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税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

『国税通則法の読み方』をご恵贈いただきました。

 青山学院大学の木山泰嗣先生より,『国税通則法の読み方』をいただきました。ありがとうございます。

www.koubundou.co.jp

 この本は,国税通則法に特化して書かれた教科書です。初学者向けの入門書でありながら体系を構築する試みもすることで(ⅱ頁参照),「独立した1つの『法』としてみた『国税通則法の姿』を描いた」(ⅲ頁)本,というコンセプトで書かれています。
 国税通則法は,タイトルのとおり国税すべてに通用するルールを定めた法律であり,射程が広くかつ重要な法律ではあるのですが*1,なかなか法律全体を体系的に論じる書籍はこれまで乏しかったように思います。租税手続法というより大きな枠組や,逆に税務調査や更正の請求,加算税,租税救済手続などの個別の論点についての書籍はありましたが,実定法としての国税通則法全般についての本という意味で言うと,木山先生の本でも引用されている品川先生野一色先生が書かれた下記の書籍が最近出版されてきている,というような状況でした。

shop.gyosei.jp

www.zeiken.co.jp

 そんななかで,体系的に充実した議論をしているこの本は,今後の議論に大きな影響を与えうる本であろうと思います。
 中身はまだあまり読めていないのですが,読みやすいように工夫がされ,国税通則法の全体像をしっかりと理解できる本であるように思いました。章末では参考文献をたくさん挙げていて,かつ本文では重要判例を引用しているため,この本を入り口に国税通則法についての学習を深められる本だと思います。ただ,無味無臭な本というわけでは全くなく,国税通則法に関心を持たれてきた木山先生のこれまでの研究が色濃く反映されているように思いました*2。たとえば,第3章には,昨年の日本税法学会大会でご報告された租税手続法独自の解釈手法についての議論が盛り込まれているように思いました*3
 以前よりこの本を書かれていることはうかがっていて大変楽しみにしていたので,いただいたことが光栄であることはもちろん,これから読んで勉強するのを楽しみにしています。お送りいただき,誠にありがとうございました。

*1:実際,司法試験の試験範囲に所得税法および法人税法とともに選ばれています。

*2:木山先生は,大学教員転身前に『税務訴訟の法律実務』を書かれているほか,大学教員になられた後は,『よくわかる税法入門』で租税手続法の部分を担当されています。

*3:「手続法分野における租税法律主義の特色 : 最高裁判決にみる救済解釈等の手続法的解釈を中心に」税法学585号(2021年)177頁参照。当該大会については,こちらを参照。