What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

アメリカ税法研究会

 先月,アメリカ税法研究会という企画が再始動し,私もメンバーとして加わった旨をこのブログに書きました。
taxfujima.hatenablog.com

 今日,当該研究会の第2回が行われました。弊学名誉教授の中村先生より,米国の慈善寄附控除制度(内国歳入法典§170)について,(金銭以外の)現物資産の寄附に専ら着目して報告がされました。日本の現物資産の寄附に関する非課税制度(租税特別措置法40,70条)との比較検討もされていました。
 当該テーマは,2年前の第一次研究会で扱っていたものです。今回の中村先生のご報告は,第一次研究会の集大成として行われたものでした。日米の寄附文化の違い等にも話が及ぶ,大変興味深いテーマです。今の私の研究テーマ(債務免除益課税)からは若干遠いテーマではあるのですが*1,今後とも関心を持っていきたいテーマです。

 新たな参加者の方々も加わってくださり(ありがとうございました!),議論が活発に行われる,とても刺激的な研究会でした。とても勉強になりました。
短いですが,こんなところで。

*1:とはいえ,無関係ではないかな,とは思っています。日本の現物資産の寄附については,奨学金事業を絡めてスキームを組む場合が多いと聞いています。一方,私は以前の論稿で奨学金の返済減免に伴う債務免除益の課税問題について書きましたが(こちらの記事参照),平成29年度改正で,奨学金の返済減免制度を緩やかに構築できるように税制上の措置が講じられたことを当該論稿では扱いました。このように,奨学金事業を(意図してなのか結果的になのかはわかりませんが)促進しているという意味では,現物資産の寄附に関する税制と債務免除益課税に関する近時の議論は絡み合う点もあるのかな,とは思っています。

第6回若手法学研究者フォーラムの集い

 昨日,ぱうぜ先生主催の第6回若手法学研究者フォーラムの集いに参加して参りました。
 当該フォーラムについては,ぱうぜ先生が下記ブログ記事で紹介されています。僭越ながら,私のコメントも引用していただいています(ありがとうございます!)。
kaffeepause-mit-ihnen.hatenablog.jp

 また,昨年行われた第5回集いについては,当ブログに書きました。↓
taxfujima.hatenablog.com

 今回の「集い」では,研究報告が2本行われました。また,そのまま連続的に研究ハックフォーラムの集いに突入しました。
 まず,研究報告として,大阪経済大学の漆先生のご報告がありました。未定稿かと思いますので詳細は省きますが,国際課税の局面において,税法と行政法が交錯する,非常に興味深い問題関心に基づく報告をしてくださいました。
漆先生とは様々な場所でご一緒する機会があり,報告も何度か拝聴したことがあるのですが(例えば,昨年の租税法学会など),毎回異なったテーマについてクリティカルな報告をされていて,「私もあのような報告をしてみたい」といつも思います。今回も,税法の中でも先端的なテーマでありながら,(様々な法分野の専門家が集まっている)本フォーラムの出席者と議論したいフィールドを適切に設定し,活発な議論を惹起されていました。
 次に,一橋大学大学院法学研究科修士課程の森勇斗さんより,民法上の錯誤無効に関する報告がありました。
森さんは,学部は弊学法学部出身で,民事法の研究者を目指して一橋の法学研究科に進学された方です。学部時代より,弊学法学会の懸賞論文で入選されるなど,他分野の私にもお名前は聞こえていました。修士1年でありながら卓越した外国法の知識のお持ちで,非常に刺激的な報告でした。

