What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

「個人が行う現物資産の寄附に関する日米英の所得税制の比較検討」が掲載されました。

 新年度になりました。2021年度もよろしくお願いいたします。
 さて,本日発売された都市問題112巻4号に,拙稿「個人が行う現物資産の寄附に関する日米英の所得税制の比較検討 ――資産の値上がり益の取扱いおよび所得控除額を検討対象として」が掲載されました。

https://www.timr.or.jp/cgi-bin/toshi_db.cgi?mode=kangou&ymd=2021.04www.timr.or.jp


 執筆の機会を賜り,公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所の皆さま,ありがとうございました。歴史ある都市問題誌に私の原稿を掲載していただけたことを光栄に思います。
 なお,今回の執筆にあたっては,2月のアメリカ税法研究会で,論稿の内容につき報告の機会もいただきました。その際の研究会の記事として,下記参照。

taxfujima.hatenablog.com

 今回の原稿は,タイトルのとおり,金銭以外の資産(現物資産)を個人が寄附した場合の所得税制における取扱いにつき,日本,アメリカおよびイギリスの比較検討を行ったものです。日米の比較検討を行った先行研究はそれなりにありますし,私も,この論点を研究していたころのアメリカ税法研究会にオブザーバーとして参加していました。その際の成果物の参考資料も下記のように執筆しています。

taxfujima.hatenablog.com

 今回の論稿では,日米の比較検討に関する先行研究を参照したうえで,イギリス法も参照して検討を行いました。主に,所得税法78条に現物資産の寄附をどのように規定すべきか,また,租税特別措置法40条をどのように改正すべきか,という観点で議論を行いました。この点に関するイギリスの税制はかなり特殊で,興味深く勉強しました。ただ,イギリス税法を参照するのは初めてだったので,規定ぶりなど日本ともアメリカとも異なり,全体像を掴むのに苦労しました。
 イギリス法に関する部分をふくめ,全体として粗削りというかかなり表面的な検討を行った論稿だと思います。今後は,この論稿の関心の背後にある理論的なところにもっと踏み込んでいきたいと考えています。ご笑覧いただき,ご指導ご鞭撻を賜れますと幸いです。

(2021年4月6日追記)
 論文に誤記があることにご指摘を受けて気づいたので,付記しておきます。57頁左側12行目の「慈善団体から受けた便益」とは,「慈善団体が受けた便益」の誤記です。チェックが足りておらず,申し訳ありません。