タックスヘイブン対策税制,外国子会社合算税制。租税特別措置法66条の6)の適用除外要件充足の有無が争われた判決です。
 デンソー事件は,昨年,後輩の研究との関連で勉強したのですが,(判決が出たばかりで評釈があまりなかったこともあり)なかなか良くわからない判決だな,という印象を持っていました。ただ,今回ディベートをするにあたってOBの皆さまと一緒に勉強をして,うっすらながら何が言いたかった判決なのか理解できたような気がしました。おそらく,株式の保有や地域統括業務がどうこうよりも(この点は原審の判断を否定することで十分だということなのかもしれませんが),「主たる」の判断方法に力点のある判決なのだろう,と思いました。
 実際のディベートは,反省点も残るものになりました。M2の方々がしっかりと事実関係を踏まえた議論をしてきたのに対し,OB側はどちらかといえば解釈論をメインに据えた議論をしたので,議論が噛み合わない場面もあったように思いました。ただ,規定も事実関係もそこそこ込み入っている事案について,しっかり整理したうえで一貫した議論をお互いに定立できたことは,それだけで価値があることだったと思います。実際,(準備を含めた)ディベート大会への取り組みを通して、デンソー事件についての理解はチーム全体で深まったように感じました。
 CFC税制の適用除外要件における主たる事業の判定については,最近も訴訟が提起されるなど*5,デンソー事件最判を前提として,まだまだ議論がされていく領域なのだろうと思います。今回のディベートで培った理解を活かして,注視していきたいと思います。

 ディベートという営みに,私は愛着を持っています。以前書きましたが,博士後期課程へと進学するきっかけになったのはまさに5年前の院生ディベート大会でしたし,その後も様々な形で関わってきました。事案について理解が深まったり,法的思考を実践できたり,一緒にディベートをした仲間と仲良くなったり,(大変なこともありますが)色々なメリットがある営みだと思います。今後とも,何らかの形で税法のディベートに関わっていけたらな,と思っています。

*1:青学法学研究科で税法を専攻している学生は,公法専攻(昼間の大学院)とビジネス法務専攻(夜間大学院)に分かれているので(受ける教育は多くの部分で共通していますが),便宜的にこう総称します(ちなみに私は公法専攻の博士前期課程および博士後期課程の修了生です)。大学院としての正式な名称ではありません。

*2:名古屋高判平成29年12月14日税資267号順号13099。

*3:名古屋地判平成29年6月29日税資267号順号13028。

*4:最判平成29年10月24日民集71巻8号1522頁。

*5:サンリオに関する報道として,こちらを参照。