What Do We Pay for Civilized Society?

税法を勉強している藤間大順のBlogです。業績として発表したものについて書いたり,気になったニュースについて書いたり。概ね1回/月の更新を目標としています。

租税法学会第51回総会

 昨日(10/16),租税法学会第51回総会が行われました。今回は,関西大学千里山キャンパスにて,全面対面で総会が開催されました。全面対面での総会開催は実に3年ぶりでした。

 プログラムは下記参照。

sites.google.com

 昨年参加した際の記事として,下記参照。

taxfujima.hatenablog.com

 今回の研究総会では,「オープンイノベーション時代の企業課税」を統一論題として,4件の報告が行われました。
 まず,早稲田大学の渡辺徹也先生が,「法⼈課税の現在地とその課題」として法人税を中心とする法人に対する課税について総論的な報告をされました。これまでどういった方向性で税制改正がおこなわれてきたのかという点と,今後の展望を議論されていました*1
 次に,岡山大学の小塚真啓先生が,「配当課税の構造と問題」として日本の配当課税が孕む問題点とその解決策について報告されました。小塚先生は,『税法上の配当概念の展開と課題』(成文堂,2016年)を書かれているとおり配当課税について多くの議論をされてきましたが,それらの先行業績を前提として,根本的な点から配当課税が抱える問題点に取り組むべきだと主張されていました。
 その後,大阪大学の田中啓之先生が,「パススルー課税の現状と未来」としていわゆる「組合課税」に関する近年の判例理論の動向や今後の課題について報告されました。租税法学会では,20年ほど前に名古屋大学の髙橋祐介先生が組合課税について報告されていますが*2,当該報告の後の動向について議論されていました。
 最後に,明治大学の大野雅人先生が,「経済のデジタル化と国際課税」として近時の国際課税の動向と今後の展望について報告されました。国際課税については,OECDが公表した「第一の柱(Pillar 1)」と「第二の柱(Pillar 2)」を中心として様々な動きがあるところであり*3,それらの動きと,ただそれが本当に実現するのかどうかという点を議論されていました。

 今回の総会では,企業課税ということを軸に,法人税を中心として様々な議論を聞くことができて大変勉強になりました。個人的にも,昨年の租税法学会での分科会報告を機に法人税の根本的な議論には関心を持ったところであり,様々な示唆を得ることができました。

taxfujima.hatenablog.com

 それと,今回の学会は久しぶりの対面開催だったので,色々な先生方に久しぶりにお目にかかることができました。オンラインの方が気軽に参加できるというメリットはあるのですが,一方で,やはり対面で会ってゆっくりお話しできるのが学会などの大きなメリットだったのだな,とも感じました。就職してから初めての対面での学会だったので,研究のことも教育のことも,色々とお互いに抱えていることを話すことができました。相談に乗ってくださった先生方,誠にありがとうございました。

(10/17 13時頃追記)
 租税法学会賞のことを書き忘れていました。申し訳ありません。
 今回の総会では,第2回租税法学会賞の授賞式も行われました。第2回租税法学会賞は,明治大学の加藤友佳先生の『多様化する家族と租税法』(中央経済社,2021年)が受賞されました。

www.biz-book.jp

 いただいた際に書いた下記記事にも書いたとおり,この本は,これまで議論があまり盛んでなかったけれども社会においてまさに問題となっている論点について体系的な議論を構築した書籍です。家族のあり方と税法の関係についての議論を大きく進展させる業績だと思います。私も,何度も拝読して勉強しています。
taxfujima.hatenablog.com

 加藤先生,改めておめでとうございました!

*1:余談ですが,今回の総会に備えるために,今回の出張では渡辺先生の『スタンダード法人税法』を持参して行ったのですが,改めて読むとやはりとても参考になりました。

*2:髙橋祐介「組合課税」租税法研究30号(2002年)28頁参照。

*3:東京財団政策研究所のこちらのウェビナーがわかりやすく近時の動きをまとめています。