What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

アメリカ税法研究会

 昨日,青山学院大学大学院法学研究科アメリカ税法研究会が開かれました。
 1年強ぶりの開催となりました。前回研究会については,下記参照。
taxfujima.hatenablog.com

 今回の研究会では,西武文理大学の道下知子先生が,米国の給付付き税額控除であるEITCについて近時唱えられる改革案をまとめ,ご報告されました。
 道下先生は,私の姉弟子筋にあたる先生です。EITCについての米国の議論について研究されています(例えば,こちらの論文を参照)。給付付き税額控除制度については,米国のEITCについてしばしば指摘される不正な還付が問題として指摘されますが,そんな米国の状況などについてご研究されています。
 今回のご報告も,EITCの不正還付の問題などにつき,近時議論されている改革案を整理されたものでした。今後論文を公表される予定とのことなので詳細は書きませんが,大変勉強になりました。道下先生および私の師匠である三木義一先生も出席されて,大変充実した研究会になりました。

 私は,先月の学会報告が終わり,正直なところ研究が疎かになっていたように思います。道下先生のご報告を聞いて,私も頑張らねばならないな,と気持ちを新たにしました。

(追記)
 明けましておめでとうございます。本ブログを今年も何とぞ宜しくお願いいたします。すみません,書き忘れました。

『国際租税法[第4版]』をご恵贈いただきました。

 東京大学の増井良啓先生より,今月発売された『国際租税法』の第4版を賜りました。

 書籍の詳細は下記参照。
www.utp.or.jp

 書籍については,今さら私ごときが述べるまでもないかもしれません。増井先生と,最高裁判所の判事になられた宮崎裕子先生の共著による,定評のある国際租税法についてのテキストの最新版です。総論的な部分(1,2章),インバウンド取引と課税(3~6章),アウトバウンド取引と課税(7~11章),応用(12章)の4つの部分に分け,個別の制度について,一貫した理論に基づき丁寧かつ簡潔な説明がなされています。
 私は,これまで主に国内法の問題を論じており,国際租税法について議論する機会はそこまで多くはないのですが,それでも必然的に触れる機会はあります。その際に,まず依拠できる信頼できるテキストがあることは,大変幸運なことである,といつも感じています。ぜひ読んで勉強したいと思います。ありがとうございます!

 増井先生は,以前『租税法入門』もくださいました(こちらの記事を参照)。お目にかかったことはあまりないのですが,私のようなしがない者に目をかけてくださり,大変ありがたく感じます。お話しをする機会もそう無い,「雲の上」の方ではあるのですが,いつかお礼を申し上げたいと思っています。今後とも何とぞご指導ご鞭撻のほどを宜しくお願いいたします。

日本租税理論学会研究大会(初めてのシンポジウム報告)

 一昨日および昨日(12/7,8),愛知大学名古屋キャンパスで行われた日本租税理論学会第30回大会*1に参加して参りました*2
 昨年の記事として,下記参照。
taxfujima.hatenablog.com

 今回の大会では,2件の一般報告,1件の講演,5件のシンポジウム報告が行われました*3
 まず,一般報告として,日本大学の阿部徳幸先生が,「韓国における納税者権利保護の動向」と題する報告をされました。日本ではまだ制定されていない納税者権利憲章について,韓国における立法や運用の動向を報告されていました。
 次に,大東文化大学の髙沢修一先生*4,「東アジアの儒教的経営と不正会計」 と題する報告をされました。東アジア,主に韓国の大企業の経営と儒教の関係性を議論されていました。

 講演は,名古屋市立大学の伊藤恭彦先生による,「タックス・ジャスティス―税の規範学―」というものでした。伊藤先生は,マーフィーおよびネーゲルの著作の翻訳や,ご自身の著作など,正義論の観点から税のあるべき姿について検討されている方です。実務誌である税務弘報においても,「タックス・ジャスティス入門」という連載をされています。今回は,伊藤先生のお考えのエッセンスについてお話ししてくださいました。
 
 今回のシンポジウムのテーマは,「租税上の先端課題への挑戦」というものでした。私は,関西大学の鶴田廣巳先生の「プラットフォーマーとデジタル課税」,千葉商科大学の泉絢也先生の「仮想通貨(暗号資産)取引と課税」,日本大学の本村大輔先生の「シェアリングエコノミーと課税」,立命館大学の望月爾先生の「デジタル化・グローバル化と納税者権利保護―税務行政のデジタル化とデータ保護を中心に―」と並んで報告の機会を賜り,「クラウドファンディング(Crowdfunding, CF)に対する課税―寄附型CFに関する実体法における問題点を検討対象として―」と題する報告をしました。
 一般報告については,2年前の租税理論学会大会で機会をいただいたのですが(こちらの記事参照),シンポジウム報告を行うのは今回が初めてでした。錚々たる先生方のご報告に比べると,当然ながら拙く,またダイナミックさには欠ける報告でした。ただ,自分のできる範囲でのことはしっかりできた,関心や意見は明示できた報告だったかな,とは考えています。内容としては,寄附型CFにつき,個人が一定の法人に対して行ったものについて寄附金控除が認められるべきかという点と,個人から個人が受けたものについて贈与税が課されるべきか所得税が課されるべきかという点を議論しました*5
 7日に報告,8日に質疑応答があったのですが,質疑応答では,大変勉強になる質問を数多くしていただきました。詳細は学会誌(租税理論研究叢書)に掲載されるかと思いますのでここでは控えますが,今後の課題を数多く見出せる,とても勉強になる機会でした。ご質問いただいた先生方,誠にありがとうございました。