 その後,研究ハックフォーラムでは,わかりやすい報告とは何か,という話題から,科研費の応募等の際の申請書の書き方に話が移った後,知的な生産とは何か,というとても大きな話題まで話が及ぶ,非常に壮大な議論が行われました。とはいえ,本フォーラムの趣旨に沿って,参加者の経験や実感に沿いながら議論が行われて,とても有意義でした。
 何度かこのブログにも書いたことがあるかと思うのですが,私はいつも話や文章がわかりにくいと言われます。その理由ははっきりしていて,骨と肉を切り分けて骨のみを残すことが非常に苦手だからです(とはいえ,それを自覚しているだけ,少しは成長しているのかもしれないとは思っています)。現在,私は学振の特別研究員で,当該身分を得るために申請書を出したのですが,その申請書の執筆にあたっても,この点でとても苦労しました(その際に添削をしてくださった先生方や先輩,同期には多大なご迷惑をおかけしました)。
 今回の研究ハックフォーラムでも同様のことが大事だと学んだのですが,ただ,知的な生産とは何かという普遍的なところまで話が及んだのはとても意外でした。これまで私は,本来ならば複雑な知識を単純化する,いわば,少し質を落として量産したり,本当は綺麗な映像の画質を落とす非本質的な行為として,骨と肉の切り分けを捉えていました。ただ,今回のフォーラムで,むしろ骨と肉の切り分けは知的な生産という営みの本質にも通じることだと思うようになり,とてもすっきりしました。
(わかりやすく書くことが大事だということをわかりにくく書いているかと思うのですが,ご容赦ください。)

 今回の「集い」は,弁護士の吉峯先生が場所を提供してくださいました。吉峯先生,ありがとうございました。また,主催のぱうぜ先生,大変ご多忙の中主催してくださり,本当にありがとうございました。
 最近少し研究のモチベーションが落ちていたのですが(そんなことを言っている場合ではないのですが),今回のフォーラムでとても強いモチベーションをいただきました。暑さに負けず,頑張りたいと思います。

木山ゼミゲストスピーカー

 昨日は,TA先の木山ゼミにゲストスピーカーがいらして講演してくださいました。
 昨年の記事を下に貼っておきます。昨年までは,木山先生とゲストスピーカーの方が話し合って決めたテーマに沿って,ゲストスピーカーの方に話していただく形だったように記憶しています。しかし,今年は,学部生から聴いてみたいテーマを募った上で,当該テーマに沿ってゲストの方に話していただく形でした。
taxfujima.hatenablog.com

 4限は,税理士の池本征男先生がいらして,所得税法について様々な論点をお話ししてくださいました。
 池本先生は,紹介するまでもないかもしれませんが,『所得税法』(税務経理協会)を執筆されている,所得税法のスペシャリストの先生です。指導を受けられた植松守雄先生の後を継ぎ,『注解所得税法』(大蔵財務協会)の改訂にも携わられています。
 今回は,所得税法についての基礎的な考え方について教えていただきたい,という学部生の要望に応じ,近時の税制改正や注目すべき裁判例について概説的にお話ししてくださいました。ただ,基礎的な内容を軸としつつも,ところどころ非常に興味深いお話が飛び出して来て,とても刺激的な講演でした。最前線の実務から理論的な点まで,幅広いお話をしてくださいました。

 5限は,木山先生が客員弁護士を務められている鳥飼総合法律事務所から,弁護士の山田先生および横田先生がいらして,弁護士になるまでのことおよび弁護士になってからのことをお話ししてくださいました。
 弁護士になるまでの過程は,当たり前ですが,お2人とも全く異なりました。ただ,お2人とも,どんなきっかけであれ一度決めた目標に向けて全力を尽くすことが弁護士という職業に繋がっていて,やはり目標に向けて頑張ることが大事なのだなぁ,と実感しました。
 弁護士になられてからのことについては,一言でまとめると「大変そうだなぁ」という感想を持ちました。ただ,お2人とも「これからの弁護士」像のようなものを想定しながら今働かれている旨を話されていました。日々の大変かつ重要な業務をただただこなすのではなく,将来を見据えて働かれている姿がとても印象的でした。
 私がこれから法曹を志すことはあまり考えられないのですが,それでも,とても示唆に富む講演でした。

 いただいた刺激を糧に,研究を頑張りたいと思います。3人の先生方,本当にありがとうございました。

10,000アクセス突破しました!&大学院ディベート大会

 先日,当ブログが10,000アクセスを突破しました。大体40記事ほどあるので,単純計算で250アクセス/記事ほどとなります。
 一介の大学院生が書いている無味乾燥なブログをご覧いただき,いつもありがとうございます。今後とも研究を頑張って,その記録を残していくことで,魅力的なブログにできたら良いなぁと思っております。

