訳者の先生方より,近時公刊されたダンカン・ベントレー(中村芳昭監訳)『納税者の権利 理論・実務・モデル』をご恵贈いただきました。
この書籍は,オーストラリアの税法学の研究者であるDuncan Bentleyが2007年に書いた下記の書籍を日本語に訳したものです。
納税者の権利という概念がなぜ必要とされるのかという点に始まり,具体的な立法上の示唆に至るまで,特にオーストラリアの税務行政を念頭に置きながら,どの国の税務行政にも通じる普遍的かつ詳細な検討がされています。
納税者の権利保障については,一般に,平成23年12月の国税通則法改正で日本でも議論が進んだとされています。他方,当該改正で納税者権利憲章の制定を目指したけれどもそれが実現されなかったことをどう評価するのか,という点は,残された課題となっています。今回の訳書でも,著者による序文において,「日本が立法的にも行政的にも実施可能な納税者の権利を未だに有していないことは興味深い」*1と書かれているとおりです。
私自身は,納税者の権利保障は大事だと考えてこれまで研究を進めてきたものの,なかなか壮大なテーマなので,納税者の権利それ自体を主題とした研究はあまりできてこなかったところがあります。ただ,昨日ブログに載せた下記の論文でも論じた通り*2,これから税務行政が新たなステージに進むなかで,納税者の権利保障を改めて論じる必要性は(様々な論者が論じているとおり)高まっているのだろう,とも考えています。今回の書籍は,税務行政のデジタル化が進んでいるとされるオーストラリアのことがしばしば出てくるということもふくめ,様々な示唆をいただけるもののように思いました。
訳者のうち,監訳者である青山学院大学名誉教授の中村芳昭先生は私の博士後期課程時代の副指導教員です。訳者には,他に,日ごろからご指導を賜っている立命館大学の望月爾先生や,青山学院大学大学院法学研究科の先輩方が名を連ねています。したがって,日ごろからいただいているご指導の復習も兼ねつつ,ただ新しい知見もたくさん取り入れながら,いただいた書籍を読んで勉強を進めたいと思います。ありがとうございました。