 今回の報告は,正直なところ,私のような未熟者でもしっかりとできるのか不安に思いながら準備をしてきました。ただ,結果としては,自分の議論をある程度展開しつつ,研究を進める過程や質疑応答をとおして今後の研究にも繋がる,非常に有意義な機会となりました*6。今後しばらくの大きな研究テーマも,朧気ながら見えてきました。
 このような有意義な結果が得られたのは,私自身によることよりも,途中で報告の機会を何度か与えていただいたこと,そこで得たフィードバックによって報告を練ることができたことによる面が大きいです。途中でいただいた報告の機会については,下記の記事を参照。いずれの機会においても,出席いただいた先生方やご質問いただいた先生方,誠にありがとうございました。

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 また,報告にあたり,アカデミスト㈱の大塚美穂さまには,CF取引の実際のところについて,色々とご指導を賜りました。弊学名誉教授の中村芳昭先生にも,(いつもながら)報告内容についてご指導を賜りました。ありがとうございました。
 以上のように,様々な方のお助けを得ながら,何とか,初めてのシンポジウム報告を行うことができました。今後とも精進を重ねていきたいと思います。

*1:こちらの日本租税理論学会会報第59号を参照。

*2:なお,大会終了後,9月に研修としてお話しさせていただいた名古屋青年税理士連盟研究部の先生方にお招きいただき,その後の研究の進行状況について議論させていただきました。ありがとうございました。

*3:報告のレジュメは,全て学会のウェブサイトにアップロードされています。こちらを参照。

*4:髙沢先生は,今回の大会をもって事務局長を退任されました。これまで大変お世話になりました。ありがとうございました。

*5:詳細は,前掲注(3)に上がっている私のレジュメを参照。アップロードしていただき,ありがとうございます。

*6:今回の報告に当たっては,立命館大学の望月先生に,報告希望を出すよう勧めていただくなど大変お世話になりました。ご自身のご報告もあるなか,ありがとうございました。今後とも何とぞご指導ご鞭撻のほどを宜しくお願いいたします。

判例研究が,税法学582号に掲載されました。

 先日公刊された税法学582号に,拙稿「借入金に係る債務免除益の所得分類の判断構造」が掲載されました(175頁)。
 今年2月の関東地区研究会での報告を載せていただいたものです。報告時の記事については,下記参照。

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 内容としては,東京地判平成30年4月19日裁判所ウェブサイトの判例研究になります。当該判決については,既に月刊税務事例51巻8号に判例研究を載せていただいていますが(下記記事参照),月刊税務事例で取り上げた部分とは別の判示について論じています。

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 まず,私のような未熟者の原稿を,伝統ある税法学に載せていただき,ありがとうございます。大変光栄に存じます。
 今回論じた判示は,債務免除益課税について,おそらく日本の裁判例のなかで現状一番踏み込んで論じたものだと思います。この分野を研究してきた者として,(個人的にはそのような考え方は批判してきた対象ではあるのですが)ようやくここまで来たのだな,と感じます。
 ただ,少し踏み込みすぎて,理論の使い方(あてはめ)は間違っている(無理な検討をしてしまっている)と評価しています。間違った使われ方が残るのではなくて,判示が残っていってくれると嬉しいな,と考えています。
 博士後期課程でしてきた研究を具体的な判決に即して展開したような判例研究になります。ぜひご笑覧いただけますと幸いです。

 また,第109回大会で片山先生にした質問も,議事録に載せていただいています(228~229頁)。片山先生,不躾な質問にご対応くださり,誠にありがとうございました。

(2023/6/10追記)
 こちらの判例研究ですが,日本税法学会のウェブサイトにpdfファイルを公開していただいています。

zeihogakkai.com

 ご笑覧を賜れますと幸いです。

日本税法学会関東地区研究会報告

 少し遅くなりましたが,先週の金曜日(11/8),日本税法学会第454回関東地区研究会にて,報告の機会を賜りました。
 今年2月に続いて,貴重な機会をいただき,誠にありがとうございました。2月の記事については,下記参照。
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 今回は,「クラウドファンディング(Crowdfunding, CF)に対する課税―寄附型CFに関する実体法における問題点を検討対象として―」と題した報告をしました。7月の若手法学研究者フォーラムから続く問題関心を報告したものです。7月の記事については,下記参照。
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 今回の報告では,上記の若手法学研究者フォーラムで報告した日本法の状況および問題関心を前提に,米国法についての議論を参照して,比較法的検討を行いました。色々なご意見やご指導を賜り,大変参考になりました。ご参加いただいた先生方,誠にありがとうございました。
 今回いただいたご示唆を踏まえて,来月行われる日本租税理論学会第31回研究大会において,報告をする予定でおります。当該大会のプログラムについては,下記参照。
j-ast.sakura.ne.jp

 学会報告に向けた課題としては,米国法の議論から得られる示唆についてまとめることはもちろんなのですが,クラウドファンディングの実際(契約内容や実態)があまり把握しきれていない点があるな,と感じました。あまり文献も多くないな,と感じています。ただ,報告後,とあるプラットフォームに問い合わせたところ色々とメールでご示唆をいただけたほか,友人の紹介により,別のプラットフォームの方とも連絡を取ることができました。繋いでくださった方,誠にありがとうございました。
 学会報告まで1ヶ月弱,なかなか時間もないところですが,ガリガリまとめていきたいと思います。また,クラウドファンディング取引やそれに対する課税について何かご存知の方がいらっしゃいましたら,ぜひコメント欄などでご教示を賜れますと,大変勉強になり助かります。ぜひよろしくお願いいたします。