 さて。先日(6/9(土)),大学院のディベート大会がありました。昨年のディベート大会については,以下の記事を参照。

taxfujima.hatenablog.com

 今年は,(木山ゼミのTAに復帰したこともあり)審査員ではなく,久しぶりにプレイヤーとしてディベート大会に参加しました。研究をしていて他の試合はあまり観られなかったので(申し訳ありません),自分の試合についてだけ書きます。
 今年のディベート大会では,弊学法学研究科のOBでチームを作り,現役の方(M2)と対戦しました。テーマは,東京高判平成27年11月26日税資265号順号12760を題材に採り,当該事件において不妊症の治療のために購入したサプリメントの購入費用が医療費控除(所税73条)の対象になるかを争いました。結果としては,勝利を収めることができました。審査してくださった審査員の先生方,対戦してくださったM2の皆さま,一緒にディベートをしてくださったOBの皆さま,ありがとうございました。
 当該事案ですが,非常に興味深く,また考えさせられる事案でした。普通に考えれば,サプリメントを買っただけで医療費控除は受けられないのではないか,と思います。ただ,医療費控除制度の立法趣旨や,その後の改正,通達による実質的な拡張解釈*1等を勉強していくうちに,当該事案における医療費控除の可否は必ずしも簡単に割り切れる問題ではないと感じました。もちろん,ディベート大会で争われたのは解釈論ではあるのですが,立法論も含めて,これからの高齢化社会において一つの重大な問題となっていく分野だと思います。
 少し細かな話としては,所得税法にいう「医薬品」(所税73条2項,所税令207条2号)が果たして旧薬事法(昭和35年法律第145号,現薬機法)からの借用概念と言えるのか,という点が,当該事案を考える上で一つの大きな論点となります。控訴審判決は,この点非常に曖昧な判示をしています。私が原告側で立論を書いたのですが,そこでは,所得税法上の「医薬品」は旧薬事法とは別個の意義で解すべきである,という議論を展開しました*2。ディベートですし,役割に沿ってそう書いたのですが,自分でフラットに考えたらどうなるのかなぁ,ということを,終わった今考えてみたりしています。

 自分のことばかり書いてしまったのですが,こんなところで。
 ディベート大会で研究をする勇気と元気をたくさんいただいたので,自分の研究に邁進して参りたいと思います。雨にも負けず,頑張ります。

*1:所基通73-3参照。

*2:こちらの記事の2.の末尾で少し書いた,「規制法からの借用概念」という話です。本件はこの論点について非常に有益な材料を提供しているものと評価する先行研究として,佐藤英明「判批」TKC税研情報26巻4号(2017年)8頁参照

アメリカ税法研究会再始動

 以前,このブログに,弊学法学研究科でアメリカ税法研究会という試みをしていることを書きました。

taxfujima.hatenablog.com

 当該研究会ですが,1年間の休止を経て,今年度より第二次研究会が発足することとなりました。
 一昨年度の第一次研究会では,研究費の受給等の都合上*1,私はメンバーにはなっておらず,オブザーバーとして参加していました。しかし,再始動に伴い,学内の研究費を受給しない形となりましたので,正式なメンバーとして加えていただきました。
 昨日(5/31)に初回が行われ,私が「アメリカ税法の調べ方」という題で軽く報告を行いました。その後,今後の進め方について軽く議論が行われました。今後は,自分の研究テーマや関心がある人はそのテーマや関心について報告し,無い人はPaul Caron "Tax Stories"等の講読によって米国の基本的な租税判例に触れるということになりました。
 私は,博士後期課程での研究をまとめる段階に入っていますので,そのような方向で今後報告して参りたいと思っています。与えていただいた機会に感謝しつつ,自分の研究を推進していきます。
 オープンな研究会ではございませんので,ご希望に必ず添えるとは限りませんが,もしご興味がおありの方がいらっしゃいましたら,お気軽にお声がけくださいますと嬉しいです。

*1:現在,私は日本学術振興会の特別研究員という身分であり,科学研究費以外の研究費は学内のもの学外のもの問わず受給してはいけないこととなっています。